事例2-2-2 複合サービス事業

合併に伴う人事制度の見直しにおいて職務(役割)評価を活用

同社は、会員の生産物(農産物)の販売、農産物直売所の運営、農業の生産に必要な肥料、農薬、農業機械や生活に必要な食品などの供給、ガソリンスタンドの運営、金融や共済の運営、高齢者福祉事業といった事業を実施しています。


職務(役割)評価を実施したきっかけ

組織強化のための人事制度の再構築

以前は、同一県内に同社と同じ事業内容の多くの小単位の事業体がありましたが、事業活動を行う上で万全な経営体制を整えるため、それぞれの事業体組織の合併を推進することになったため、同社も複数の事業体と合併して、現在の組織体制となりました。

合併前の組織では全く異なる賃金体系であったため、同社では、組織強化のために賃金体系を一本化する等の人事制度の再構築が課題となっていました。このため、上部団体から派遣される専門家からの指導を受けながら年単位のプロジェクトとして取り組み、平成12年中頃より、現在の新人事制度が開始されることとなりました。

人事制度について

(1)正社員とパートタイム労働者

正社員とパートタイム労働者(正社員以外のフルタイマー、パートタイマー、臨時職員を含む有期契約労働者)は、ほぼ同様な業務を行っているものの、正社員のみ販売業務や統括的な仕事を行っており、また責任の程度にも違いがあります。

正社員は、9等級の資格等級制度で評価制度などの人事制度の仕組みがありますが、パートタイム労働者には、資格等級制度、評価制度といった人事制度の仕組みはなく、それぞれ雇用契約書を取り交わしています。

正社員以外は、大抵の場合フルタイマーまたはパートタイマーとして採用され、その後、上司推薦も含め、本人の能力や勤務態度などについて総合的な判断が行われ、常勤役員等に認められた場合に臨時職員になります【図表1】。

(2)パートタイム労働者から正社員への転換制度

同社には、パートタイム労働者から正社員への転換制度があり、「勤続2年以上」「所属長の推薦」の2条件を満たせば転換制度を利用でき、「上部団体による統一の試験」「常勤役員との面接」を経て転換者が決定されます。試験は、おおむね隔年で実施されており、内容は、「データの読み取り」、「文章読解」、「作文」であり、正社員の採用時に課される試験と同じものを使用しています。

パートタイム労働者をはじめとする契約職員は約200人が在籍していますが、実際に転換を希望するのは一割(20人)程度で、正社員へ転換した者の等級は、勤続年数と前職の経験を勘案して人事担当部署により決められ、おおよそ1~3等級に格付けられる場合が多くなっています。

【図表1】人事制度概要

人事制度概要


職務(役割)評価の実施プロセス

正社員の人事制度の構築に当たっては、分類法による職務(役割)評価を実施しました。各部門の課長職でプロジェクトチームを組成し、上部団体から派遣される専門家の指導の下、議論を重ねながら仕組みが作られました。

まず、プロジェクトチームの各メンバーが、それぞれの部門の仕事の棚卸を行い、その結果をプロジェクトチームで議論を重ね、整理しました。同社は複数の組織が合併したため、必ずしも同一の職務内容でないことから、プロジェクトメンバーはこの作業に多くの労力を要しました。

次に、整理された職務を難易度AからE(Aが最も難易度が高い)に、一定の基準に従って分類しました。

この結果を用いて9等級の等級制度を整備しました。難易度の高い仕事は上位の等級に、難易度の低い仕事は下位の等級になるようにまとめました。また、各仕事を担当する等級を、3段階の習熟度モデル(完:独力はもちろんのこと完全に出来る、独:指導援助がなくても1人でミスなくできる、指:指導援助を受けながらミスなくできる)にあわせ、どの等級がどのような職務を行うのかを定めました【図表2】。

【図表2】等級別に求める職務のランクと習熟度«イメージ»

●●課

職務 ランク 9等級 8等級 7等級 6等級 5等級 4等級 3等級 2等級 1等級
×××計画の策定 A            
△△△の集計 D            
                   

完:「完」は完全にマスターし、指導も出来るレベル
独:「独」は上司の支援がなくとも完結できるレベル
指:「指」は上司の指示・指導のもとに遂行できるレベル

全部門・全職種にわたり役割要件を定義したため、役割要件書は、おおよそ100ページ以上にわたるものになっています。役割要件書は、移行時に職員に説明を行うとともに、現在も他の規程や各種様式とともに、グループウエアに登録されており、ネットワークに接続できるパソコンからはいつでも閲覧が可能になっています。なお資格等級は上部団体で定めるモデルが9等級であったことから、9等級を前提に職務評価が行われています。

また、賃金制度は、9等級の資格等級制度の区分をもとに設計されました。給与項目は、役割等級制度に基づく役割給、年齢給、役付手当からなります。新給与制度に移行するにあたっては、数名張り出し昇給(移行時において各等級の上限額を超過した場合に定められた、通常よりも昇給額を抑えた昇給)や、調整給という移行措置がとられました。役割要件書は人事考課の基準となっています。


職務(役割)評価の導入成功のポイントと効果

同社がひとつの大きな組織として新たに組織力を強化するため、職務(役割)評価を行ったことで、多種多様でばらばらだった職務を整理することができました。その過程で課長同士が議論をしながら、その仕事の意義や必要性等を考えることは非常に意義あるものであったとのことでした。

職務(役割)評価導入事例 一覧/検索へ