株式会社センチュリーエール
誰もが活躍できる職場を目指した制度設計へ
契約社員の更なる活躍のため、正社員と共通の制度を設計

企業情報
住所 | 東京都中央区 |
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従業員数 |
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事業概要 | 紳士オーダースーツの卸売、並びに量販店・百貨店・専門店での小売 |
取組のきっかけ
契約社員の更なる活用に向け、共通の等級制度・賃金制度へ
優秀な契約社員に、より一層活躍してもらいたいと考えていた矢先、同一労働同一賃金が施行されることとなった。当社では、正社員と契約社員の賃金制度は存在しているものの、正社員と契約社員で似通った業務をおこなう者の賃金には格差が生じていると考えていた。
また、契約社員に対する等級制度は無く、現状の制度下では契約社員を適切に評価し活用していくことや、正社員との均等・均衡待遇を図ることが難しいと考えていた。そのため、これらを解決するために、厚労省の働き方改革推進支援センターによる専門家の支援を活用し、職務分析・職務評価を実施することとした。
これまでの取組(令和2年度)
取組1. 均等・均衡待遇の状況確認
職務の棚卸しの結果、一般職の正社員と契約社員の間で業務内容や権限・責任の範囲に大きな差はないことがわかった。
これらを踏まえ、職務評価を実施したところ、均等・均衡待遇が十分に図られていないことを確認。
要因の一つに、全国展開しているため、都道府県ごとの最低賃金額の差異に大きく影響を受けたことが考えられた。
取組2. 等級制度の検討
従前、契約社員に対して等級制度を設けていなかったため、契約社員の職務に係る職務評価ポイントに応じて、7等級に分けるかたちで等級制度の設計を行った。
取組3. 共通の賃金制度の検討
賃金制度の検討にあたり、作成した等級に応じた基本給を設定。
正社員との均等・均衡待遇を考慮しながら、両者共通の制度を検討。
この基本給は年功序列で上昇させず、職務内容に応じた賃金の設定とした。(※正社員においては年齢給も残存)
効果
- ・正社員・契約社員共通の賃金制度を改定することができ、均等・均衡待遇の実現の第1歩となった
- ・社員の職務内容が明確になり、目指すべきキャリアの道筋がイメージしやすくなった
新・等級名称 | 職務ポイント | 新・等級定義 | 新・基本給 ※時間賃率 |
対応する正社員ランク | 職務ポイント | 時間賃率(参考値) ※基本給÷所定内労働時間×活用係数 |
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上限値 | 中央値 | 下限値 | 上限値 | 中央値 | 下限値 | ||||||
① | ①部長 | 40 | 550,000 | 500,000 | 400,000 | ||||||
② | ②次長 | 36~39 | 450,000 | 400,000 | 350,000 | ||||||
③販売専門職1級 | 32~35 | 売上額・人材代替性・経営貢献度 ※詳細は別紙「等級定義」参照 |
342,000 | 306,000 | 270,000 | ③課長・販売専門職1級 | 32~35 | 380,000 | 340,000 | 300,000 | |
④販売専門職2級 | 28~31 | 売上額・人材代替性・経営貢献度 ※詳細は別紙「等級定義」参照 |
324,000 | 270,000 | 252,000 | ④課長代理・販売専門職2級 | 28~31 | 360,000 | 300,000 | 280,000 | |
⑤販売専門職3級 | 24~27 | 売上額・人材代替性・経営貢献度 ※詳細は別紙「等級定義」参照 |
288,000 | 252,000 | 216,000 | ⑤チーフ・販売専門職3級 | 24~27 | 320,000 | 280,000 | 240,000 | |
⑥一般職上級 | 20~23 | 売上額・人材代替性・経営貢献度 ※詳細は別紙「等級定義」参照 |
243,000 | 234,000 | 225,000 | ⑥一般職上級 | 20~23 | 270,000 | 260,000 | 250,000 | |
⑦一般職1級 | 16~19 | 売上額・人材代替性・経営貢献度 ※詳細は別紙「等級定義」参照 |
