株式会社センチュリーエール

契約社員の更なる活用に向け、新たな等級制度、賃金制度、評価制度を設計

企業情報

住所 東京都中央区
従業員数
  • ・正社員約112名
  • ・有期雇用労働者(呼称、契約社員) 約54名
  • ・パートタイム労働者1名
事業概要 紳士オーダースーツの卸売、並びに量販店・百貨店・専門店での小売

PDFデータ

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要約

  • 同社では、正社員と契約社員の両者について、業務内容には大きな差がないが、賃金には差があり均等・均衡待遇が十分に図られていないのではないかと考えていた。そこで管理職以外の正社員と契約社員に対して、職務分析・職務評価を実施し、均等・均衡待遇が図られているか確認をおこなったうえで、その結果をもとに正社員と契約社員共通の等級制度・賃金制度を改訂した。

背景・目的

 優秀な契約社員に、より一層活躍してもらいたいと考えていた矢先、同一労働同一賃金が施行されることとなった。同社では、正社員と契約社員の賃金制度は存在しているものの、正社員と契約社員で似通った業務をおこなう者の賃金には格差が生じていると考えていた。また、契約社員に対する等級制度は無く、現状の制度下では契約社員を適切に評価し活用していくことや、正社員との均等・均衡待遇を図ることが難しいと考えていた。そのため、これらを解決するために、職務評価コンサルティング支援に申し込むに至った。

Step1. 現状の確認(均等・均衡待遇)

① パートタイム・有期雇用労働者の活用方針を策定

「契約社員の一部を正社員並みに活用する」

 現在、売上上位の店舗には正社員を配置しているが、今後は、売上上位の店舗にも優秀な契約社員も配置していきたいと考えて活用方針をこのように設定した。

② 職務内容の棚卸

 今回、東日本営業部第1課~第3課(店舗販売)に勤務する契約社員(週5勤務)と正社員を対象と職務の棚卸を実施した。選定の理由は、以下の通りである。

  • ・契約社員(週5勤務)は非正規社員全体に占める割合が88%と高い
  • ・東日本営業部第1課~第3課(店舗販売)には、比較対象となる正社員も多数在籍している
■ 職務内容
営業本部_東日本営業部第1課~第3課_樹形図 職位/氏名 業務内容、権限・責任の範囲 職位/氏名 業務内容、権限・責任の範囲
正社員
課長代理
◆主な業務内容
  • ・自店の販売管理
  • ・自店の店舗運営
    (売り場作り、清掃、顧客管理)
  • ・部下の店舗の売上管理指導
  • ・部下の店舗の店舗運営指導
  • ・部下の勤怠管理

◆権限・責任の範囲
  • ・複数の部下あり
  • ・クレーム、イレギュラー事象の初動対応を求められる。
正社員
一般職
◆主な業務内容
  • ・自店の販売管理
  • ・自店の店舗運営
    (売り場作り、清掃、顧客管理)
◆権限・責任の程度
  • ・部下なし
  • ・イレギュラー事象は上司の判断を仰ぐ
棚卸の結果、正社員間では管理職と一般職において業務内容や権限・責任の範囲に大きな差が生じている一方で、一般職の正社員と契約社員との間に大きな差がないことが分かった。 契約社員
一般職
◆主な業務内容
  • ・自店の販売管理
  • ・自店の店舗運営
    (売り場作り、清掃、顧客管理)
◆権限・責任の程度
  • ・部下なし
  • ・イレギュラー事象は上司の判断を仰ぐ

③ 均等・均衡待遇の状況確認

 正社員と契約社員間の均等・均衡待遇の状況を確認するにあたり、

【1. 時間賃率について】

 正社員の時間賃率=基本給(年齢給+評価給+役職手当+資格手当)÷所定労働時間×活用形数
契約社員(週5勤務)の時間賃率=時間当たり基本給(基本給+特別手当※)

  • ※ 特別手当について:東京地区など、仕事内容が他と比べて大変な地区では基本給を上乗せしバランスをとる必要がある。ただし、規定上基本給の上限が決まっているため、特別手当として上乗せしている。

【2. 人材活用の仕組みまたは運用の違いについて】

 3つの観点から確認したところ、正社員と契約社員間で「時間外、休日労働、深夜勤務等の勤務時間の変更性」については同条件である一方、「転勤等、働く場所の変更可能性」・「職務や職種の変更等、従事する仕事の変更可能性」について相違があることが分かったため、活用係数(※格差の度合いに応じ調整するための計数)を0.9とした。

