株式会社西山ケミックス

戦力であるパートタイム労働者の更なる活用にむけ、法律に即した対応がとれているか、均等・均衡待遇の確認をおこなった事例

企業情報

住所 京都府宇治市
従業員数
  • ・正社員 約19名
  • ・有期雇用労働者 約11名(フルタイム1名、パートタイム10名)
  • ・パートタイム労働者 約18名(無期転換7名、有期雇用11名)
事業概要 ゴム製品全般の設計・デザイン・試作・量産、液晶保護フィルムの加工・販売

PDFデータ

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要約

  • パートタイム労働者が戦力となっている同法人では、同一労働同一賃金の対応ができているのか不安な部分があった。そのため、職務分析・職務評価を実施して、正社員とパートタイム労働者の仕事の違いを客観的に可視化。結果、法律に即した対応がとれていることを確認した。

背景・目的

 同法人では、製造部門においてパートタイム労働者が戦力になっていた。同一労働同一賃金の導入に伴い、パートタイム労働者と正社員の仕事の違いを客観的に判断してもらうと共に、給与体系が法律に抵触していないか現状を把握したいと考え、職務分析・職務評価コンサルティング支援に申し込むこととした。

Step1. 現状の確認(均等・均衡待遇)

① パートタイム・有期雇用労働者の活用方針を策定

「パートタイム労働者・有期雇用労働者の一部を正社員並みに活用する」

 製造部 Gグループ(ゴム加工)では、パートタイム労働者も活躍しており、パートタイム労働者で勤続年数が長くリーダークラスの社員と、勤続年数が短い正社員を比べた場合に、均等・均衡待遇がとれていると言えるのか気になっていた。社内の目線で判断するのは難しいため、働きぶりを客観的に分析し、どのように活用すべきか検討することとした。
 また、やる気があり、フルタイムでの勤務を希望するパートタイム労働者は正社員登用もしており、正社員登用間近な者と補助的な業務をしている者との中間となるような段階を作った方がよいのかも合わせて見ていくこととした。

② 職務内容の棚卸

 職務内容の棚卸には、「製造部 Gグループ」を選定した。選定した理由は次の2つである。

  • ・製造部のパートタイムは人数が多く、非正規全体に占める割合が50%を超えているのだが、無期転換した者であれ有期雇用の者であれ、いずれも正社員と同じような役割を果たしている。
  • ・製造部には、Gグループとは別にFグループもあるが、Fグループは業務内容が明確に分かれており、Gグループのように正社員との業務の混同の懸念がない。
■ 職務内容
職務内容の表

 実際に棚卸をしたところ、正社員はより危険な作業を担っており(例:練り作業でロール機を使用するものや金型の洗浄など)、また、若手社員やパートタイム従業員に業務をレクチャーすることも担っていた。他方、パートタイム労働者は仕上げ検査など補助的な仕事に従事していることが明らかになった。

③ 均等・均衡待遇の状況確認

 「製造部 Gグループ」で選定した正社員とパートタイム労働者の、均等・均衡待遇の状況を確認するにあたり、

【1. 時間賃率について】

 パートタイム労働者との違いとして、正社員は基本給のほかに、役割給(概ね勤続年数に連動しており、チーフ、リーダー、エキスパートといった役職に応じて払われている)が支給されており、時間賃率を算出するにあたっては、両者を対象とした。

【2. 人材活用の仕組みまたは運用の違いについて】

 3つの観点から確認したところ、突発的な残業等は正社員にだけ発生するものの、それ以外は両者で大きく異なっているわけではないと判断し、活用係数(※格差の度合いに応じ調整するための計数)を1.0とした。

■ 人材活用の仕組みまたは運用の違い

 フルタイムの有期雇用労働者は1名のみであったため、正社員とパートタイム労働者間を比較

観点 正社員 有期 パート(無期) パート(有期) 相違のポイント
転勤等、働く場所の変更可能性 × × × ×
  • ・いずれの社員タイプも転勤の可能性はない。
職務や職種の変更等、従事する仕事の変更可能性 ×
  • ・正社員:製造部以外への配置転換がありうる。
  • ・有期:製造部門内での配置転換がありうる。
  • ・パート(無期):人間関係や、職場環境・業務内容による体力面において本人から異動希望が出た場合のみ配置転換がありうる。
時間外、休日労働、深夜勤務等の勤務時間の変更可能性 × × ×
  • ・正社員:急な納品要請に対応することがありうる。

④ 職務評価

 これらを踏まえ、職務評価ツールを用いたところ、同レベルの職務ポイント同士で時間賃率に差はなく、賃金水準も正社員とパートタイム労働者の間で適正だということがわかり、均等・均衡待遇が確保されていることを確認した。

■ 職務評価結果
職務評価結果のグラフ

同社は、従来から、パートタイム労働者への給与は、勤続年数に応じて基本給があがるようにしており、正社員と同じ業務内容を希望する方は、正社員になってもらうようにしている。
均等・均衡待遇が確保されているという確認結果をふまえ、業務内容としても新たに中間段階を設ける必要はないという結論になり、従来どおり、やる気があり能力の高いパートタイム労働者には説明のうえ試験などを受けてもらい、正社員転換する対応を続けることにした。

効果

  • 職務評価ツールにて職務ポイントをつけ可視化したことで、客観的に職務と賃金の対応関係が適正であることを確認することができた。
  • 以下のような特徴を知ることができた。
    ① パートタイム労働者の間では、職務ポイントの開きがほとんどない。
    ② 正社員とパートタイム労働者との間で職務ポイントに相当程度、開きがある。
    ③ 時間賃率に換算をして比較すると、賃金水準も正社員とパートタイム労働者の間で適正。

課題

  • 改正パートタイム有期雇用労働法の動きを受け、通勤手当・家族手当・住宅手当などの支給を開始したが、パートタイム労働者の中からは、扶養内で働くために勤務時間を短くしたいという希望もでてきている。扶養の枠組み等を含め、制度としてより多様な働き方ができる就労形態を検討する必要があると考えている。

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