216,000 | 207,000 | 198,000 | ⑦一般職1級 | 16~19 | 240,000 | 230,000 | 220,000 | |
⑧一般職2級 | 12~15 | 売上額・人材代替性・経営貢献度 ※詳細は別紙「等級定義」参照 |
189,000 | 180,000 | 171,000 | ⑧一般職2級 | 12~15 | 210,000 | 200,000 | 190,000 | |
⑨一般職3級 | 8~11 | 売上額・人材代替性・経営貢献度 ※詳細は別紙「等級定義」参照 |
180,000 | 175,000 | 170,000 ※各地域の最低賃金を考慮 |
⑨一般職3級 | 8~11 | 180,000 | 175,000 | 170,000 |
更に実施した取組(令和5年度)
取組のポイント
- 取組①
- 最低賃金上昇による制度の見直し
- 取組②
- 共通の評価制度の設計
- 取組③
- 制度の運用にあたり、社内への周知
- 効果
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- ・契約社員の一部を正社員並みに活用することができるようになり、今まで正社員しか配置できなかった店舗においても、契約社員の配置が可能となった。
- ・従業員の賃金を含む待遇に対する不満が以前よりも少なくなり、全体的な雰囲気が改善された。
取組1. 最低賃金上昇による制度の見直し
①最低賃金上昇による賃金制度の見直し
昨今の最低賃金の引上げや従業員へ賃上げに伴い、賃金制度において新たな制度設計が求められることとなった。
当社では全国展開をしていることから、都道府県ごとの最低賃金に大きな影響を受け、上昇幅が一定でなく予測が難しい状況の中で、最低賃金に抵触しない制度設計を行うには苦労があった。しかし、最低賃金が引上げられるたびに制度を変更することは、企業にとって負担が大きく、また、従業員にとっても理解しやすい制度であることが大切であると考え、継続的に運用しやすい制度づくりを目指して検討を始め、2023年9月に新たな賃金制度を導入するに至った。
最低賃金の引上げへの対応にあたっては、当初、契約社員の賃金水準をエリア別に設定することを検討したが、最低賃金の上昇率が一律ではなく、むしろ地方の方が上昇率が高い傾向であったため、全体のバランス等の理由からすぐに見直す必要が出てきてしまうことが予想された。そこで、エリアごとの最低賃金の変動には調整給で対応する方針を採用した。
②活用係数の見直し
賃金制度の見直しにあわせ、活用係数の見直しも行い、再度職務分析・職務評価を実施して、賃金水準を見直した。
活用係数とは
パートタイム・有期雇用労働者と正社員の間に「人材活用の仕組みや運用」の違い(例:転勤の有無や、職務や職種の変更の有無、突発的な時間外勤務の有無など)がある場合、賃金を決める際に「活用係数」を用いることで、職務そのものではない「人材活用の仕組みや運用」の違いを考慮することができる。
「活用係数」の適正な水準は、各企業の事情によって異なる。
- ・パートタイム・有期雇用労働と正社員に違いがない場合→活用係数1.0に設定
- ・パートタイム・有期雇用労働と正社員に違いがある場合→その違いに応じて従業員の納得が得られる合理的な水準に活用係数(1.0未満)に設定
働き方改革推進支援センターに支援いただき、最初に職務分析・職務評価を行った当初は、正社員と契約社員間で「時間外、休日労働、深夜勤務等の勤務時間の変更性」については同条件である一方、「転勤等、働く場所の変更可能性」・「職務や職種の変更等、従事する仕事の変更可能性」について相違があったため、活用係数を0.9と設定した。
その後、「転勤等、働く場所の変更可能性」については、契約社員の転勤が自宅から通勤可能な範囲に限定されている一方で、正社員の転勤は転居を伴うケースもあることを踏まえ、また、「従事する仕事の変更可能性」については、正社員の方が売上げや業務量の多い店舗に勤務するケースが多いことを踏まえて、活用係数を0.8に修正し、再度職務分析・職務評価を実施して賃金水準を見直した。
取組2. 共通の評価制度設計
◎一般職評価シート評価者確認項目
一般職評価内容 | 評価者確認項目/確認方法内容 | ||
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業務管理 一般業務を基本とした社会人のあり方 (30点) |
