根菜人
個人事業主が初めて一挙3名を雇い入れ、効果的な育成等のため職務基準の制度を導入し、同時に均等・均衡待遇を検討した事例
企業情報
| 住所 | 福岡県久留米市 |
|---|---|
| 従業員数 |
正社員2名
パート・無期社員1名 |
| 事業概要 | 農業(大根、オクラ、カブ) |
要約
事業拡大のため、この春3名を雇用したが、全員未経験者であり、早期戦力化のための育成が急務であった。そうした中、効果的な育成方法が課題だったことと、人事・評価制度の導入にも関心を寄せていたことから、両方を実現させる方法として、仕事(職務・役割)基準の等級制度を基礎に、まずは効果的な育成を先行させ、その後導入予定の賃金制度での均等・均衡を図るため制度設計を検討していく目的で職務分析・評価を活用した。
背景・目的
これまでも雇用はしていたが、社員の定着が課題だった。そこで、職務・役割基準の等級制度を導入することにより各人に求められる職務内容等の明確化を図ることにした。
今回、ほぼ同時に3名を雇い入れ、内訳は正社員2名とパート・無期社員1名であった。パート社員は、今後もほぼ全員を正社員並みに活用したい方針だったため、事業主のこれまで培ってきた知識・経験等を基礎にほぼ等しく育成を実施していたが、より効果的な手法がないか探していた。
そこで、その手法として仕事(職務・役割)基準の人事制度を組み入れ、まずは育成面の観点から急ぎ導入・取組をしたいということがきっかけであった。同時に待遇面での納得感を担保するため、職務分析・職務評価を制度内に盛り込むこととした。
Step1. 現状の確認(均等・均衡待遇)
① パートタイム・有期雇用労働者の活用方針を策定
未経験者の戦力化が急務であるため、パート社員にも基幹的な業務を担ってもらいたいことから、ほぼ全員を正社員なみに活用する方針となった。
② 職務内容の棚卸
事業主の知識・情報・経験等をもとに、作物別に畑作りから収穫に至るまでの工程について、まずは育成レべルの初級~上級者の区分を整理し、そのレベルごとの職務内容を洗い出した。ここでの職務の棚卸では、そのまま育成に活かせるよう職務ごとの作業手順(マニュアル)方式で取り組んだ。
また、実際の労働者は初級レベルのみであるが、等級制度設計につなげていくため、また将来の体制をここで検討するために、前述の育成レベルの職務内容の棚卸の後に、管理者レベルの職務内容の棚卸も追加して行った。
③ 均等・均衡待遇の状況確認
在籍中のパート・無期社員と正社員とは、職務内容はほぼ同じで、労働時間の違いが若干あるのみであるが、正社員には長期雇用を前提とした職務・役割が含まれることを考慮し、活用係数で若干その差を設けた。
続いて、将来の体制における等級制度、賃金制度をもこの後組み立てていくために、パート社員の人材活用方針(ほぼすべての者を正社員として活用したい)を前提とした均等・均衡待遇を検討していくことにした。
④ 職務評価
管理者レベルまでの職務内容を検討・設定した上で、これまで述べたことを踏まえて職務評価ツールを用い職務評価を行ったところ、全体的に正社員の賃金水準が低めに出た。このため、特に賃金面での見直しを検討しての均衡・均等を図っていった。
また、全体的に職務評価ポイントが高めに設定されていたので、客観性の観点からの若干の手直しをした。
以上の結果、均等・均衡が取れたものになった。
Step2. 制度設計
① 等級(グレード)制度の検討
職務内容の棚卸の段階から将来の体制を見越しての等級制度検討を行い、正社員は育成レベルで初級・中級・上級の3階級、管理・監督者レベルは2階級で構成した。一方、パート社員は、正社員任用がない限り、最上位級を正社員の上級レベル止まりとした。
さらに、育成面での配慮から、職務・役割を担う機会を各人に均等に与えるため、特に、正社員の上級レベルで、作物別の責任者としての職務・役割を等しく配分した。同時に待遇面も揃えるために、同職務・役割を担う時と担わない時の職務レベルや職責、職務内容がほぼ均等になるように手直しを行った。
| パート・ 有期社員 等級名称 |
対応する正社員 格付け制度 |
職務 ポイント (目安) |
新・等級定義 | 資格・ 研修 |
期間 (目安) |
役職 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 正社員4等級 | 33-38 | (職務レベル)事業主の理念に沿った戦略を、事業主の補佐として戦術を実行し、正社員3等級を采配し、野菜栽培、経営、人事の意思決定案を作り、事業主に提案することができる (役割責任)
|
日本農業検定1級 | 10年 | 副社長 | ||
| パート4等級 | 正社員3等級 | 正社員:22-32
パート:21-31 |
(職務レベル)野菜栽培全体の責任者として、正社員2等級を采配し、各品目間の人員配置や調整をし、目標利益を出すことができる
(役割責任)
|
日本農業検定2級 | 7年 | 部長 | |
| パート3等級 | 正社員2等級 | 正社員:14-21
パート:13-20 |
(職務レベル)担当する品目の責任者として、次にやるべきことを自ら計画し、使用する資材の準備をし、正社員1等級、0等級を采配し、設定した期限内に作業を実行できる
(役割責任)
|
(職務レベル)担当する品目の時期が終了した時には、部長補佐として、正社員1等級以下を采配し、各品目間の人員配置や調整をすることができる
(役割責任)
|
日本農業検定3級 けん引免許(農耕用) |
5年 | 課長 |
| パート2等級 | 正社員1等級 | 正社員:10-13
パート:10-12 |
(職務レベル)作業を行う目的を理解して、いつまでにやるべきか、どの手順でやるか、どこまでこだわるか、状況に合わせた判断ができる
(役割責任)
|
大型特殊免許(農耕用) | 2年 | 主任 | |
| パート1等級 | 正社員0等級 | 正社員:8-9
パート:8-9 |
(職務レベル)指示の意味を理解した上で、決められた範囲内の仕事を、指示された手順を守って、指示内容の通りの作業を完了することができる
(役割責任)
|
半年 | |||
② 賃金制度の検討
前述のように、職務評価ツールを使って均等・均衡を図る調整を行ったため、これをもとに近い将来制度を導入できるよう、財源面での手当てをした上で、早急に検討していくことにした。
途中、近く行われる地域別最低賃金の改定に合わせた各賃金額の見直しを行った。
③ 評価制度の検討
評価制度の具体化までは検討できなかったが、今後、職務・役割基準の人事制度を前提に、職務・役割に係る評価項目での目標管理制度を検討する。
効果
未だ仕組みの検討段階のため、効果はこれからの話になるが、今回、効果的な育成方法を急ぎ探っていく中での職務分析・職務評価の活用となった。
作業手順書のブラッシュアップを労使間で繰り返しながら、等級制度に沿った職務・役割のレベルアップ(評価結果としての昇格)を図ったのちに、賃金制度との紐づけをしていく計画となっている。
労使間で、仕組みを通して求められることが明確になるため、これがお互いの関係性を適正なものにできると期待しているし、そのような効果が出るようにしたい。
課題
作業手順書の有効性が育成面で重要なポイントとなるため、そのブラッシュアップを労使間で計画的・継続的に実施できるようPDCAを回しながら行う必要がある。
工夫
職務の棚卸は、そのまま育成に使えるよう作業手順書(マニュアル)方式で行った。
実際に現在雇用している労働者は初級者のみだが、将来的なことを考え、管理者レベルなど上位の等級制度も設計した。
労働者数が少ないからこそ、代表者自身が職務の棚卸や等級制度設計に主体的に関わることが可能だった。