株式会社陣屋

株式会社陣屋_01_企業イメージ

<企業概要>

会社設立年 1918年(創業)
本社所在地 神奈川県秦野市鶴巻北2-8-24
業種 宿泊業,飲食サービス業
事業内容 旅館「鶴巻温泉 元湯 陣屋」の運営
資本金 1億円
売上収益 4億4900万円(2022年)
社員数 43人(2023年11月現在)
社員の構成
  • ・正社員
    22人(うち接客11人、調理11人)
  • ・正社員以外
    パート:21人(うち接客3人。ほか庭園管理や清掃、バックヤード業務)

「多様な正社員」制度の概要

  • ■【週休3日制】
    1週間のうち火曜・水曜・木曜の3日間、例外的な場合(正月・ゴールデンウィーク・盆の期間中の営業、囲碁・将棋のタイトル戦開催、訪日外国人客による貸し切りの婚礼)を除いて旅館全体を休館としている。
  • ■それに合わせて正社員は1日の所定労働時間を10時間とする変形労働時間制をとり、火曜・水曜・木曜を公休とする週休3日制としている。パートは開館日の金曜・土曜・日曜・月曜のみでシフトを組んでいる。月曜はランチ・ディナーのみの営業として宿泊は受け入れないことにより、火曜に業務が生じないようにしている。
  • ■正社員の勤務形態は、2種類のシフトからなる日勤と夜勤に分かれている。夜勤は当番制で、3か月に1度ほどの頻度で金曜から月曜まで連日勤める。
  • ■基本給等の待遇は制度導入以前から変えていない。

制度導入のきっかけ・背景

  • ■社員の負担軽減のため、2014年より火曜・水曜を休館日とした。しかし火曜にもチェックアウトの対応や事務処理等が生じていたことから、2016年には木曜も休館日に加えて、全員が3日間のうち2日間は休める体制とした。
  • ■その後、2020年に新型コロナウイルスの感染拡大があった際に、顧客減への対応と社員間の感染防止を兼ねて4チームによる輪番体制を組んで営業した。この際、休館日の設定はとりやめたが、輪番体制のため社員は週休3日となっていた。同年中に顧客数は回復に向かい、濃厚接触者の定義が見直され社員の感染による休業の恐れが減ったことから、再び火曜・水曜・木曜の休館日を設定した。顧客数が回復した後も、週休3日制を維持できる見通しが立ったことから、社員の負担軽減のため、本格的に週休3日制度を導入した。

1週間の営業日と社員の休日のイメージ

株式会社陣屋_02_1週間の営業日と社員の休日のイメージ

(株式会社陣屋 ヒアリング内容より事務局作成)

工夫点

  • ■週休3日制の導入以前から、顧客情報や設備・サービスの状態、社員の勤怠、会計等を管理する基幹システムを自社で開発し、タブレット端末で勤務中に確認できるようにすることで、社員間の情報共有や業務の効率化を促進していた。これにより旧来の予約・フロント・接客・清掃といった係間の垣根や、係間の情報伝達の遅れによる手待ち時間がなくなった。現在は部門を「調理」「接客」の2種類のみに分けている。
  • ■上記の経緯から、社員が部門内のいずれの業務も担えるマルチタスク化を進め、週休3日制であっても柔軟にシフトを組むことができる体制を構築した。そのため例えば、繁忙期は社員を得意な業務に配置するが、閑散期はあえて不得意な業務に配置してマルチタスクに対応できるスキルを習得させている。

社員のマルチタスク化のイメージ

株式会社陣屋_03_社員のマルチタスク化のイメージ

(株式会社陣屋 提供資料より引用)

制度導入による効果

  • ■社員からは、3日間連続で休日をとることができ、仕事とプライベートのメリハリがついたという声があがっている。また、若い社員は月に2~3日ほど副業(業務委託)を行い、残業代がなくなった分の収入を得たり、異業種の知見を持ち帰ったりしている。例えば、清掃の副業を通じて旅館で使うことができる薬剤の利用方法を会得した者や、動画編集の副業を通じて学んだノウハウを旅館のSNSで活用しようとしている者がいる。
  • ■週の始まりにあたる金曜日は、前日の宿泊客がいないため、午前中を研修の時間にあてられるようになった。研修の主な内容は若い社員に向けたマナー・作法や冠婚葬祭の研修等であり、以前は開催日を複数回に分けるなどしていたが、1回の開催で済むようになった。研修以外には、施設・設備の修繕やマニュアルの見直し等を話し合う定例会にも時間をあてている。

今後の課題

  • ■週休3日制が定着し、副業をする社員がでてきているので、社員のキャリアプランをどのように提示し定着につなげていくか検討していく必要がある。社長や料理長というポジションはそれぞれ一つしかなく、新しいポジションをつくることも難しい。そこで例えば、新しい旅館の開業準備室に加わってもらうことで、数年にわたり働き続けてもらう道筋をつけることなどが考えられる。
  • ■定年まで働き続けることは減っていくと考えており、社員にとって良い働き方を用意することで良好な関係を築き、仮に退職しても戻ってくるような長いつながりを保ちたいと考えている。

活躍する社員の声

浦田明歩さん

鶴巻温泉 元湯陣屋
浦田 明歩 さん

  • ■週休3日制の導入後に入社した。
  • ■休みを多くとれるため、宿泊やレストランの利用で来館する外国人観光客への接客に活かせるよう、休日を語学の学習をする時間にあてることができている。
  • ■入社から間もないので、同じ業界のことをもっと知ることができるよう、他の宿泊施設を私的に利用して参考にすることにも休日を活用している。