新井総合法務事務所

 人手不足解消のために、パートタイム労働者の活用促進および人材募集時の客観的な待遇決定のため、均等・均衡待遇の確認を行った事例。

企業情報

住所 埼玉県坂戸市
従業員数
  • ・正社員 1名
  • ・パートタイム労働者 2名
事業概要 行政書士事務所

PDFデータ

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要約

 事務所内の人手不足の解消と、従業員の成長促進のために、職務分析・職務評価を実施した。
 正社員とパートタイム労働者の業務内容の違いを視覚化することで、業務の具体性、待遇の客観性を持たせ、従業員の納得感を得ることを目指した。また、募集すべき人材のあぶり出しや的確な待遇を考える材料にもなった。

背景・目的

 現在勤務する従業員の成長促進、および従業員募集のために、客観性のある待遇を考えたかった。一度は職務分析・職務評価を自身でやってみたものの、人員が元々少なく、現在勤務する3名は各々異なる業務を行っているため、直接的な比較は難しいと感じていた。また、最低賃金も上昇していたことから、改めて専門家の手を借りて再度、職務分析・職務評価を実施し、待遇に客観性を持たせ、従業員の納得感を得られるような体制づくりを行うこととした。

Step1. 現状の確認(均等・均衡待遇)

① パートタイム・有期雇用労働者の活用方針を策定

 「ほぼ全員を正社員なみに活用したい」パートタイムAと「大半は、補助業務に活用したい」パートタイムBとに分けることとした。
 同じパートタイム労働者の中でも、経験者であったり、意欲があり、対応できる業務を自ら増やしていく者については、正社員なみの活用を進め、業務内容が正社員と同等になった場合には、正社員化を行うこととした。一方、未経験の者を採用した場合に、各業務の知識を持つには相当の時間を要することから、学びながら補助業務を行ってもらうこととした。両者には大きな差があることから、そもそも募集時に分けて考える必要があると感じた。また、活用方針を策定しながら、資格保持者で、本来正社員として働ける能力を持っているものの、子育て等で働く時間に制限のある人材の活用についても検討するようになった。

② 職務内容の棚卸

 職務内容の棚卸には、準備段階で工夫が必要であった。同事務所には部門A(許認可等)・部門B(測量)の2部門があり、部門Aには、パートタイム労働者はいるが正社員はおらず、部門Bには正社員はいるがパートタイム労働者はいないという状況のため、実在する正社員とパートタイム労働者同士の比較が難しかった。そこで、部門Aに仮に正社員がいた場合はどのような業務になるかを、部門Bに仮にパートタイム労働者がいた場合はどのような業務になるかを想定して比較を行った。

部門A(許認可等)
パートA 比較対象の正社員 パートB
実在 不在 新規採用者
  • ・電話対応(1時間)
  • ・接客対応(0.5時間)
  • ・新規顧客の代表からの引継ぎ(1時間)
  • ・必要書類の案内(0.5時間)
  • ・申請書類の作成・補正対応(3時間)
  • ・完了書類の整理・郵送・お届け(1時間)
  • ・既存顧客への業務説明(0.5時間)
  • ・(案件により)相談対応
  • ※建設・産廃・外国人登録支援機関・飲食相続について、現在取扱いできている。
  • ・電話対応(1時間)
  • ・接客対応+相談対応(1時間)
  • ・新規顧客の初回説明から業務対応(1.5時間)
  • ・必要書類の案内(0.5時間)
  • ・申請書類の作成・補正対応(4時間)
  • ・既存顧客への業務説明(0.5時間)
  • ・クレーム、トラブル対応(必要時間)
  • ・休日出勤
  • ※建設・産廃・外国人登録支援機関・農転飲食・風営・運送・宅建・古物取扱・倉庫相続 各分野に対し、上記が発生。
  • ・電話対応(1時間)
  • ・接客対応(0.5時間)
  • ・新規顧客の代表からの引継ぎ(1時間)
  • ・必要書類の案内(0.5時間)
  • ・申請書類の作成・補正対応(3時間)
  • ・完了書類の整理・郵送・お届け(1時間)
  • ・既存顧客への業務説明(0.5時間)
  • ・(案件により)相談対応
  • ※建設・宅建・相続について、取扱う。
部門B(測量)
パート・有期 比較対象の正社員
不在 実在
  • ・電話対応(0.5時間)
  • ・接客対応(0.5時間)
  • ・測量業務資料調査(1時間)
  • ・図面作成の一部(2時間)
    • ★簡単なもの
    • ★CADの操作
  • ・書類の作成(1時間)
  • ・現地測量補助(1日)
    • ★簡単な現況測量
    • ★簡単な高低測量、縦横断測量、点間測量
  • ・電話対応(0.5時間)
  • ・接客対応(0.5時間)
  • ・測量業務資料調査(1時間)
  • ・図面作成の全て(5時間)
    • ★CADの操作
  • ・書類の作成(1時間)
  • ・現地測量(1日)
    • ★難しい現況測量
    • ★難しい高低測量、縦横断測量、点間測量
  • ・営業活動
  • ・公共入札の積算・測量

