事例1-1-3 医療・福祉(介護事業)
職務評価を用いて、パートタイム労働者を含めた全職員統一の人事・賃金制度を構築した事例
1. 企業概要
所在地 | 岡山県勝田郡勝央町 |
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従業員数 |
常勤職員(正社員):41名 非常勤職員(パートタイム労働者):33名 |
主な事業内容 |
医療・福祉 老人保健施設、訪問看護、居宅介護支援、通所介護等の事業 |
2. 取組のポイント
- パートタイム労働者への格付け制度を創設した。
- パートタイム労働者を含めた全職員に対して、職務評価を実施して、その結果を用いて人事制度を設計した。
3. 人事制度改革の経過
これまで、常勤職員についても格付け制度がなく、賃金についても職種別の上限値・下限値が定められ、その範囲の中で定期昇給する仕組みとなっていた。また、非常勤職員については、世間相場に基づいて賃金が定められており、明確な仕組みがなかった。
そこで、常勤職員と非常勤職員を統一的に運用できる人事・賃金制度へ改定するため、職務評価を活用することとした。
4. 職務評価の実施ポイント
(1)実施した職務評価に関する基本情報
図表3-3-1 実施した職務評価の基本情報
実施目的 | ・常勤職員、非常勤職員に係る職種別等級別の対応関係の整理 |
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実施者 | ・施設長(経営幹部) |
実施対象 | ・常勤職員、非常勤職員含め、社員ランクの仕事に対して実施 |
活用評価手法 | ・要素別点数法 ・ガイドラインに記載されているGEM Pay Survey System に基づく職務評価表をそのまま活用 |
(2)実施内容(職務評価を活用した制度構築の仕組み)
同法人では、ガイドラインに基づき、職務評価を実施し、その結果を活用して、常勤職員と非常勤職員の人事・賃金制度を構築した。
①全職員の人材活用戦略の検討
同法人では、常勤職員と同様の業務を担う非常勤職員もいることから、施設長や他の管理職の中に、「非常勤職員のほぼ全員を常勤職員並みに活用したい」という意向があった。
そのため、全職員を対象とした格付け制度を設計するに当たり、非常勤職員については、常勤職員の1、2 等級と同程度の職務内容を期待するものとして設定した。
②職務内容の棚卸しと格付け制度の設計
次に、上記の方針に基づき、格付け制度について検討した。施設長や他の管理職との話し合いを通じて、図表3-3-2 にあるような等級定義を設定した。等級は常勤職員、非常勤職員を通じて同じ格付け制度とし、常勤職員の1、2等級と非常勤職員の1、2等級とが一致するようにした。
図表3-3-2 等級定義
役割等級 | 役職 | 定義 | |
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常勤職員 | 非常勤職員 | 役職 | |
5等級 | 課長 | ・法人又は施設全体の運営・管理を補佐する ・他法人の事例や情報を収集し、これらをベンチマークとしながら、施設に係る課題や問題点の解決を行う |
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4等級 | 所長 係長 |
・小規模施設、グループを統率し、組織的な業務運営・管理・計画的な人材育成を行う ・勉強会等を積極的に企画し、サービス・プロセスや事務手続き等の工夫・改善を行う |
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3等級 | 主任 | ・チームを統率し、業務運営・管理、個人の人材育成を行う ・最新の業務マニュアルに沿って、その内容をタイムリーにチームメンバーへ落とし込み、適切な業務運営を図る |
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2等級 | パート② | 一般 | ・担当業務を自らの判断・企画しながら、利用者に対するよいサービスを提供する ・メンバーに対して、やる気を発揮させるような声掛けや働きかけを行う |
1等級 | パート① | ・上司や先輩の指示を受けながら、担当業務を遂行する ・業務を少しでも早く習得するよう努める |
以上のように設定をした格付けに基づいて、各事業を担う管理職である課長、所長、係長や、現場の監督職である主任を対象にインタビュー調査を実施した。インタビュー調査では、「職業能力評価基準(
施設介護業・在宅介護業)」を用いて、図表3-3-3 に設定した格付けが妥当であるかどうかをチェックするとともに、格付けごとの職務内容の範囲について確認した。
インタビュー調査の結果を踏まえ、当初設定したとおり、非常勤職員は2 等級までとし、3等級(主任)以上は常勤のみとした。また、業務の特性を踏まえ、4 等級以上の管理職層は、事務職、介護職、看護職のみとし、5
等級以上については、事務職、看護職のみとした。今回の改定の中で、清掃職の職種も新たに設定し、2等級までの格付けとした。
さらに、非常勤職員でも3 等級(主任)以上の仕事ができると判断されれば、常勤職員に転換する制度も導入した。
なお、ケアマネージャー職、相談職等は、公的資格取得者で一定の専門性を持つため、1 等級を設けなかった。
図表3-3-3 全職員を対象とした役割等級制度
③職務評価による検証
各ランクの代表的な仕事をしている職員を対象に職務評価を使って、今回設定した格付け制度にズレがないことを確認した。
④賃金制度の改定、処遇にかかわる検討
賃金制度は、常勤職員、非常勤職員共通の制度を導入した。運用のしやすさを考慮し、給与構成案は下記のとおりとした。
賃金については、現行の支給額を維持しつつ、職務評価の結果や昇給モデルによる世間相場を考慮して、具体的な金額を設定した。
図表3-3-4 賃金項目
給与項目 | 備考 |
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年功給 | ・世間相場や勤続年数を考慮して支給 ・人事評価結果を反映させた定期昇給を実施 ・世間相場を参考にして賃金テーブルの開始値を設定 |
職種給 | ・職務評価結果を踏まえ算出 ・評価結果ポイント×ポイント単価により算出 ・職種別、等級別にシングルレートを設定 |
総合職手当 | ・常勤職員と非常勤職員の人材活用の仕方の違いに基づいて支給する手当 (常勤職員のみに支給) |
資格手当 | ・公的資格の取得者に対して支給 |
役職手当 | ・主任以上の役職者に対して支給 |
⑤職種給の算出
以下の図表3-3-5 にある職務評価により算出された結果に対し、既存の常勤職員の支給水準を基に算出したポイント単価をかけて金額を設定した。また、ポイント数は今後公開の予定である。
等級 | 事務 | 介護 | 看護 | ケアマネ | 相談 |
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5等級 | 37 | 36 | |||
4等級 | - | 32 | - | ||
3等級 | 26 | 24 | 26 | 24 | 23 |
2等級 | 13 | 15 | 22 | 19 | 18 |
1等級 | 11 | 10 | 12 |
※「-」は平成25年時点では該当者がいないため空欄となっている。
5. 職務評価を活用した効果
同社では平成26年度からの制度導入を想定していることから、現段階で具体的な効果までは見い出せないが、次のような効果が期待できると考えている。
- 常勤職員と非常勤職員を分けずに同じ枠組みで制度設計することで、相互に賃金の均衡を図ることができる制度を導入することができた。これにより、職員の賃金に対する納得感が高まり、モチベーションの向上に寄与すると考えられる。
- 非常勤職員の格付け制度が整備されたことで、非常勤職員自身がどうすれば昇格できるか、どうすれば賃金が上がるかを考えることができるようになった。このため、個々の職員のやる気を引き出し、能力開発等を含めたスキルアップにもつながると考えられる。