■ 人材活用の仕組みまたは運用の違い
観点 正社員 契約社員 相違のポイント
転勤等、働く場所の変更可能性 ×
  • ・全国転勤あり
職務や職種の変更等、従事する仕事の変更可能性 ×
  • ・職種転換あり
時間外、休日労働、深夜勤務等の勤務時間の変更可能性
  • ・深夜・休日勤務、急な呼び出しへの対応あり(すべて同様の対応)

④ 職務評価

 これらを踏まえた職務評価の結果、正社員と契約社員との間において、均等・均衡待遇が十分には図れていないことを確認した。契約社員の中で時間賃率が突出している者がいるが、これは過去正社員だった人物であり、家庭の事情により契約社員となった。正社員と比較しても成績上位に位置する人物であり特殊である。この社員を除くと、職務ポイントに重なりが無く傾向線が一直線にはならなかった。こういった結果となった要因の1つとしては、同社は全国展開をしており、都道府県毎の最低賃金額の差異に大きく影響されてしまっていると考えられた。

■ 職務評価結果
職務評価結果のグラフ

Step2. 制度設計(等級/賃金)

① 等級(グレード)制度の検討

 従前、契約社員に対して等級制度を設けていなかったため、まずは契約社員が担当する職務の職務評価ポイントに応じて、7等級に分ける形で等級制度の設計を行った。今後、等級制度と評価制度のバランスがとれるようにしてく必要があるため、まずは等級制度の細かい内容の修正を現在行っている。

■ 等級制度たたき台

一般職職務評価基準表(正社員・契約社員共通)

