事例1-2-14 各種商品小売業
職務内容の棚卸を実施した上で格付け制度を整備した事例契約社員やパートタイム労働者の人事制度も整備することで人材の確保定着やステップアップに寄与
1. 企業概要
所在地 | 東京都 |
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従業員数 | 約10,000名 うち、約5,000名がパートタイム労働者 ※フルタイム有期契約労働者約1,000名 |
主な事業内容 | 各種商品小売業 |
2. パートタイム労働者に関わる人材課題
優秀な人材の獲得競争の激化に伴う賃金の改定、収益構造の変化に伴う有期契約労働者の活用推進、及びパートタイム労働法への対応の観点から、パートタイム労働者の制度の整備が必要であると認識している。
3. パートタイム労働者の人事制度の概要
正社員は社員Ⅰ、有期契約社員は月給制の「社員Ⅰ」、「ライセンス社員」、「ライセンスパートナー」と時給制の「パートナー(パートタイム労働者)」の5区分で構成されている。社員Ⅰは4,000名程度、月給制契約社員が2,000名程度、時給制契約社員が4,000名程度となっている。
人事制度の変遷
1995年に旧X社が職務等級制度を導入し、人事制度の整備を進めた。基本設計として、上位の正社員は専門資格の6段階、下位の正社員は実務資格の7段階、社員Ⅱは8段階、時給パートナーは6段階で格付けを整備した。
その後、2009年に旧Xと旧Yが合併し、旧Xの人事制度に一本化された。
現在、労働契約法等への対応、早期登用等の観点から有期契約労働者の更なる人事制度改訂を検討中である。
図表1.社員Ⅱ(月給制契約社員)と時給パートナーの人事制度
人事制度 | 社員Ⅱ (月給制契約社員) |
時給パートナー (パートタイム労働者) |
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労働時間 | ・フルタイム勤務 ※1年更新 |
・週35時間以下の勤務 ※半年更新 |
賃金制度 | ・月給制 ・格付(8段階)と地域(6区分)により 賃金テーブルを設定 |
・時給制 ・競合他社の地域相場を意識し、店舗単位で 6段階の賃金テーブルを設定 |
職種 | ・販売スタッフ職 | ・販売スタッフ職 |
人事評価 | ・目標達成度に基づき6段階で評価を実施 ・昇給/昇格や賞与支給に反映 |
・基本活動、個人重点活動、個人売上高の 3つで評価を実施 ・昇格に反映している |
転換制度 | ・正社員への転換制度あり ・自己申告の上、人事評価の結果や売上 実績等を考慮 |
・社員Ⅱへの登用制度あり ・自己申告の上、人事評価の結果や売上 実績等を考慮 |
4. 職務分析・職務評価の導入目的と活用状況
上位の社員Ⅰ(専門資格)の格付制度運用のため、職務評価(要素別点数法)を実施した上で職務等級評価制度を導入した。職務基準表に基づき、「成果責任」、「職務活動」、「ノウハウ」のレベルを判定し、格付等級を決定する。下位の社員Ⅰ(実務資格)から上位に昇格する際は、審査を実施し決定する。
社員Ⅱや時給パートナーに対しては、直接職務評価を実施していないが制度設計の際に考え方を参考にした。
5. 均等・均衡待遇の状況
時給パートナーは販売の補助業務に従事している一方で、社員Ⅰは販売業務全般を担う立場にあり、職務内容の棲み分けは明確である。職務内容の差異に基づく賃金設定がなされているため、均等・均衡待遇の問題は発生しない。
また、社員Ⅱについては、最上位の格付の場合、社員Ⅰの実務資格と同程度の職務内容を担っており、賃金もほぼ揃えているため、スムーズな登用が可能になるよう設計している。従って、均等・均衡待遇は図られていると考えられる。
加えて、社員Ⅰは勤務地・職務を限定できないが、有期契約社員は限定可能である。
6. パートタイム労働者の人事制度により得られた効果
パートタイム労働者の雇用管理は労働市場などへの柔軟な対応が必要なため、地域の賃金相場を踏まえた店舗単位の賃金テーブルを設定し、地域における採用力を維持している。
また、更なる人材活用の推進や均等・均衡処遇実現のため、パートタイム労働者にも登用制度を導入したことで、社員Ⅱの定着化が図られた。