事例2-1-4 小売業

パートタイム労働者の社員ランクを設定し、正社員とパートタイム労働者の均等・均衡待遇を実現した事例

1. 企業概要

所在地 関東地方
従業員数 正社員約1,800人
パートタイム労働者約8,800人
主な事業内容 小売業
スーパーマーケット事業を展開

2. 取組のポイント

  • パートタイム労働者の社員ランクを制定し、正社員とパートタイム労働者の均等・均衡待遇を実現した。

3. 人事制度改革の経過

「出店競争の激化」「店舗の大型化」「24時間営業などの営業時間の延長」等、スーパーマーケット業界は厳しい経営環境にさらされている。こうした状況に対応するためには、営業力の強化、人材の確保と育成が最重要課題となっている。
同社では、1980年代、従業員の中心は正社員であることを前提として、店舗が運営されていた。このため、パートタイム労働者は正社員の補助業務との位置づけであり、期待する仕事や処遇を明確に分離して運用されていた。
ところが、1990年代に入ると、パートタイム労働者の職域が拡大し、従業員全体に対する比率も大きくなってきたため、パートタイム労働者の能力開発の必要性が認識されはじめた。
そして、2000年代になると、パートタイム労働者に対して、正社員と同様の仕事を求めるようになり、パートタイム労働者の戦力化が重要な課題となってきた。
このような背景から、同社はパートタイム労働者の意欲、能力、役割に対応できる職務を設定し、それに応じた処遇を実現することにした。そこで、パートタイム労働者に役割等級制度を導入することになった。


4. 職務(役割)評価の実施ポイント

(1)実施した職務(役割)評価に関する基本情報

実施目的 ・パートタイム労働者の役割等級制度の設計
・役割等級ごとに期待される仕事の整理
実施者 ・人事担当者、各専門業務のスーパーバイザー
※同社は本部に現場指導を横断的に行う社員(以下、スーパーバイザー)がおり、店舗横断的な人材育成、店舗業務のマニュアル化等を実施した。
実施対象 ・店舗で行われている仕事
実施手法 ・分類法(注1)
・スーパーバイザーが中心となり、パートタイム労働者に求める仕事内容を洗い出し、仕事の質と量の両面から作業を分析して、役割等級を設定した。「質」については、「基幹的な仕事」なのか、「定型的な仕事」なのかによって整理した。「量」については対応できる仕事の範囲について設定した。
・整理された仕事をあらかじめ定めておいた3段階の役割等級制度と関連付けた。

注1 分類法とは、職務(役割)評価の手法の1つ。要素別点数法が職務の大きさを点数で表すのに対し、分類法は、社内で基準となる職務について、詳細な職務分析を行うことで、個々の職務を難易度にもとづき分類し、それを総合的に評価します。

(2)本事例から得られる職務(役割)評価を実施するためのポイント

Point1
店舗の仕事全体を知っているスーパーバイザーが仕事の洗い出しを実施

同社では、法人本部に店舗業務に広く精通しているスーパーバイザーがおり、その協力を得て、パートタイム労働者の仕事の切り出しを行った。これにより、仕事内容を精緻に整理することができ、その後の労使協議の中でも、仕事と役割等級の対応について分かりやすく説明でき、お互いに納得する制度設計をすることができた。

Point2
役割等級ごとに求める仕事内容と人材育成を関連付けて制度化

役割等級ごとに求める仕事内容を整理し、その役割等級に格付けされるために必須となる条件、獲得すべき社内資格を整理した。また、その仕事に必要な能力を身につけさせるために、人事評価制度の中で必要な能力をフィードバックするとともに、OJT、Off-JT を組み合わせた人材育成の仕組みを構築した。


5. 職務(役割)評価を活用して導入された人事制度

(1)社員ランクの仕組み

同社ではパートタイム労働者を3つの役割等級に区分している。各ランクの仕事内容を洗い出し、「質」と「量」の両面から分析した結果、最上位の3等級が正社員の3等級と同等の難易度の仕事をしており、2等級が正社員の1等級と同等の難易度の仕事をしていると判断した。

図表3-11-1 パートタイム労働者の役割等級と正社員役割等級との対応関係

パートタイム労働者の役割等級 定義 正社員との対応
3等級 ・部門の管理運営業務 正社員3等級と同等
2等級 ・現場リーダーの業務 ・現場リーダーの業務正社員1 等級と同等
1等級 ・定型業務

なお、パートタイム労働者の1等級では、「陳列」「仕分け」が役割であり、2等級になると「発注」「作業指示」が役割となる。それぞれの役割は、更に細分化されており、例えば「陳列」であれば、「お客様の邪魔にならないように陳列作業を行っているか」「補充陳列作業ができているか」といったことが評価される。

(2)賃金制度

同社では、パートタイム労働者の賃金体系は、正社員とほぼ同じように、「基本給」「資格給(注2)」などで構成されている(役職手当など、役職登用の関係から正社員だけに支給する手当がある)。なお、役割等級制度は「基本給」にのみ反映しており、役割等級毎にシングルレートで設定されている。
「基本給」は、時給換算すると図表3-11-1 において正社員とパートタイム労働者の対応する等級の賃金がほぼ同等の水準となるように設計している。これらは、賃金制度改定を行う際に、パートタイム労働者が組織する労働組合等と交渉し、同一労働同一賃金のコンセプトに基づいて設計した結果であった。
なお、「賞与」については正社員とパートタイム労働者で差がある。
前述したように、仕事の洗い出しを行い、等級ごとに求められる仕事を整理したことにより、役割等級のイメージについて関係者で共有することができ、納得のいく制度設計ができた。

注2 仕事の範囲に基づき、当社独自に6 段階の社内資格を設定している。この資格により、賃金額が設定されている。


6. 職務(役割)評価を活用した効果

  • 役割等級が導入され、仕事内容が明確になったことで、正社員が足りない店舗ほど、現場リーダー業務を行う2等級パートタイム労働者が育ちやすく、また、権限委譲に積極的な正社員の3等級がいる店舗ほど、その下のパートタイム労働者も育ちやすいことが確認された。
  • 正社員、パートタイム労働者の双方において、各等級で担当する仕事内容が明確になり、また、より上位の等級になるためには、どのような仕事ができるようになる必要があるかはっきりとしたことから、上位の等級を目指すモチベーションアップにつながっている。

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