定義 役割 主な業務 必要なスキルの水準 部下 権限の範囲 役割の範囲 トラブルへの対応 成果への期待度
販売専門職1級
  • ・取引上における重要店舗の維持・拡大を最優先課題とし、経験に基づく知識・ノウハウ・スキルを総動員し主体的に業務を遂行する。
  • ・最重要店舗の担当として得意先の助力を取り付け、会社の売上・利益拡大に寄与する。
  • ・スペシャリストとしての自覚のもと、後進の模範となると同時に、知識・ノウハウ・スキルを継承する。
  • ・店舗の運営に関する業務全般
  • ・取引先との商談等の補佐
  • ・品揃え等マーケティングの補佐
  • ・売上額:4千万円以上
  • ・販売スキルの専門性が高い
  • ・得意先重要人物とのパイプがあり、最重要店舗における社外対人関係の複雑さを克服できる
  • ・代わりの存在がいない
  • ・経営会議の承認が必要
部下はいないが新入社員等の教育担当を行うことがある
  • ・会社全体の売上、利益の拡大を目指すための提案、実行する権限を有する
  • ・具体的な指示、指導を求められる
  • ・自店の予算進捗管理を求められる
  • ・自分の判断で対応することが求められる。但し上位者への報告義務あり
  • ・予算あり
  • ・達成度評価あり
  • ・会社への貢献度評価あり
販売専門職2級
  • ・取引上における重要店舗の維持・拡大を最優先課題とし、経験に基づく知識・ノウハウ・スキルを総動員し主体的に業務を遂行する。
  • ・最重要店舗の担当として得意先の助力を取り付け、会社の売上・利益拡大に寄与する。
  • ・スペシャリストとしての自覚のもと、後進の模範となると同時に、知識・ノウハウ・スキルを継承する。
  • ・店舗の運営に関する業務全般
  • ・取引先との商談等の補佐
  • ・品揃え等マーケティングの補佐
  • ・売上額:3千万円以上
  • ・販売スキルの専門性が高い
  • ・得意先重要人物とのパイプがあり、最重要店舗における社外対人関係の複雑さを克服できる
  • ・代わりの存在がいない
  • ・経営会議の承認が必要
部下はいないが新入社員等の教育担当を行うことがある
  • ・会社全体の売上、利益の拡大を目指すための提案、実行する権限を有する
  • ・具体的な指示、指導を求められる
  • ・自店の予算進捗管理を求められる
  • ・自分の判断で対応することが求められる。但し上位者への報告義務あり
  • ・予算あり
  • ・達成度評価あり
  • ・会社への貢献度評価あり
販売専門職3級
  • ・取引上における重要店舗の維持・拡大を最優先課題とし、経験に基づく知識・ノウハウ・スキルを総動員し主体的に業務を遂行する。
  • ・最重要店舗の担当として得意先の助力を取り付け、会社の売上・利益拡大に寄与する。
  • ・スペシャリストとしての自覚のもと、後進の模範となると同時に、知識・ノウハウ・スキルを継承する。
  • ・店舗の運営に関する業務全般
  • ・取引先との商談等の補佐
  • ・品揃え等マーケティングの補佐
  • ・売上額:2千5百万円以上
  • ・販売スキルの専門性が高い
  • ・得意先重要人物とのパイプがあり、最重要店舗における社外対人関係の複雑さを克服できる
  • ・代わりの存在がいない
  • ・経営会議の承認が必要
部下はいないが新入社員等の教育担当を行うことがある
  • ・会社全体の売上、利益の拡大を目指すための提案、実行する権限を有する
  • ・具体的な指示、指導を求められる
  • ・自店の予算進捗管理を求められる
  • ・自分の判断で対応することが求められる。但し上位者への報告義務あり
  • ・予算あり
  • ・達成度評価あり
  • ・会社への貢献度評価あり
一般職上級
  • ・新規取引先担当として早期に採算ベースに乗せるため、上位の職位者もうまく利用しながら、主体的に行動すると同時に、他者の成長も手助けする。
  • ・グループの全体的な流れを意識し、定型業務だけではなく、業務プロセス改善により、生産性向上に寄与する。
  • ・一般職の中心的存在の自覚のもと、後進の模範となると同時に知
  • ・店舗の運営に関する業務全般
  • ・品揃え等マーケティングの補佐
  • ・新しい取り組みへの適応力
  • ・現在の手法とは全く異なり革新性を求められる業務への対応力
  • ・計画実行管理ができ、乖離が発生した場合は修正対応ができる(PDCAサイクルの実践)
部下はいないが新入社員等の教育担当を行うことがある
  • ・得意先全体の売上、利益の拡大を目指すための提案、実行する権限を有する
  • ・具体的な指示、指導を求められる
  • ・自店の予算進捗管理を求められる
  • ・自分の判断で対応することが求められる。但し上位者への報告義務あり
  • ・予算あり
  • ・達成度評価あり
  • ・会社への貢献度評価あり
一般職1級
  • ・将来の管理職候補として、自店及びラインの売上拡大、利益率向上のため、ライン上長と連携を取りながら主体的に行動すると同時に、下位等級者の成長を手助けする。
  • ・営業部内の全体的な流れを意識し、定型業務だけではなく、業務プロセス改善により、利益率向上、生産性向上に寄与する。
  • ・一般職の中心的存在の自覚のもと、後進の模範となると同時に、知識・ノウハウ・スキルを継承する。
  • ・店舗の運営に関する業務全般
  • ・品揃え等マーケティングの補佐
  • ・問題を発見し定義できる
  • ・問題の原因を推察・整理・分析できる
  • ・課題を具体的行動に落とし込み、実践できる
  • ・他者の立場を気にかけ、配慮できる
  • ・他者の教育ができる
部下はいないが新入社員等の教育担当を行うことがある
  • ・係内の業務プロセスを改善し生産性を向上するための発言、行動する権限を有する
  • ・業務遂行上のアドバイス提供、および相談に乗ることを求められる
  • ・自店の予算進捗管理を求められる
  • ・自分で考えた上で対応することが求められる。但し上位者のアドバイスが必要
  • ・予算あり
  • ・達成度評価あり
一般職2級
  • ・個店の売上拡大のため、所属組織の方針を理解し、ライン上長や上位等級者の包括的な指示に基づき、定型的な判断を加えながら主体的に遂行する
  • ・所属組織の全体的な流れを理解し、定型業務の改善を意識しながら遂行する
  • ・自ら成功事例、改善内容を発信し、他メンバーを自発的にサポートする
  • ・店舗の運営に関する業務全般
  • ・多様な情報を捉えられる
  • ・情報を整理し伝達できる
  • ・正確かつ簡潔に伝えられる
  • ・自立し連帯する意識
なし
  • ・自店の業務プロセスを改善し生産性を向上するための提案、実行する権限を有する
  • ・助言、指導は求められていないが成功事例の情報発信を求められる
  • ・自店の予算進捗管理を求められる
  • ・上位者の指示の上、自分で対応することが求められる
  • ・予算あり
  • ・達成度評価あり
一般職3級
  • ・個店の売上維持・管理を目的に、担当する業務について、ライン上長や上位等級者の指示に基づき遂行する
  • ・ライン上長及び教育担当上位等級者の指示及び業務プロセスを正確に理解し、実行する
  • ・担当業務における知識、ノウハウを蓄積、拡充し専門スキル、判断力を養う
  • ・店舗の運営に関する業務全般
  • ・ビジネスマナーの知識
  • ・報告・連絡・相談の徹底
  • ・事実の共有化
  • ・前向きな思考
なし
  • ・裁量権なし
  • ・助言、指導は求められていない
  • ・上位者への報告・連絡・相談の上、指示の上自分で対応することが求められる
  • ・予算あり
  • ・達成度評価あり
  • (経験に応じた補正値あり)

