富士通株式会社
<企業概要>
会社設立年 | 1935年 |
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本社所在地 | 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター(本社事務所) |
業種 | 情報通信業 |
事業内容 | 各種のシステム、ソフトウェア、ハードウェア等の
研究・開発・製造・販売等 |
資本金 | 3,246億円 |
売上収益 | 3兆7,137億円(2023年3月期) |
社員数 | 124,000人(グローバル、2023年3月末現在) |
制度の概要
- ■同社は限定正社員制度をとらず、全ての正社員が働く場所、時間等の制約にかかわらず活躍できることを目指しており、「ジョブ型人材マネジメント」がその基盤になると考えている。職責の高さにあたる「FUJITSU Level」(等級)と職種の組合せから社内のポジションを約450種類に分類し、それぞれのポジションごとに役割や人材要件等を記載した「Role Profile」とその内容を具体化したジョブ・ディスクリプション(JD)を策定している。JDは仕事の内容と、求められる成果を定めており、採用や評価、報酬等を判断する基準となっている。
「ロール・プロファイル」「ジョブ・ディスクリプション」のイメージ
(富士通株式会社 提供資料より引用)
- ■給与は「FUJITSU Level」に応じて決定される。これにより高い職責を担う社員が高い報酬を得られることになり、高い職責にチャレンジする社員の意欲を喚起させたいと考えている。
- ■評価制度「Connect」は、社員が仕事における自身のパーパス(目的・目標)を自ら考える仕組みを組み込んでいる。社員は上司との面談を通じて、個人のパーパスと会社・組織のパーパスの一致点を確認し、成長や挑戦を目指す方向を考えたうえで業務目標を期初に設定する。期末には業務目標の達成度と組織のビジョン実現に向けた行動ができているかを評価する。
さらに評価結果は、昇格の決定や育成計画の作成に用いられる。ただし評価が高ければ自動的に昇格する仕組みではなく、職責の高いポジションが空いていることが昇格の前提となる。 - ■配置については、ポスティング(社内公募制度)を、幹部社員にジョブ型人材マネジメントを導入した2020年度に本格的に導入している。2022年度までの3年間で累計約19,000人から応募があり、このうち約7,200人が実際に異動した。幹部社員への登用はすべてポスティングで実施するよう見直している。社員を募集しているポジションのジョブ・ディスクリプションは、いつでも閲覧できる状態としている。応募にあたって上司への事前申告は求めていないが、面談であらかじめキャリアの希望等について上司と意思疎通をはかっておくことを推奨している。
制度導入のきっかけ・背景
- ■社外も含めた多才な人材がタイムリーに集まり、仕事に従事することができる環境を構築することを目指して、 「ジョブ型人材マネジメント」が 2020年に先行して幹部社員に導入され、2022年より一般社員へ拡大された。
- ■「ジョブ型人材マネジメント」 は、「全ての社員が魅力的な仕事に挑戦する」「多様・多才な人材がグローバルに協働する」「全ての社員が常に学び成長し続ける」という3点を実現するため、「事業戦略に基づいた組織デザイン」「チャレンジを後押しするジョブ型報酬制度」「事業部門起点の人材リソースマネジメント」「自律的な学び/成長の支援」の4つの柱から構成されている。
- ■現有人材をどのように活かすかを重視する従来型の「適材適所」の人材マネジメントは、事業戦略やビジョンに基づき迅速に組織を変革していく中では、求める人材の確保・育成につながりにくいという課題があった。この課題に対応するために事業戦略・ビジョンを起点とし、その実現に向けて最適な組織を考え、組織を構成するポジションに適切な人材を配置する「適所適材」のアプローチへと転換した。そのためポジションごとに責任権限・人材要件を明確化するジョブ・ディスクリプションが策定された。
ポスティング(社内公募制度)の利用実績
(富士通株式会社 提供資料より引用)
制度導入時の労使コミュニケーション
- ■一般社員にジョブ型人材マネジメントを導入するに当たり、まずポスティング制度を導入したことで、自律的なキャリア形成を促すために仕事経験の選択肢を広げるという考え方を社員に示すことができ、社員からも好意的な反応が得られた。こうしたことが、「ジョブ型人材マネジメント」に対する社員や労働組合の理解を得る大きな支えとなった。
労働組合も以前より、社員ひとり一人の主体的なキャリア形成が重要だと考え、独自にセミナーを開くなど組合員のキャリア形成を支援していた。
工夫点
- ■社内に数十ある本部は独自に必要な人員を定めて人材を獲得し活用できるよう、それぞれの事業戦略に則した人員計画の作成やタレントマネジメント等の取組みを行っている。各本部には「HRビジネスパートナー」(HRBP)と呼ぶ人事担当者を配置し、各本部をサポートしている。
- ■各本部はポスティングの活用にあたり、他本部の社員に向けて組織の魅力を紹介するコンテンツ(自社サイト内ページ、動画等)を作成している。また社員のキャリア相談にあたるキャリアカウンセラーや本部長のパートナーとしてキャリア関連施策の作成をサポートするキャリアコーディネーターを配置している。
制度導入による効果
- ■これまで上司が次期幹部社員として選んでいた社員は30代後半~40代前半であったが、幹部社員への登用を原則としてポスティングで決めるとしたことで、登用する社員の範囲が拡大した。すなわち20代や30代前半の社員にも広がりつつあるとともに、50代でも登用のチャンスが生まれている。また、女性社員の登用も増えている。
今後の課題
- ■今後の会社の成長をはかるには「ジョブ型人材マネジメント」を社内に浸透させることが最も重要と考えており、各職場がジョブ型人材マネジメントをしっかりと運用できるよう環境を整えていきたいと考えている。