株式会社スギ薬局

キャリア志向と地元志向を両立する
勤務区分:「ナショナル・リージョナル・エリア制度」

株式会社スギ薬局_01_企業ロゴ

企業概要

会社設立年 2008年
本社所在地 愛知県大府市横根町新江62番地の1
業種 卸売業、小売業
事業内容 在宅医療にも対応した、地域連携・地域密着型ドラッグストアの運営
資本金 5,000万円
売上高(連結) 8,780億21百万円(2025年2月期)
社員数(連結) 11,820名(2025年2月末現在)
事業所数(グループ含む) 2,186店舗(関東:573、中部:612、北海道・東北:42、中国・四国:7、北陸・信州:93、関西:819、九州:40)(2025年2月末現在)

PDFデータ

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制度の概要

<全国勤務から地元勤務まで選べる柔軟な勤務区分制度>

  • ■同社は北関東から九州まで全国展開しており、正社員については勤務可能地域に応じて「ナショナル」「リージョナル」「エリア」の3区分を設けている。社員は採用時に自身の希望する勤務地区分を選択し、事情が生じた場合には1か月単位で申請により変更することが可能となっている。
  • ■「ナショナル」は北海道から九州まで全国転勤が可能な区分であり、最も広範囲の異動を前提とする。「リージョナル」は中間区分であり、東海圏や関東圏など特定地域内での異動を行う仕組みである。例えば中部リージョナルにおいては、愛知、岐阜、三重、静岡の範囲内で異動の可能性がある。「エリア」は自宅から90分圏内の店舗のみを対象とし、地元で腰を据えて働くことを希望する社員向けである。
  • ■全国的に地元志向が高まっており、自宅近くで働きたいというニーズが強まっていることから、「エリア」社員が最も多い状況である。給与が下がっても地元勤務を希望する傾向が強まっており、「ナショナル」から「リージョナル」、「リージョナル」から「エリア」への変更が増えている。一方で会社としては全国展開を維持するため、全国勤務が可能な社員を確保する必要があり、処遇差を設けることで「ナショナル」の選択を後押ししている。「ナショナル」では新業態・都心・郊外など多様な店舗を経験でき、成長スピードが高まるため、キャリア形成志向の強い人材には「ナショナル」「リージョナル」を推奨している。
  • ■また、非正規社員については正社員登用制度を推進している。一定以上の等級および登録販売者等の公的資格を有する従業員に対し、本人の手あげによって受験し、適性検査と採用部長および営業部長面談を経て「エリア」へ転換する。年間100名超が登用されており、内部パートナーの活躍・登用も非常に重視している。パートナーにも等級制度を設け、登録販売者等の公的資格の取得を正社員登用条件と位置付けている。

<労使の話し合いによる制度導入>

  • ■勤務区分制度の導入にあたっては、当時のスギ薬局人事部が中心となり、出店拡大に伴う働き方の多様化への対応が必要であることを労働組合に説明した。組合は全国の社員の声を集め、中央労使協議会や各エリアでの協議を通じて、現場の「中間区分が必要」「全国異動には手当が必要」といった意見を整理した。双方で議論を重ねた結果、大筋の合意を得て制度を導入した。現在も良好な労使関係のもと、継続的に協議を行い運用改善につなげている。
正社員(ナショナル)
(2,124名)
正社員(リージョナル)
(3,105名)
正社員(エリア)
(5,551名)
契約社員(87名)
パートナー社員
(32,250名)
職務内容等 勤務地区分による差なし
【店舗社員】…物販社員(登録販売者・BA・管理栄養士・一般)、調剤社員(薬剤師・医療事務)、本部社員(経営・営業補佐・システム・経理・人事等)
転居を伴う転勤の有無 あり なし
労働時間 勤務地区分による差なし
8時間/日
月平均165.3時間/月(年間休日117日)
調剤薬剤師は160.6時間/月(年間休日124日)
1~40時間/週(契約により決定)
雇用期間の定め なし あり(無期雇用選択者はなし)
賃金 基本賃金の100%
賞与基礎額の100%
基本賃金の90%
賞与基礎額の90%
契約により異なる
昇進、昇格 あり あり(契約社員はなし・ベアのみ実施)
教育訓練 あり