② 賃金制度の検討

 賃金制度の検討に伴い、等級に応じた基本給を設定した。この基本給は年功序列で上昇はさせず、職務内容に応じた賃金の設定とした(但し、正社員においては年齢給も残存)。

新・等級名称 職務ポイント 新・等級定義 新・基本給
※時間賃率
対応する正社員ランク 職務ポイント 時間賃率(参考値)
※基本給÷所定内労働時間×活用係数
上限値 中央値 下限値 上限値 中央値 下限値
①部長 40 550,000 500,000 400,000
②次長 36~39 450,000 400,000 350,000
③販売専門職1級 32~35 売上額・人材代替性・経営貢献度
※詳細は別紙「等級定義」参照
342,000 306,000 270,000 ③課長・販売専門職1級 32~35 380,000 340,000 300,000
④販売専門職2級 28~31 売上額・人材代替性・経営貢献度
※詳細は別紙「等級定義」参照
324,000 270,000 252,000 ④課長代理・販売専門職2級 28~31 360,000 300,000 280,000
⑤販売専門職3級 24~27 売上額・人材代替性・経営貢献度
※詳細は別紙「等級定義」参照
288,000 252,000 216,000 ⑤チーフ・販売専門職3級 24~27 320,000 280,000 240,000
⑥一般職上級 20~23 売上額・人材代替性・経営貢献度
※詳細は別紙「等級定義」参照
243,000 234,000 225,000 ⑥一般職上級 20~23 270,000 260,000 250,000
⑦一般職1級 16~19 売上額・人材代替性・経営貢献度
※詳細は別紙「等級定義」参照
216,000 207,000 198,000 ⑦一般職1級 16~19 240,000 230,000 220,000
⑧一般職2級 12~15 売上額・人材代替性・経営貢献度
※詳細は別紙「等級定義」参照
189,000 180,000 171,000 ⑧一般職2級 12~15 210,000 200,000 190,000
⑨一般職3級 8~11 売上額・人材代替性・経営貢献度
※詳細は別紙「等級定義」参照
180,000 175,000 170,000
※各地域の最低賃金を考慮
⑨一般職3級 8~11 180,000 175,000 170,000

③ 評価制度の検討

 同社は、正社員、契約社員共に、上期下期の年に2回、人事評価を行っており、個別に面談の機会を設定している。今後は、「売上額(過年度からの予算の伸び率、達成率、絶対売り上げ金額)」「人材代替性(コミュニケーション能力)」「経営貢献度」の3つをポイントに評価を実施していきたいと考えている。

効果

  • これまで賃金格差が生じていた正社員・契約社員共通の賃金制度を改訂することができ、均等・均衡待遇を実現する第一歩となった
  • 作成した等級制度の各等級の定義に沿い、社員の職務内容が明確になる。また、それにより自身が目指すべきキャリアの道筋や仕事のイメージが付きやすくなる。結果として、社員のモチベーションに好影響となるのではないかと考えている。また、職務に応じてきちんと処遇していくことができると考える。

課題

  • 全国展開をしており、都道府県毎の最低賃金額の差異に大きく影響されてしまう。
  • 人事評価について、定性評価は各々の解釈によるため、評価者が人によって私情を持ち込むことなく評価できるかが課題
  • 首都圏と比べて地方での人事評価の実施が難しく、オンラインではコミュニケーションの頻度が落ちてしまう。

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