株式会社大廣製作所

戦力であるパートタイム労働者の更なる活用にむけ、法律に即した対応がとれているか、均等・均衡待遇の確認をおこなった事例

企業情報

住所 大阪府大阪市
従業員数
  • ・正社員 約88名
  • ・有期雇用労働者 約9名
  • ・パートタイム労働者 約9名
事業概要 理美容機器の製造販売

PDFデータ

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要約

  • 同社では、翌年60歳以上となり嘱託職員に切り替わる正社員が数名いたこともあり、パートタイム・有期雇用労働法への対応が必要だと考えていた。また、その他にも社員のモチベーション向上や若手人材の採用・育成の観点からも、既存の制度の見直しを必要としていたことから、職務評価コンサルティングを通じて職務の再整理と制度の見直しをおこなった。見直しはコンサルティング支援後も継続し、新たな制度の説明は、外部の社労士や弁護士に依頼し説明をおこなうこととした。

背景・目的

職務分析・職務評価の手法を学ぶことで、以下のような課題や叶えたいことに対応したいと考え、コンサルティング支援に応募した。

  • ・パートタイム・有期雇用労働法を遵守するため、正社員とパートタイム労働者の職務の内容と責任の程度を明確化するとともに、待遇差を定量的に確認する。また、確認した待遇差について説明できる状態にする。
  • ・60歳以上となり嘱託職員に切り替わる社員の職務を把握する。
  • ・既存の人事制度が作成時から15年経過しており、社員のモチベーション向上、若手人材の採用や育成、離職問題の観点からも見直しが必要である。

Step1. 現状の確認(均等・均衡待遇)

① パートタイム・有期雇用労働者の活用方針を策定

「パートタイム労働者の大半は補助業務に活用する」

 現在、パートタイム労働者の中で一番割合が多いのが「張り加工職」である。張り加工職の革張り作業は、手作業が多い業務だが、今後レーザーカッターを導入すると、作業が簡単になり定型的な補助業務となる。そのため、この定型的な補助業務に従事するパートタイム労働者を、他の業務(作業進捗の確認・受注内容確認等)にも活用したいと作業現場からの意見があったため、このような活用方針を策定した。

② 職務内容の棚卸

 職務内容の棚卸には、「大分工場に勤務する全パートタイム労働者」を選定した。選定した理由は以下である。
  • ・当初、加工職はパートタイム労働者の割合が最も高い職種であることから対象に選定したが、対象工場でのパートタイム労働者が全9名であることから、ほかの各職種についても対象範囲とした。(※コンサルティング支援後、本社工場も対象に実施)
    なお棚卸は、複数の人が同じ職務を行っていれば取り纏めて棚卸を実施し、別であれば1人1人棚卸を実施した。
■ 職務内容(組立部の一部のみ抜粋)
パートと正社員の職務内容

③ 均等・均衡待遇の状況確認

 比較対象の均等・均衡待遇の状況を確認するにあたり、

【1. 時間賃率について】

 パートタイム労働者との待遇の違いとして、正社員は基本給に関する賃金項目として、生活給、能力給、役職手当、職務手当が支給されており、時間賃率を算出するにあたって対象とした。一方で、パートタイム労働者は、基本給のほかに皆勤手当てが支給されているため対象とした。

【2. 人材活用の仕組みまたは運用の違いについて】

 3つの観点から確認したところ、全てにおいて違いがあったため、活用係数(※格差の度合いに応じ調整するための計数)を0.8とした。今後、パートタイム労働者によっては正社員並みに活躍する社員も出てくることが想定される一方、扶養の関係から引き続き時短で働きたい社員もいるため、活用係数は適宜見直しをおこなっていく想定である。

観点 正社員 パートタイム 相違のポイント
転勤等、働く場所の変更可能性 ×
  • ・正社員は全国転勤があるが、パート・有期社員はない
職務や職種の変更等、従事する仕事の変更可能性 ×
  • ・正社員と異なり、パート・有期社員は基本的に同じ業務に従事する
時間外、休日労働、深夜勤務等の勤務時間の変更可能性 ×
  • ・正社員と異なり、パートは工場や社内で勤務しているので、みなし残業代を入れていなかった。