制度導入のきっかけ・背景

  • ■事業拡大に伴う転勤制度の課題に対応するため、10年以上前にエリア区分制度を導入した。中部エリアより関東・関西エリアまで全国展開を進め、全国各地から採用する体制へ移行した結果、応募者数が増加した。しかし、「全国どこでも異動できること」を前提とする従来の運用では、社員の意向との間に乖離が生じるようになり、より柔軟な制度が求められるようになった。
  • ■制度導入当初は「ナショナル」と「エリア」の2区分のみであったが、社員の多様な勤務ニーズに応えるため、7~8年前に中間区分である「リージョナル」を新設した。この背景には、出店エリアが愛知から岐阜・三重、さらに関西(大阪)、東京へと拡大し、その後も茨城・群馬・兵庫、そして北陸エリアへと広がっていく過程で、従来の「ナショナル」の意味合いが変化したことがある。地理的範囲と働き方の実態のずれを是正するために、リージョナル区分を設けたものである。

制度導入による効果

  • ■人事面でさまざまな施策を講じてきた結果、離職率は10年前の約10%から半減し、現在は1桁台となっている。勤務地を柔軟に選択できるようにしたこと等により、定着率は高まっている。また、こうした制度が入社希望者の増加にも寄与していると考えており、年間約1,000名を採用できている理由の一つである。

工夫点

<勤務区分変更手続きの簡易化>

  • ■勤務区分制度の運用にあたっては、社員が事情に応じて柔軟に区分を変更できるよう、申請手続きを簡便にしている。入社時には採用部門が制度を丁寧に説明し、「地元で働きたい」「全国で経験を積みたい」といった希望を踏まえて配属を決めている。また、入社後も区分変更が可能であることを明確にしている。
  • ■区分変更を希望する場合は、まず上長に相談し、背景事情を共有したうえで、ポータルサイトから申請する。申請は上長承認を経て人事部が配属調整を行う。結婚や出産などライフイベントを理由とする変更が多く、「ナショナル」から「エリア」への移行が中心である。近年は世代を問わず地元志向が強まり、全国転勤が可能な社員の確保が課題となっている。

<移動負担を抑えつつ、希望に寄り添う勤務体制へ>

  • ■同社では社宅制度は設けているが、近年は社宅を新たに設置せず、出張対応による業務体制を取り始めている。例えば、従来は中部に家族と居住する本社社員を東京の社宅に単身で住まわせていたが、現在は週3日を東京への出張、残り2日は本社等拠点事務所または在宅勤務とし、本人の基準地と勤務先を往復できる働き方としている。移動の負担はあるものの、出張と在宅勤務を組み合わせることで、社員の希望に寄り添う体制としている。社宅費用と単身赴任手当の組み合わせと、新幹線代・ホテル代の組み合わせには大きな差はない。移動時間を要しても自宅から往復できた方が望ましいとの声を踏まえ、今後も柔軟に対応していきたいと考えている。

<育児中社員の定着を後押しする勤務範囲の特例制度>

  • ■長期的に勤務を継続してもらうことを目的として「育児限定制度」を設けている。同制度では、子が小学3年生までは「エリア社員」の勤務範囲を通勤90分圏から60分圏以内に縮小できるほか、勤務曜日を選択し、繁忙期である土曜・日曜を休みに設定することも可能である。育児時に勤務範囲をより限定できる仕組みであるため、育児中の社員から高く評価されている(対象は育児中社員に限定)。
  • ■処遇については、時短勤務による減額のみを設けており、エリア縮小による差は設けていない。90分圏・60分圏ともに減額率は10%で同等である。

今後の展望・課題

  • ■全国展開を進めており、近年は海外展開の選択肢も広がっている。社員の地元志向が強い中、全国各地や海外で勤務できる人材を一定数確保することが課題となっている。全国・海外志向の社員を支援していきたいと考え、これまではスキルに応じた処遇を検討してきたが、今後は勤務地によって処遇を引き上げる必要があると考えている。処遇差をインセンティブとして感じてもらい、将来的な海外展開を見据え、「ナショナル」を希望する社員が増えることを期待している。