事例1-1-4 社会保険・社会福祉・介護事業(特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、デイサービス)

職務評価を用いてパートタイム労働者と正社員の均等・均衡待遇の状況を確認した上で、処遇改善を含めたパートタイム労働者の格付け制度、賃金制度を整備した事例

1. 企業概要

所在地 広島県三原市
従業員数 74名
※うち、非常勤職員:7名、嘱託職員:3名
業種
(主な事業内容)
社会保険・社会福祉・介護事業
(特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、デイサービス)

2. パートタイム労働者に関わる人材課題

当法人も属する介護業界では、慢性的な人手不足が続いており、正職員であっても、なかなか人材が定着しない厳しい現状に直面していた。一方、正職員と比べ労働時間の短い非常勤職員(パートタイム労働者)の応募は、一定程度あったため、非常勤職員の活躍機会を増やせないか検討を始めた。これまで非常勤職員については、各人ごとに労働契約締結時に時給単価を都度設定してきたが、非常勤職員の中にも優劣があるため、人事制度を整備することで働きに見合った処遇を実現し、その結果が人材の確保・定着に繋がると考えた。都道府県労働局に届け出た一般企業行動計画でも非常勤職員の人事制度整備について触れている。

一方、非常勤職員の中には、正規職員と同様の職務内容を付与されている者もおり、平成27年4月からの改正パートタイム労働法の施行に向けて、非常勤職員と正規職員の間で、均等・均衡待遇について確認する必要もあった。既に、一部の非常勤職員の処遇改善については必要性を感じていたため、キャリアアップ助成金の活用についても検討した。

  • 人材確保・定着
  • 非常勤職員の職域拡大
  • パートタイム労働法等の法令遵守
  • 一般企業行動計画の一環
  • キャリアアップ助成金の活用のため

3. パートタイム労働者の人事制度の概要

正職員については、一昨年に導入した介護職員処遇改善加算に係るキャリアパス要件に基づく職能資格制度が導入されている。一方、非常勤職員(パートタイム労働者等)の格付け制度として、役割等級制度が導入されている。格付け制度の対応関係を整理すると、下記の通りである。

図表1.非常勤職員と正職員の格付け制度の対応関係

非常勤職員
(役割等級制度)
対応関係 正職員
(職能資格制度)
    5等級
    4等級
    5等級
パート④ 2等級
パート③    
パート② 1等級
パート①    

4. 職務分析・職務評価の導入目的と活用状況

経営層の方で、対象となる非常勤職員7名と非常勤職員の所属する事業所にて類似業務に従事する正職員を数名ベンチマークとして選出し、中央職業能力開発協会「職業能力評価基準(施設介護業)」を用いて、職務レベルの認定を行った。職務レベルの内容は、そのまま職務説明書として別途整理した。

当該職務説明書の内容について、正社員と非常勤職員との均等・均衡待遇を確認するために、職務分析・職務評価セミナーで知った要素別点数法(GEM Pay Survey System)を用いて、職務評価を行った。そして、職務評価の結果をそのまま活用し、図表2のような非常勤職員の基本給制度を設計した。基本給は、ベース給と職務給(=ポイント単価×職務ポイント)の合計で設定した。

図表2.非常勤職員の基本給

格付け パート① パート② パート③ パート④
職務ポイント 8 11 13 16
         
上限値 910 1,015 1,085 1,190
中央値 830 935 1,005 1,110
下限値 750 855 925 1,030

5. 均等・均衡待遇の状況

要素別点数法(GEM Pay Survey System)を用いて均等・均衡待遇の状況についてプロット図を作成すると、図表3の通りとなった。

時間賃率については、非常勤職員は時給単価を用いて、正職員は、基本給と賞与について1時間当たりに換算したものを用いた。また、正職員については、事業所間の配置転換や夜勤シフトが設定されているため、活用係数を0.8として実施した。

図表3.均等・均衡待遇の状況

図表3.均等・均衡待遇の状況

非常勤職員の中にも、正職員並の職務ポイントの職務内容に従事する職員もいれば、年功的な理由で、従事する職務内容と無関係に高くなっている職員もいたため、均等・均衡待遇が図れていないと判断し、前述のような職務評価の結果を用いた基本給制度の設計に着手した。

6. パートタイム労働者の人事制度により得られた効果

人事制度自体は、改定したばかりで、契約更新の際に、随時移行する予定である。一方で、既に複数の非常勤職員の求人応募があり、効果は期待できそうである。

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