①規律性 | ・ビジネスマナー(頭髪、服装、清潔感、言葉遣い)が出来ているか | 店巡時にビジネスマナーの確認 |
・法令、社内規定、コンプライアンス、就業規則が守られているか | 社内規定の全般(管理職規定把握)勤怠管理の確認 | ||
・報連相、管理物、提出物が出来ているか | 報連相、加工台帳、週間・月間報告書、ソリューションファイル | ||
②責任感 | ・上司、同僚、お客様との約束が守られているか | 約束事の履歴確認 | |
・社内方針を理解し、自店に与えられた数値管理(予算等)が出来ているか | 毎年の社内方針、方針に沿った数値管理、エラー伝票削減、PO強化(A4伝票) | ||
・得意先様との協力体制が出来ているか | 店巡時のマネージャーに確認、担当者不在時の売上確認 | ||
③積極性 | ・指摘される前に自ら行動に移しているか | 率先した行動の確認、期日前までの提出や報告 | |
・仕事の効率化を考え、工夫や改善が出来ているか | 取り組み姿勢と結果の確認 | ||
・良いと思う内容を上位者に意見し、上司、同僚のサポートが出来ているか | 個人別に意見の集計 研修会での発言内容と回数、サポート、応援の履歴確認 | ||
販売管理/売場 売場作りを基本とした店舗運営 (30点) |
①演出陳列 | ・VP(メイン、重点商品)、PP(コーディネート)の演出が出来ているか | マニュアル、指示に沿ったVP、PPを店巡か写真で確認 |
・販促媒体物設置はマニュアルに沿って出来ているか | マニュアル、指示に沿った設置を店巡か写真で確認 | ||
・MD計画に沿った演出が出来ているか | 販促変更、MD計画の変更時は店巡か写真で確認 | ||
②商品陳列 | ・IP(商品群 RM含む)の陳列が出来ているか | マニュアル、指示に沿ったIPを店巡か写真で確認 | |
・販促媒体物設置はマニュアルに沿って出来ているか | マニュアル、指示に沿った設置を店巡か写真で確認 | ||
・MD計画に沿った商品陳列が出来ているか | 販促変更、MD計画の変更時は店巡か写真で確認 | ||
③入店率/美化 | ・入りやすく、回遊性を考えた客導線が確保されているか | 客導線は3尺 店巡か写真で確認 | |
・壁面前のスペース、採寸スペースの確保がされた空間作りが出来ているか | 壁面前は4尺 店巡か写真で確認 | ||
・カウンター回りの整理整頓、日々のクリンネスは出来ているか | 店巡か写真で確認 | ||
販売管理/接客 接客力向上に対しての基礎知識 (30点) |
①接客話法 | ・お客様情報を聞き出し、ニーズに沿った提案が出来ているか | ロールプレイングでカウンセリング方法の確認 |
・重点商品をお客様にお勧め出来ているか | ロールプレイングでセールストークの確認 実績確認 | ||
・新商品をお客様にお勧め出来ているか | 新商品(生地、シルエット)の実績確認 | ||
②商品知識 | ・生地特徴の把握が出来ているか | ロールプレイング、簡易テストで確認 | |
・シルエット特徴の把握が出来ているか | ロールプレイング、簡易テストで確認 | ||
・新商品、トレンド商品の把握が出来ているか | 新商品、トレンド情報の確認 ファッション誌やSNS情報 | ||
③商品管理/顧客管理 | ・商品入荷時の検品、在庫確認が出来ているか | 入荷時明細書、在庫日計表で確認 | |
・顧客の好み、要望などの情報を顧客カードで管理出来ているか | 店巡時に顧客カードの確認 投函時のコメント確認 | ||
・顧客の個人情報の管理(施錠)が出来ているか | 店巡時に個人情報の管理の確認 | ||
総合加点項目 個人目標の設定やその他の評価項目以外に対しての加点 (10点) |
被評価者と半期目標の設定と結果に対しての加点 | ||
一般職評価項目以外に対しての加点 | |||
当社は以前より、正社員・契約社員とも、上期下期の年に2回、人事評価を行っており、個別に面談の機会を設定していたが、作成した等級制度の各等級の定義に沿い、評価基準の具体性と公平性を更に向上させる必要があった。そのために、従来の評価基準を再検討し、評価項目を売上額(過年度からの予算の伸び率、達成率、絶対売上金額)」「人材代替性(専門性)」「経営貢献度」の3つに絞り込むことで、簡潔かつ明瞭な基準を確立した。また、正社員と契約社員の双方を同一基準で評価できるよう、両者の等級制度を一般職5段階、専門職8段階に揃えることで運用の負担軽減を図った。また、評価をする者により評価にばらつきが出てしまうことがないように、評価者育成にも注力した。
