株式会社リクルート

年間休日を増やし、個々人が自律的に働く日や時間を選択できるようにすることで、よりメリハリをつけて働ける環境としていくことを目指す

株式会社リクルート_01_会社ロゴ

<企業概略>

会社設立年 2012年10月1日 ※株式会社リクルートホールディングス設立時の分社化により設立
本社所在地 〒100-6640
東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー
業種 複合サービス業
従業員数 17,047人(2022年3月31日現在 / アルバイト・パート含)
(男性:8,796、女性:8,251人)
資本金 3億5千万円
売上高(単体) 6,586億円(2021年4月1日~2022年3月31日)
※マッチング&ソリューション事業の売上収益

<企業概要>

 株式会社リクルートは日本国内のHR・販促事業をおこなう事業会社。リクルートグループが掲げるVision「Follow Your Heart」、Mission「まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。」Value「新しい価値の創造」「個の尊重」「社会への貢献」の実現に向けて活動している。
 販促領域では、住宅・美容・結婚・旅行・飲食などの多様な分野において、個人ユーザーと企業クライアントを結ぶマッチングプラットフォームを提供。また、SaaS (Software as a Service)の提供などを通じた、業務負荷の軽減および生産性向上を支援するサービスを、主に中小企業向けに提案している。
 人材領域では、個人ユーザーの求職活動と企業クライアントの採用活動を支援するマッチングプラットフォームの運営と、人材紹介サービスなどを展開している。

1.制度の概要

 これまで株式会社リクルートでは、暦上の休日と、お盆や年末年始、GWなどで130日の休日があった(指定休5日含む)。2021年4月からの新制度では、ここに休日を15日加え、145日に。これを年間でならすと週休2.8日になる。この145日のなかには個人で自由に設定できる「フレキシブル休日」が含まれ、2022年度は14日と設定されている。

2.制度導入のきっかけ・背景

 2021年4月の国内のグループ7社統合を機に、年間休日の増加を含めた人事制度の改定を実施した。新たな人事制度においては、「個の尊重」という思想を中心に置き、働く場所・日・時間の柔軟性を高め、多様な個人が、一人ひとりに合った働き方を自律的に選ぶことができるようにした。その結果として、個人としても、チームとしても、創造性を最大限に発揮し、社会により大きな価値を還元することを目指している。
 この人事制度の改定までには、もともと段階的に推進されていた働き方改革の変遷があった。同社の働き方改革は、段階的に推進し、第1段階としてはダイバーシティの観点による多様な人材が働きやすい環境整備の推進(制度面での仕事・育児の両立支援など)、第2段階としては時間創出のBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)観点による働く場所の柔軟化(リモートワークの推進、オフィス内のフリーアドレスの推進、サテライトオフィスの増加など)、第3段階としては社内外創発の加速といった流れとなっている。この第3段階の施策の一つとして、年間休日を増やして個人が自由に取得できる休日を設けており、個々人が自律的に働く日や時間を選択でき、メリハリをつけて働ける環境としていくことを目指している。

3.制度の内容

<勤務日数、労働時間、処遇>

 暦上の休日や有給休暇とは別に、取得する日を自分で決められる年間休日を増やし、合計で145日としている(労働基準法で取得が義務付けられた有給休暇5日を含む)。これにより、年間平均では週休2.8日となる。一日の所定労働時間は従来の7.5時間から8時間に変更し、年間所定労働時間(1,800時間)、給与ともに変更はない。

株式会社リクルート_02_勤務日数、労働時間、処遇の図

4.工夫点

 個人で決められる休日は、すべて個人が自由に選択できるようになることを目指しているが、導入初年度である2021年度は、休日を取得することに慣れることを目標に、上期・下期での設定日数をわけて設定。取得しやすくするための現場での工夫(複数担当制、スケジューラーに休みをいれるなど)を社内メルマガで共有するなど、社内での定着・浸透を促した。

