事例1-2-6 大手小売業

職能資格制度での能力の見極めに限界が出てきたなかで、仕事を基準とした人事制度の設計のために職務(役割)評価を活用

同社は、全国主要都市に20店舗の百貨店を展開する他、企業グループ全体としては、百貨店以外にも卸事業、クレジット事業、建設事業などを展開しています。


職務(役割)評価を実施したきっかけ

職能資格制度で直面していた限界の打破

平成12年当時、同社は職能資格制度を採用していたものの、安定成長からゼロ成長時代に移行するなかで、“能力”の見極めの限界により、運用が勤続や年齢に左右されることで人件費の自然増が抑えられない状況が大きな課題となり、職能資格制度の運用が難しくなってきました。そこで、“職務”や“役割”といった仕事を基準とした人事制度への転換が必要であると判断し、人事制度の改定に着手しました。

同社では、仕事を基準とした人事制度を構築するため、職務評価の手法を使って、ベンチマークしたポジションの職務(役割)評価を実施し、その結果を活用して全てのポジションの役割等級を決定しました。


職務(役割)評価の実施プロセス

試行錯誤を経て自社にとって最適な職務(役割)評価の方法を活用

同社は、仕事を基準とした等級制度を設計するために、外部の専門企業の指導を受けながら職務(役割)評価を実施しました。しかし、当初導入した職務(役割)評価の方法は、直属の上司が部下の仕事を5段階で点数化するアンケート方式であったため、①職務(役割)評価の結果に緩和・厳格化の傾向が見られたり、②アンケート方式のため上司の評価の視点が確認出来なかったりと様々な点で問題が生じてしまいました。そのため、同社として最適な職務(役割)評価の方法について試行錯誤し、平成17年に別の外部の専門企業から導入した手法により、職務(役割)評価を実施しました。

平成17年に導入した職務(役割)評価では、以前に活用したアンケート方式ではなく、ベンチマークしたポジションの直属の上司に対するインタビューを通じて評価を行う方式を採用しました。インタビューは人事担当者の同席のもと外部の専門家2名が行い、通常2時間ぐらいかけて実施しました。評価者はインタビューを受ける直属の上司ですが、外部の専門家から見て職務内容と評価点にギャップがあるような場合は職務内容等の詳細を確認の上、評価点を確定させていきました。

次に、ベンチマークしたポジションの職務(役割)評価の結果をベースに役割等級制度を設計し、等級ごとに範囲給を設定しました。なお、範囲給の設定に当たっては、外務の専門家が有する職務(役割)評価の結果と賃金額を関連付けさせたデータベースの活用はせず、あくまで自社での当時の賃金の支給水準や賃金の支払能力などを踏まえて設定しました。そして、ベンチマークしたポジションの職務(役割)評価の結果に照らして、全てのポジションの役割等級を決定しました。

【図表】職務(役割)評価の実施プロセス

職務(役割)評価の実施プロセス


職務(役割)評価の導入成功のポイントと効果

職務(役割)に人が就いた状態を評価

同社では、職務(役割)評価をする上では、“職務(役割)”そのものではなく、“職務(役割)に人が就いて現実に機能している状態”を評価することに重きを置いて実施しました。従業員にとってイメージするのが難しい職務(役割)を前提にするのではなく、よりイメージがしやすい姿とすることにより、職務(役割)評価を円滑に進めることに寄与したと考えます。

面談形式での職務(役割)評価の実施

同社では、ポジションを評価する直属の上司は、事前に評価するポジションの仕事について、チェックした上で外部の専門家及び人事担当者によるインタビューを受けながら、その場にて職務評価を実施し、結果をまとめることを徹底しました。また、インタビューの場で外部の専門家及び人事担当者との議論を踏まえて評価することにより、評価によるブレを修正するよう努めました。

このような直属の上司、外部の専門家及び人事担当者の3つの視点を踏まえたことで、職務(役割)評価の結果に対する直属の上司の納得感を高めることに繋がりました。そして、直属の上司が職務(役割)評価の結果に対して納得し自信を持つことで、部下に対する説得力のある説明が可能となり、結果として職務(役割)評価の結果が会社全体(=全ての従業員)に浸透することができたと考えます。

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