③ 均等・均衡待遇の状況確認

【1. 時間賃率について】
 パートタイム労働者と正社員の待遇の違いとして、正社員は基本給の他に資格手当が支給されている。正社員の時間賃率を算出するにあたっては両方を対象とした。一方で、パートタイム労働者は、基本給(時給)以外はないため、基本給のみを対象とした。

【2. 人材活用の仕組みまたは運用の違いについて】
 転勤・時間外・職務の変更という3つの観点では量りにくい状況がある。事業所が1つのため、転勤は正社員もパートタイム労働者もない。時間外勤務は、双方ともある。また、職務の変更についても、正社員は部門に関する全ての種類の業務を遂行することが条件であることから、その後の変更はなく、逆にパートタイム労働者は業務を覚えて増やしていくことから、変更はあることとなり、単純比較はできない。ただ、正社員は職務の種類が圧倒的に多いことから、パートタイム労働者の活用係数(※格差の度合いに応じ調整するための計数)を0.7と設定した。今後の採用で、パートタイム労働者でも資格を持ち、正社員と同等の業務を行うような者が現れた場合には、活用係数について再度の見直しが必要と思われる。

④ 職務評価

 職務評価ツールを用いたところ、実在する者の職務ポイントが正社員とパートタイム労働者ではかなり開きがあるため、時間賃率も大きく離れていた。また、人数が全部で3名しかいないことから、プロット図にすると分かりにくかったが、水準は正社員とパートタイム労働者の間で適正だということがわかり、均等・均衡待遇が確保されていることを確認した。

Step2. 制度設計

① 等級(グレード)制度の検討

 今回パートタイム労働者の等級制度を検討するにあたっては、実在するパートタイム労働者、正社員の他に、今後募集する可能性のある未経験のパートタイム労働者および、中間層に位置する経験者の正社員、または今のパートタイム労働者を正社員化した場合を含めて検討を行った。なお、部門Bに関しては、未経験では難しい業務であるため、補助的業務を担当するパートタイム労働者②は設定しないこととし、パートタイム労働者①のみとした。

部門A(許認可等) 部門B(測量)
正社員①
(不在)
経営に左右することがなければ一人で完結。 正社員①
(実在)
経営に左右することがなければ一人で完結。
パートタイム労働者①
(実在)
イレギュラー対応、難易度の高いものは代表の業務指導を受けながら、担当業務修得を図り、基礎的な業務のみ、一人で対応。 正社員②
(不在)
イレギュラー対応は代表の判断を仰ぐが、それ以外は一人で完結。 パートタイム労働者①
(不在)
イレギュラー対応なし。代表の業務指導を受けながら、担当業務修得を図り、基礎的な業務のみ一人で対応。 正社員②
(不在)
イレギュラー対応は代表の判断を仰ぐが、それ以外は一人で完結。
パートタイム労働者②
(不在)
基礎的なものを含め全て上位者の判断を仰ぐ補助的業務。

② 賃金制度の検討

 以前自身で職務分析、職務評価を実施した時よりも最低賃金が上昇することが判明していたため、これに伴い、今回賃金の見直しを行った。
 賃金制度の検討にあたっては、ポイントごとに等間隔で賃金が上昇する形が望ましいものの、最低賃金の上がり幅等を考慮することとした。

効果

 今回の職務分析・職務評価では、業務内容の違いを可視化することができ、客観性が伴ったことで、従業員の納得感が得られた。職務ポイントを要素ごとにつけたことにより、誰が見てもわかりやすいものになったと言える。
 また、実在する正社員とパートタイム労働者の部門が異なることにより、実在する者同士の比較ができなかったため、今回の取組では、架空の人物像を描いて職務スケールの判定も行った。この方法により、架空の人物として設定した者こそが、将来採用すべき人物像として浮かび上がった。

課題

 毎年の最低賃金の上昇幅が大きいために、賃金テーブルの見直しがその都度求められる事態になっている。理想は、予め最低賃金の上昇に耐えうる金額かつ、ポイントごとに等間隔で賃金が上昇する形に設定することだが、これは経営面から難しい。当面は、最低賃金の上昇率に合わせ、その都度全体の見直しを図ることになると考えている。

工夫

 コンサルタントの支援を得て、職務分析・職務評価を進める内に、パートタイム労働者をどのように活用するか、それに伴い、どのような待遇にすべきかを改めて考える機会となった。長期で働く意欲のある者に、安心して長く勤務してもらえるよう、キャリアアップ助成金の「賞与・退職金制度導入コース」の活用をして、退職金制度をパートタイム労働者にも適用することにした。

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