④ 職務評価

 これらを踏まえ、職務評価ツールを用いたところ、同レベルの職務ポイント同士で時間賃率に差はなく、賃金水準も正社員とパートタイム労働者の間で適正だということがわかり、均等・均衡待遇が確保されていることを確認した。但し、均等均衡待遇が確保されていたとしても、当初の課題や叶えたいことに対応できているわけではないため、制度検討を実施することとした。

■ 職務評価結果
プロット図①パートと正社員の比較

Step2. 制度設計

① 等級(グレード)制度の検討

 パートタイム労働者の等級制度を検討するにあたっては、既存の正社員の等級制度を活用した。「パートタイム・有期雇用労働者の活用方針」で策定したとおり、パートタイム労働者は正社員の補助業務に従事することから、正社員の一番下の等級の下にパートタイム労働者の等級を配置する形で整えた。

■ 等級制度たたき台
パートタイム労働者 正社員
等級 等級定義 等級名 等級定義
⑤一般社員Ⅲ
(大卒の初任レベル)
  • ・部門内上長の業務指導を受けながら、担当業務修得を図るレベル。
⑥一般社員Ⅳ
(高卒・短大卒の初任レベル)
  • ・部門内上長の業務指導を受けながら、担当業務修得を図るレベル。
  • ・大分工場の製造(組立・加工)補助作業に従事するパートタイム社員

② 賃金制度の検討

 当初は賃金制度の見直しは検討していなかったが、最低賃金の上昇に伴い一部賃金の見直しが必要なパートタイム労働者がいたことや、社内方針が変わったため見直すこととした。
 賃金制度の検討にあたっては、等級制度と連動する形で、正社員の一番下の等級の下限の金額が、新たに設けたパートタイム労働者の等級の上限の金額と同じとなるようにたたき台を作成した。
 職務ポイントの妥当性は、組立部内の各職務で違いがあるため、継続検討とした。

■ 賃金制度たたき台
パートタイム労働者 対応する正社員
等級 職務ポイント 基本給たたき台 等級 基本給たたき台
上限 中央値 下限 上限 中央値 下限
17 923 913 903 1,154 1,038 923

③ 評価制度の検討

 同社では、今回の職務評価の結果、対象パートタイム労働者と比較する正社員の職務スケール(※職務評価をおこなう際の評価項目の構成要素を、要素別にポイント付けする尺度の基準)の判定で一定評価者にバラつきがみられた。そのため、専門性の程度(高い・平均・低い)などについて、部門内で統一したスケール基準を整備し、その職務評価の手法を、全社(パートタイム労働者含む)の人材育成体系に活用していくことを想定している。その際、スキルに特化したものではなく、給与体系含め横断的な見直しを検討している。

効果

  • 職務評価ツールにて職務ポイントをつけ可視化したことで、客観的に均等均衡待遇が図れていることを確認することができた。
  • 若手人材が育ち、一部のパートタイム労働者を正社員並みに活用できる環境作りの一助となった。
  • 業務内容と責任の程度の明確化された。
  • 社員が適切に評価され、フィードバックに至る仕組みを確立する一助となった。

課題

  • 制度導入にかかる課題として、現状の給与からは下がらないような形で配慮が必要
  • 各自の評価基準にバラつきがあるため、自己評価・部下の評価を実施し各採点での基準を議論することや、評価ガイドラインの確立が必要。

工夫

周知活動

  • 制度導入については、社員の納得感を得るために、社内説明ではなく外部の先生(社労士、弁護士)に説明するように依頼している。

制度のブラッシュアップ

  • コンサルティング支援後、外部の先生(社労士、弁護士)に依頼し、等級制度や賃金制度などの支援を受けることとした。

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