事例2-2-3 食品製造業

パートタイム労働者、正社員に関係なく、本人の努力や能力で適正処遇するために、職務評価を活かして人事制度を構築

同社は、従業員約100名の食品製造業です。約50年前に創業し、10年ほど前に従業員が約100名を超えた時点で、社内の各種制度の整備の必要性を感じて、制度の整備に着手しました。

職務評価を実施したきっかけ

同社は、従業員約100名の食品製造業です。約50年前に創業し、10年ほど前に従業員が約100名を超えた時点で、社内の各種制度の整備の必要性を感じて、制度の整備に着手しました。

人事制度についても、従来は前社長を含めた経営陣による判断を中心として、給与や昇給・昇格などを決定していましたが、100名を超える規模になると、この方法では一人ひとりを適切に処遇することが難しくなっていました。そこで、社内の各種の制度を整備する一環として、人事制度を一から構築することになりました。

当時からパートタイム労働者は、製造部門における重要な役割を担っていたので、制度設計に当たっては、正社員だけではなく、パートタイム労働者を含めて制度設計を行いました。

職務評価の実施プロセス

パートタイム労働者を含む全社員を対象に仕事の棚卸を行い「当社に存在する仕事一覧表」を作成

制度設計に当たって、仕事の棚卸しを行いました。具体的には、パートタイム労働者を含む全社員を対象として、自らが行っている仕事を書き出してもらい、重複しているものを整理することにより、「当社に存在する仕事の一覧表」を作成しました。

次に、特定した仕事について点数化を行いました。具体的には、「当社に存在する仕事の一覧表」のうち、「誰にでもできる一般的な仕事」を抽出して、これを100点としました。100点の仕事を基準として、「それよりもどの程度難しいか、簡単か」ということで、比較して点数化しました(同社においては、ヒアリングの内容から、職務評価の手法の一つである「分類法」を採用していると考えられます)。

また、正社員とパートタイム労働者に分け、それぞれについて等級制度を設計しました。正社員については、9等級とし、6等級以上を管理職としています。さらに、賃金テーブルについては、総合職と一般職に分けて整備しました。

パートタイム労働者については、同社の場合「フルタイムパート」と「パート」の2つのコースがありますが、熟練度にあわせて、「一般」「リーダー」「副主任」の3つに区分しました。

以上のように職務分析・職務評価により社内の仕事を特定し、点数化するとともに、等級制度を整備することにより、等級と職務(役割)との紐付けを行いました。例えば、製造部門の一般パートの場合には、「裁断作業」「揚がり調整」「機械洗浄」といった仕事を担当し、製造部門の正社員の4等級は「生産計画の策定」「ライン組み換え作業」等を担当します。こうした作業を通して、正社員とパートタイム労働者の役割の違いを明確にしました。

正社員とパートタイム労働者の仕組み

正社員とパートタイム労働者の仕組み

職務(役割)の棚卸し手順

職務(役割)の棚卸し手順
注:株式会社アイデム 人と仕事研究所の協力により作成。

職務評価結果の人事考課への活用

同社は、このように実施した職務評価の結果を人事考課にも応用しています。具体的には、等級ごとに整理した仕事(職務)をもとに、期初の段階で各社員が上司と相談して、評価シート(業務記述書)に、各人の仕事内容を記載します。これにより、自分の役割(仕事)は何か、どんな難易度の仕事をどのくらいの分量やっているかを明確にします。

そして、半期ごとにこの評価シートで明確にした仕事内容に対して、「どのレベルで遂行したか」を5段階で評価し、結果を人事考課に活かしているのです。なお、上記の過程は、正社員だけではなく、同様の方法でパートタイム労働者に対しても実施しています。

職務評価の導入成功のポイントと効果

正社員だけではなく、パートタイム労働者の仕事についても職務の棚卸しを実施

職務(役割)の棚卸し作業を行う場合に、正社員のみを対象とする企業も少なくないなかで、同社では、パートタイム労働者も含めた全社員を対象に、仕事の棚卸し作業を行うことで、社内のすべての仕事を把握することができました。

これにより、正社員とパートタイム労働者の職務(役割)の内容についても、明確に区別することができ、均等・均衡待遇の実現にも配慮することができました。

パートタイム労働者に対しても、職務評価にもとづいた人事考課を実施

同社では、正社員でもパートタイム労働者でも、本人の努力や能力によって適正処遇していくという経営方針を持っています。これに基づき、正社員だけではなく、パータイム労働者についても「職能等級評定書」という評価シートを使って人事考課を行っています。これにより、社員一人ひとりに求められる仕事の内容と、役割の達成状況を把握することができました。

業務内容の明確化と公平性を確保した体系的な人事評価を構築

職務評価の作業の中で、「当社に存在する仕事の一覧表」を作成することにより、社内にどのような項目、難易度の仕事があるのかが明らかになりました。また、これを各人の仕事(役割)に位置づけることにより、誰がどんな仕事をしているのか、どの程度困難な仕事をしているのか。について明らかにすることができ、かつこれを人事考課に使用することで、「能力の高い人や努力する人」を適切に評価できるような公平性の確保した体系的な人事制度を構築することができました。

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