●評価基準の見直し
売上高や人材代替性、経営貢献度といった3つの主要項目に重点を置き、それぞれの項目を具体的かつ測定可能な基準に細分化した。また、専門職と一般職の評価基準を分けることで、業務の特性に応じた公平な評価が可能となった。
●ばらつきが出ないようにシンプルな評価制度を設定
ポイントを3つに絞って評価する形にした。その代わり、幅広く評価できるよう評価項目は細かくした。目線を合わせやすいようにわかりやすい基準を設けた。
●所定労働時間の統一
正社員よりも契約社員の所定労働時間が長かったため、正社員と同様の所定労働時間に統一し、すべての従業員が平等な条件で働ける環境を整えた。同じ条件になったことにより、評価しやすくなった。
●オンライン対応の強化
コロナ禍で急速に普及したオンラインツールを活用し、リモート環境下でも公平かつ効率的に評価が行える仕組みを構築した。この仕組みによって、従業員と評価者間のコミュニケーションの質を維持しながら、運用の効率化を実現した。
●評価者研修の実施
月1回、各エリアの課長等の評価者が集まって、評価のすり合わせを行った。課題や基準を共有することにより、評価者次第の評価にならない制度運用を図っており、現在も引き続き継続して実施している。
VOICE 取組担当者の声
2020年に同一労働・同一賃金がスタートし、どのように正規社員と非正規社員の均衡待遇を実現するか頭を悩ませていましたが、職務分析・職務評価コンサルティングを利用し、「フルタイム勤務者の労働条件の統一」「評価基準の明確化」「給与の決め方」が課題だと明確になり、段階を踏んで均衡待遇の実現を図ってきました。そして正規社員と非正規社員の評価基準を見える化した上で統一したことで、従業員の公平感・納得感が高くなりました。また、従業員一人ひとりがより高い目標にチャレンジするよう意識するようになるなど、人材育成面でも良い効果が出てきています。
取組3. 制度の運用にあたり、社内への周知
契約社員に対して、制度導入1年前に制度変更の告知を行い、具体的な制度内容については、制度導入の半年前に説明会を開催した。説明会は、エリアごとに定期で実施している集合研修内で行った。説明会後においても、疑問点の解消を図るための問い合わせ窓口を設け、丁寧に説明することを心掛けた。評価制度に対する理解が深まるにつれ、従業員の取り組み姿勢も前向きになりつつある。契約社員が自分の成果や役割をより明確に認識することにより、キャリア成長を意識した働き方の準備が整った。
VOICE 従業員の声
以前は売上実績のみが評価基準だったため、給与は配属店舗先が決まった時点でほぼ決まっていましたが、今回の制度改正で、定性面で仕事としてやるべき内容と評価基準が明確になり、また定性面の努力も昇給に結びつくようになったので、モチベーションも上がりました。
また、正社員と共通の評価基準となっているので、自分が販売員全員の中でどの位置にいるのかが客観的に把握でき、更に、伸ばすべき部分、足りない部分などのフィードバックも上司から具体的にもらえるので、何をするべきかといったことが以前より明確になりました。
効果
- 契約社員の一部を正社員並みに活用することができるようになり、今まで正社員しか配置できなかった店舗においても、契約社員の配置が可能となった。また、雇用形態や年齢関係など関係なく、誰でも活躍できる職場環境が整った。
- 従業員の賃金を含む待遇に対する不満が以前よりも少なくなり、全体的な雰囲気が改善された。
今後への想い
- 今回の取組を通じて、評価制度の運用における基盤はしっかりと整備することができた。今後は、更に評価の精度を向上させるとともに、従業員が主体的に目標達成に取り組めるような仕組みを強化していきたいと考えている。また、定期的なフィードバックを行うことで、評価プロセスの透明性を高め、全従業員からの信頼を得られる制度運営を目指したい。
- 現在はキャリアアップのための社内研修と外部研修を組み合わせ、学びの機会を提供する制度のたたき台を作成中。1年以内にはスタートさせたい。
- 通信教育制度が存在するものの、利用率が低いため、従業員の積極的な参加を促していく。
- 資格取得支援や具体的なキャリアパスを提示することで、従業員が自己成長を実感できる機会を提供していきたい。