事例1-1-6 各種商品小売業(百貨店、総合スーパー)

職務(役割)評価を用いてパートタイム労働者と正社員の均等・均衡待遇の状況を確認した上で、パートタイム労働者の格付け制度、賃金制度を整備した事例

1. 企業概要

所在地 福島県郡山市
従業員数 約13,300名
うち、約10,600名がパートタイム労働者
主な事業内容 各種商品小売業(百貨店、総合スーパー)

2. パートタイム労働者に関わる人材課題

同社の従業員構成のうち、パートナー(同社のパートタイム労働者)が10,000名以上を占めており、パートナーの人事管理のため、既に格付け制度、賃金制度等の人事制度が導入されている。しかしながら、人事制度を運用する中で、エキスパート社員(店舗が限定された正社員)とパートナーとの間の職務内容の棲み分けや人材活用上の違いが不明確となったことや、格付け制度や賃金制度等の運用が形骸化あるいは機能不全に陥ったことから、現状に合わせた制度の見直しが必要となった。

また、平成27年4月1日施行の改正パートタイム労働法や労働契約法等、法令改正への対応も課題であった。


3. パートタイム労働者の人事制度の概要

パートナーについては、既に格付け制度が存在したものの、現状の利用状況や人材活用状況から見直し、大括り化を行い、3区分に再編成した(P担当1、P担当2、Pチーフの3段階)。

パートナーの給与構成は、ベース給、職務給の2つから構成した。これまでの賃金制度では、個別店時給、部門加給、等級加給、技術加給等が細かく設定されていたが、それらを全て職務給(職務ポイント)の中で考慮することとした。職務給は、職務ポイントにポイント単価を乗じることで、計算し、ベース給は350円に設定した(職務ポイントについては後述)。


図表1.パートナー給与制度

  P担当1 P担当2 Pチーフ
上限値 778円 865円 953円
中央値 720円 801円 882円
下限値 662円 737円 811円
ポイント単価 45円
ベース給 350円

4. 要素別点数法の導入目的と活用状況

同社の社員群について人材活用の違いを整理した結果、エキスパート社員(店舗を限定した正社員)と、パートナーとの間において、仕事の変更の有無以外にあまり差異がなかったことや、職務内容についても両者に差異が見出しにくかったことから、エキスパート社員とパートナーとの間での、均等・均衡待遇が問題となった。そのため、両者の均等・均衡待遇の状況を確認するため、要素別点数法による職務評価を実施した。

各社員群の人材活用の違いについて整理したものが下記である。

図表2.各社員群の人材活用の違いの整理

  時間 働く場所 仕事の変更   活用係数
N社員群
(総合職正社員)
1週間40時間以内
(≒8時間×5日)
交代勤務あり
全国転勤 変更あり -
A社員群
(エリア限定正社員)
1週間40時間以内
(≒8時間×5日)
交代勤務あり
選定エリア(1県)の
店舗群内で転勤
変更あり -
E社員群
(店舗限定正社員)
1週間37.5時間以上
(≒7.5時間×5日)
交代勤務あり
自宅通勤圏内の
店舗群内で転勤
変更あり 1.0
P社員群
(パートナー)
1週間32.5時間以上
(≒6.5時間×5日)
自宅通勤圏内の
店舗群内で転勤
変更なし 0.9

職務評価を実施するに先立ち、同社は労働組合を有しているため、まずはパートナーおよびエキスパート社員における均等・均衡待遇の確認の必要性、および職務評価を用いた人事制度の改訂について、労働組合の合意を得ることが重要な前提であった。

交渉期間に約2か月を要したものの、無事労使間での合意を得て、職務評価を実施することができた。

職務評価の実施手順として、まず、選定したいくつかの店舗において、各部門(住居、精肉、デイリー、加食、鮮魚、レジ、管理、花、衣料、青果)から対象となるパートナーを200名程度選出し、各店舗の店長およびエリアマネージャーが職務説明書の作成を行った。エキスパート社員については、20~30名程度に対して同様に職務説明書の作成を行った。

