5. 短時間正社員制度の利用期間の長期化によって、モチベーションの低下やキャリア形成の遅れが生じる

育児支援等を目的とした短時間正社員制度においては、複数回制度を利用すること等によって、結果として、制度利用が長期化する傾向がみられます。また、制度利用の長期化に伴い、フルタイム正社員への復帰を念頭に置いた仕事の配分がなされなくなったり、制度利用者のキャリア形成が阻害されるケースも出てきています。
こうした人材活用、キャリア形成上の課題を解決するために、人事部門、管理職、制度利用者のそれぞれが、キャリア形成に関する考え方を明確にし、三者で認識の共有を行うことが重要です。人事部門としても、認識の共有のために下記の【管理職・制度利用者がやるべきこと】をそれぞれに明確に伝えるとともに、人事部門が制度利用者に対してどのような役割を期待しているかを明示する必要があります。

つまり、育児支援等を目的とした短時間正社員制度は、原則としてフルタイム正社員への復帰を念頭に置いたものですから、制度利用者には、①仕事の「量」の面では勤務時間に応じて減少させるものの、仕事の「質」の面ではフルタイム正社員の時と同等の役割を担ってほしい、②フルタイム正社員に復帰後のキャリアを考えながら制度を利用してほしい、といった人事部門の期待を、管理職や制度利用者に理解してもらうことが重要です。また、管理職と制度利用者が、制度利用やキャリア・プランについて話し合う上で参考となる情報(制度利用の平均的な期間、制度利用者の昇進・昇格の状況、制度利用後にフルタイム正社員に復帰した社員の声等)を、人事部門が提供することも有益でしょう。

なお、制度利用の長期化の背景には、長時間労働等の職場マネジメント上の課題が存在している可能性があることから、職場全体の働き方の見直し等、制度利用者が円滑にフルタイム正社員に復帰できるような環境を整備することも重要です。

管理職・制度利用者がやるべきこと

制度の関係者 制度の運用改善に向けてやるべきこと 関係者への伝え方
管理職
  • 制度利用の申出を受けた段階で、制度利用者がキャリア・プランや制度利用について考える上で必要な情報(制度利用者に期待する役割、制度利用のメリット・デメリット等)を提供する
  • 制度利用者がキャリア・プランを実現させるためには、どのタイミングでフルタイム正社員に復帰するのが適当か、どのような能力開発・スキルアップが必要か等について、定期的な面談等を通じて制度利用者と話し合い、双方の認識のギャップを埋める
  • 意欲の高い制度利用者に対しては、時間制約がある中でも、可能な限り、将来のキャリアを意識した仕事や課題にチャレンジさせ、外部研修への参加等も勧める
  • 制度利用者が必要以上に制度利用を長期化させることなく、円滑にフルタイム正社員に復帰できるように、職場全体の働き方を見直す
  • 人事部門から直接伝える
  • 管理職向けのマニュアルや研修
制度利用者
  • 自分に期待されている役割を理解する
  • 制度利用のメリット・デメリット(長期間の制度利用は、キャリア形成にマイナスの影響を及ぼす可能性がある等)について考える
  • 長期的なキャリア・プランを考える
  • 制度利用のメリット・デメリットや長期的なキャリア・プランを踏まえて、自分自身が制度をどのように利用すべきかについて考える
  • 管理職を通じて伝える
  • 制度の対象者・利用者向けのパンフレットや研修
  • 人事面談