事例1-2-13 情報通信業

職務評価を活用した役割等級の設定とそれに合わせた賃金制度を設計した事例

1. 企業概要

所在地 東京都千代田区
従業員数 約20,000 人
ほぼ全員が正社員、契約社員(パートタイム労働者は少数)
主な事業内容 情報通信業

2. 取組のポイント

  • 職務内容を把握するために、まず各部門長が業務内容に関する質問紙調査を実施し、それに基づきインタビュー調査による職務(役割)調査を実施した。
  • 職務評価の概念については、インタビュー調査の中でも丁寧に説明し、理解してもらえるよう努めた。

3. 人事制度改革の経過

同社では、それまでの過去の実績の積み上げによる年功的な制度運用を改め、業務内容に基づく現在の仕事の価値に着目した人事制度の必要性から、平成25 年に管理職を対象として職能資格制度から役割等級に基づくミッショングレード制(社員ランク制)に移行した。

4. 職務評価の実施ポイント

(1)実施した職務評価に関する基本情報(平成24 年実施)

図表3-10-1 実施した職務評価の基本情報

実施目的 ・管理職のミッショングレード制(社員ランク制度)の構築
実施者 ・人事担当者と外部専門機関
実施対象 ・管理職社員が行っている仕事(約1500 ポジション)
実施手法 ・要素別点数法による職務評価を実施
・外部専門機関から提示された職務評価表を活用
・「ポジションに求められる専門性」「問題解決の困難度」「組織規模」等といった計8 項目を評価項目に設定
・事前に各ポジションの仕事内容に関する質問紙調査を実施し、その内容をあらかじめ整理
・原則、人事担当者1人と外部専門機関の社員1人の計2 人で対象となる部署の部門長にインタビュー調査を行い、職務評価を実施
・ある程度慣れてきた段階で、人事担当者のみでインタビュー調査を実施
・最終的には経営幹部が評価結果を確認

(2)本事例から得られる職務評価を実施するためのポイント

Point1
対象となるポジションの部門長に事前に「業務調査票」を記入してもらい、その内容を確認した上でインタビュー調査を行い、人事担当者が中心となって職務評価を実施

同社では人事担当者が中心となって外部専門機関と一緒に職務評価を実施した。しかし、同社の仕事は多岐にわたっており、人事担当者が全体を網羅的に把握しているわけではなかったため、仕事内容を把握するために「業務調査票」を各部門の長に記載してもらうことから始めた。
その結果を確認し、インタビュー調査を実施した。あらかじめ仕事の内容を把握したことで、ある程度焦点を絞ったインタビュー調査ができた。

Point2
インタビュー調査の中で「職務」に関する評価であることを説明

「職務評価」と「人事評価」を混同している管理職社員も多くいたことから、人事担当者によるインタビューの中でも、その違いについて丁寧に説明し、理解してもらえるよう努めた。その際、「他の人になっても同じ結果になるか」という問いかけをし、同じにならないのであれば「人物評価」になっていることを気付いてもらうよう工夫した。

Point3
職務評価結果は本人とその上司にのみ公開

どのポジションがどの役割等級になるかを公開することで、本来はポジションの役割の大きさの違いを表しているだけにも関わらず、役割等級の違いが、そのポジションに就く社員の個人評価だと誤認されてしまうことが懸念された。そのため、職務評価結果とそれに基づく格付けについては、当該ポジションに就く本人とその上司のみの公開とした。

5. 職務評価を活用して導入された人事制度

(1)役割等級制度の格付けに活用(職種・資格体系(グレード)の仕組み)

同社では、それまでの職能資格制度を改善し役割等級制度を導入した。役割等級はマネジメント役割(ライン長)とプロフェッショナル役割(非ライン)の2つの職群に分け、そのうちライン長を担うマネジメント役割の役割等級は7 段階で設定した。各ポジションを職務評価した上で、役割等級を設定し、そのポジションの役割等級が、任用された社員の役割等級となる仕組みとなっている。

図表3-10-2 職務評価結果を活用したミッショングレードの設定

図表3-10-2 職務評価結果を活用したミッショングレードの設定

(2)賃金制度設計に活用

役割等級ごとにシングルレートの賃金を設定した。なお、人事評価結果は、月例の基本給には反映せず、賞与に反映させることとした。
なお、新制度に移行する際は移行前の賃金水準を維持して移行した。

6. 職務評価を活用した効果

調査時点(平成25 年8 月)段階では制度導入して時間が経過していないため、まだ明確な効果はこれから出てくると考えられる。

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