株式会社日立製作所
<企業概要>
会社設立年 | 1920年 |
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本社所在地 | 東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 |
業種 | 製造業 |
事業内容 | デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズ |
基本金 | 462,817百万円(2022年度末時点) |
サービス活動収益 | 10兆 8,811 億円(2022年度) |
社員数 | 368,247名(連結、2022年度末時点) |
制度の概要
- ■同社では、働く時間や場所の制約に関わらず、能力、スキルを持った人財が活躍できる組織の実現を目指し、「ジョブ型人財マネジメント」の導入を進めてきた。「ジョブ型人財マネジメント」は、「職務の見える化」「人財の見える化」「コミュニケーションの強化」を重視し、これまでに、ジョブ・ディスクリプションの作成や、職務をベースとした処遇制度の管理職層への適用等を行ってきた。
- ■ジョブ・ディスクリプション(JD)については、2021年7月に6つの役職階層と75の職種区分からなる計450種類の標準JD を作成した。その後、標準JDに基づいて、日立製作所内のすべてのポジションについて個別JDを作成・公開した。現在は、国内グループ会社を含めた全ポジション(約12万ポジション)に個別JDを導入する取組みを進めている。
- ■標準JDは、職種区分・階層別に、職務の名称、職務の概要(仕事内容)、責任、求められる能力、期待行動(職務を遂行する上で重要な行動)、職務知識、資格・実績、経験等を記載している。個別JDは、同内容をポジション別に整理している。
- ■管理職を対象に、海外を含む日立グループ全体に適用される役割等級制度「日立グローバルグレーディング(HGG)」を導入した。管理職以上の全ポジションを職務の役割や職責の大きさをグローバルで統一した基準に基づいて評価・格付けした。
- ■管理職の処遇は、格付けに対応して給与レンジが決まる仕組みとなっている。職務を踏まえて期待される役割があり、今後1年間において標準的なパフォーマンスであった場合の年収額が提示される仕組みとなっている。
- ■非管理職についても、職務と給与の対応関係を明確にし、給与決定の透明性の向上がはかれる制度となるよう、労使にて議論を進めている。
- ■配置については、会社による戦略的な決定に加え、グループ公募制度と呼ばれる社内公募によって登用する制度を設けている。グループ公募制度では、社外に募集するポジションについては社内でも同時に公募することとし、社内外から公募によって適所適財を実現する仕組みを強化している。
「HGG(日立グローバル・グレード)」の概要
(株式会社日立製作所 提供資料より引用)
制度導入のきっかけ・背景
- ■2008年度のリーマンショックにより戦後最大の赤字に陥ったことをきっかけに、ものづくり中心の事業戦略を「グローバル事業の拡大」「社会イノベーション事業の推進」を重視する事業戦略へと転換した。
- ■その転換に対応するには、多様な経験や視点を持って、顧客や社会の課題を的確に捉え、ソリューションを提供できるプロアクティブな人財が必要と考え、多様な人財がより高い創造性・生産性を発揮できる「ジョブ型人財マネジメント」への転換を進めてきた。
制度導入時の労使コミュニケーション
- ■「ジョブ型人財マネジメント」の導入にあたっては、従業員の理解を促進するため、導入の背景や会社としてのめざす姿を、労使で重点的に議論した。その際には、組合本部にとどまらず、各事業・地域の組合支部とも議論することが重要と考え実施してきた。
- ■2017年度の議論開始当初は、職務を限定した労働契約への転換と捉え、雇用を不安視する声が一部ではあがっていたが、本取り組みが人財マネジメント全体の転換を進めるものであり、雇用に関する考え方が従来と変わるものではないこと(職務を限定した労働契約への変更ではないこと)や、「ジョブ型人財マネジメント」は従業員・会社双方の成長を実現することが目的であることを丁寧に伝え、理解の促進をはかった。その結果、2020年度には8割を超える従業員がジョブ型人財マネジメントの必要性について理解を示している。現在も、採用から退職に至る人財マネジメント全体の見直しに向けた労使協議を実施している。
工夫点
- ■従業員の理解を促進する施策の一つとして、2021年度に従業員一人ひとりの「自律的キャリア形成」に向けて必要な会社施策・支援のアイデアを、従業員から募集し、3,600件以上の応募があった。具体的なアイディアとして、グループ公募制度の運用や制度内容について改善を求める意見や、キャリア形成のために社内外での副業を希望する声等があがり、従業員が「ジョブ型人財マネジメント」の導入を自分事として捉えるきっかけとなったと考えている。なお、従業員からよせられた意見は、グループ公募制度の改善や副業制度の検討等に活用している。
- ■また、「ジョブ型人財マネジメント」において重要である従業員の自律的なキャリア形成を実現するためには、マネージャが部下一人ひとりに応じたマネジメントを行うことが求められる。そのため、マネージャを対象とした、ピープルマネジメントの基本や部下のキャリア形成支援に関する研修を実施したり、マネージャからあがった声を支援施策に繋げる等の取り組みを行っている。
制度導入による効果
- ■「ジョブ型人財マネジメント」への転換を進めてきた過去10年間において、従業員の多様性(年齢・性別・国籍・業務経験等)が拡大したことは、転換の一つの効果として挙げられる。今後も、多様な属性を持った従業員が、それぞれの特性を活かして能力を発揮し、事業に貢献できるよう、取り組みを進めていきたい。
- ■自身のめざすキャリアに向けて必要なスキルを認識し、そのスキルを習得するために行動する従業員が増えている。「ジョブ型人財マネジメント」の取り組みがこうした従業員の行動変容につながったと考えている。
自律的キャリア形成に向けた従業員の行動変容の状況
(株式会社日立製作所 提供資料より引用)
今後の課題
- ■自律的キャリア形成に向けて行動を起こせていない、あるいは行動を習慣化できていない従業員の更なる行動促進、および行動を始めた層の習慣化については引き続き実施していく必要がある。引き続き、自律的キャリア形成に向けた支援や、従業員が自律的キャリア形成に踏み出すことを促進する制度の拡充をはかっていきたい。