3. 制度利用者から、時にはフルタイム勤務や残業ができるという話があるが、制度の設計・運用上、認めるのが難しい

短時間正社員に対して勤務時間内で実施困難な量の仕事を配分することは当然避けるべきです。しかし、短時間とはいえ、中核的な業務を担っている場合も少なくなく、特定の日や時間にフルタイム勤務や残業に対応できるとする制度利用者もいます。ところが、こうした事情に個別に対応することは制度設計・運用上難しいとして、短時間正社員にはフルタイム勤務や残業をさせない企業が少なくありません。

制度利用者のキャリア形成支援の観点からも、制度利用者本人の希望を前提として、部分的にフルタイム勤務や残業を認めることは検討に値すると考えられます。ただし、制度利用者からの申出ではなく、職場の都合によってフルタイム勤務や残業に誘導してしまうことにならないよう、慎重に運用する必要があります。

人事部門としては、まず、部分的なフルタイム勤務の申出をしてきた制度利用者やその管理職から詳しく状況を聞くとともに、他の職場にこのようなニーズがどの程度あるかを把握し、こうした働き方を社内で認めることで生じる課題を整理する必要があります。次に、この結果を踏まえて、①制度を週の中で短時間勤務とフルタイム勤務の日を設定できるような柔軟な形に見直すか、②運用の中で個別に認めるか、③運用でも一切認めないこととするか、を検討します。①や②を選択する場合には、制度の趣旨から逸脱し、制度利用者のフルタイム勤務や残業が常態化する等の問題が発生しないよう、人事部門が、下記の【管理職・制度利用者・周囲の社員がやるべきこと】をそれぞれに明確に伝えるとともに、状況を定期的に確認する必要があります。

管理職・制度利用者・周囲の社員がやるべきこと

制度の関係者 制度の運用改善に向けてやるべきこと 関係者への伝え方
管理職
  • 制度利用者の事情やキャリア形成の希望を踏まえ、人事部門とも相談の上、部分的なフルタイム勤務や残業を認めるべきか検討する
  • 認める場合には、制度利用者と十分に相談の上、フルタイム勤務や残業の日をあらかじめ計画的に設定し、周囲にも周知する(制度利用者に甘えて、職場の都合で急にフルタイム勤務や残業を要望することは原則として不可)
  • 人事部門から直接伝える
  • 管理職向けのマニュアルや研修
制度利用者
  • 特定の日や時間帯にフルタイム勤務や残業に対応できる場合には、管理職や人事部門に相談する
  • フルタイム勤務や残業が可能な日や時間、仕事の再配分等について、管理職と協議する
  • フルタイム勤務や残業が常態化しないよう、メリハリある働き方を心掛ける
  • 管理職を通じて伝える
  • 制度の対象者・利用者向けのパンフレットや研修
  • 人事面談
周囲の社員
  • 制度利用者の働き方(短時間勤務、フルタイム勤務、残業が可能な日や時間がいつか等)を正しく把握し、必要なフォローを行う
  • 管理職を通じて伝える
  • 一般社員向けのパンフレットや研修