ここで、職務評価の対象が200名以上に及んだことから、個別に職務評価を実施することは困難であった。そこで、職務説明書の各項目について、関連性の高い職務評価項目とスケール基準を設定することで、ほぼ機械的に職務評価を実施した。

職務説明書と職務評価項目・スケール基準の設定状況は下記の通りである。

図表3.職務説明書と職務評価項目・スケール基準の設定

  区分 対応する職務評価の
評価項目
  職務評価の
スケールの設定基準
部門 住居、精肉、
デイリー、加食、
鮮魚、レジ、管理、花、衣料、青果
①人材代替性 採用の困難さという観点から、
精肉・鮮魚・レジを2、
その他を1
業務の内容 主な業務 業務の概略 ②革新性 販売・数量・商品計画、シフト、売り場
作成、エンド手直し、他へのサポート業務は
2とし、その他は1
その業務を
行う範囲
⑤対人関係の複雑さ
(部門外/社外)
カテゴリ全般や他へのフォローを内容と
する場合は2、
Mgr代行、教育・指導を内容とする場合は3
仕事のスピード ③専門性 それぞれ努力=0、標準=1、優秀=2とし、
合計点で、0~2点は1、3~4点は2、
5~6点は3
出来上がった
仕事のレベル
必要な知識や
技術の水準
大部屋化の有無 ④裁量性 頻度が頻繁にある場合は2、
たまにまたは無い場合は1
責任の程度 権限 部下の有無 ⑥対人関係の複雑さ
(部門内)
全員1
権限の範囲 - -
役割の範囲 ⑥対人関係の複雑さ
(部門内)
指導的役割がある場合は2、無い場合は1
トラブル発生時や
緊急時の対応
⑦問題解決の困難度 トラブル対応がある場合は2、無い場合は1
必要な知識や
技術の水準
⑧経営への影響度 数値目標を求められる場合は3、
創意工夫が求められる場合は2、
ミスのない業務遂行が求められる場合は1

なお、評価項目はGEM Pay Survey Systemのものを使用し、ウェイトは全て1で設定した。活用係数については、前述の人材活用の違いを踏まえ、パートナーを0.9、エキスパートを1.0として設定した。

また、本事例では、パートナーの格付け制度の検証および賃金制度の設計についても職務評価結果を活用した。

格付け制度の改訂においては、パートナーの既存の格付けを大括り化し、3区分に再編成を行った。また、エキスパート社員の中でも、職務内容・職務ポイントに格差が見られたため、エキスパート社員の格付けを2区分とした。

職務評価による検証の結果、パートナーの最上位の等級とエキスパートの下位の等級とが均等・均衡待遇の関係に立つことが検証された。賃金制度については、図表4を参照。

図表4.パートナー格付け制度の職務評価による検証

パートナー 対応関係 エキスパート
役割等級 職務ポイント   職能資格 職務ポイント
      Eチーフ 17
Pチーフ 14 E担当 14
P担当2 12      
P担当 10      

5. 均等・均衡待遇の状況

職務評価結果に基づく、均等・均等待遇の状況は以下の通りである。

図表5.職務評価の結果と均等・均衡待遇の状況

図表5.職務評価の結果と均等・均衡待遇の状況


6. パートタイム労働者の人事制度により得られた効果

現在、労働組合の合意を得つつ、制度の導入について検討を行っているため、具体的な効果は得られていない。人事制度の基本骨子については労働組合から既に合意を得ており、詳細部分や評価制度等の周辺部分については、今後作りこみを行っていく予定である。

Point
好事例として参考にして欲しいポイント

同社にはパートタイム労働者が1万人以上在籍しており、職務評価の対象も200名以上に及んだことから、他の事例と比較して、職務評価を個別に実施することが難しい状況にあった。そこで、職務説明書を活用し、各記載項目と関連性が高い特に評価項目およびスケール基準を設定することで、対象者全員に対して共通の尺度で効率よく職務評価を実施することができた。

また、同社は労働組合を有していたため、職務評価を実施する前に、労働組合への趣旨説明、合意形成を図ることが重要であった。

今後、大企業や労働組合を有する企業において職務評価を実施する際には、特に参考となる事例であると考える。

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