5.現在の活用状況・取組の効果

 2021年度の保有フレキシブル休日(12日)の実質取得率は98%であった。(半期ごとに残数は自動取得されるため、該当日に出勤した割合を減算)
 また、休日日数は増加したものの、出勤日の総労働時間は平均で1日あたり15分増加にとどまり、年間の総労働時間は平均で50時間減少した。
 リモートワーク環境の整備が進んでいることも促進要因となり、導入初年度ながらスムーズに活用されていると考えられる。また、制度を利用した社員からは、「家庭の都合等での休日が取得しやすくなった」など、好評が得られている。

株式会社リクルート_03_個人の休日取得の振り返りの図
株式会社リクルート_04_リモートワーク実施率の図

6.活躍する社員の声

制度導入をきっかけに大学院受験を決意、仕事にもプラスの影響が

 コロナ禍での在宅勤務と本制度導入をきっかけにあこがれていた大学院での学び直しにチャレンジしました。コロナ禍でゲームにはまり、どう時間を使ったらいいかとモヤモヤしていました。そんな時に週休約3日の導入を知り、会社からの『社員も変わらなくてはいけない』というメッセージだと受け取り、受験を決意。お休みの日を受験勉強と課題の対応に活用しました。大学院で学んだ心理学が仕事で生かせたり、頭の使い方が全然違うので、スパッと切り替える癖がついたり、仕事へのプラス影響も大きいです。
(スタッフ職 Fさん)

新入社員ながら、副業で「若き社長」としても活躍。休みの日を視野を広げるための挑戦機会に!

 私は大学院生だった約1年前、知育玩具(がんぐ)を開発・販売する会社を設立しており、いまも副業として活動しています。休日は副業をするための時間としても有効活用させていたただいています。これからの人生を考えると、休日にいろいろな挑戦をして、視野を広げることは大事なこと。大企業にいながらいろいろ挑戦してみたい私みたいな人にはいい制度だと思っています。
(マーケティング職Mさん)

平日休みを不妊治療に活用、休日の増加は生産性向上やイノベーション創出にもつながる

 7年間妊活を続けていましたが、本制度を活用して平日休みをうまく活用できるようになってから、3か月で妊娠が発覚。翌年には、無事長女が誕生しました。不妊治療は平日に通院を指定されることが多くあります。これまで有給を使っていたので、妻一人での通院も多かったのですが、週休約3日が始まってからは、2人で通院できるようになりました。プライベート面でのメリットだけでなく、週休約3日は、生産性向上やイノベーションにつなげられる可能性があると思っています。新しい働き方を実践することで、新しいビジネスや価値につなげていきたいです。
(営業職 Sさん)

7.他の「多様な働き方」制度について

・理由や回数を問わないリモートワークを全社に導入(一部の職種を除く)

 2021年4月に統合対象のグループ会社では、理由・回数を問わないリモートワークを推進している。
 全社導入に伴い、通勤交通費は日額上限5,000円の実費精算とし、定期券代の支給は停止。上限内であれば条件付きで特急券料金も支給し、働く場所をより柔軟に選択できるようにしている。
 こういった取組の成果もあり、2021年度の同社のリモートワーク実施率の全国平均は72%となっている。
 ただし、一部の職種(人材紹介事業、カウンター事業(店舗にて対面で相談できる形の事業)に関わる職種等)に従事する従業員については、リモートワークの対象外となるケースがある。

・特定の要件や属性に偏らない休暇・休職制度への変更

 人材や働き方の多様性を重視し、特定の要件や属性に偏らない休暇・休職制度に変更した。
 育児関連休暇は、各種休暇を包含し柔軟性を高める目的で、従業員の性別にかかわらず、妊娠中から子どもが12歳までの間で取得可能な出産・育児休暇(合計40日)を新設した。また、介護関連休暇・休職は、要介護認定などの法定要件を問わず、ペットも含めた家族のために利用できるケア休暇(5日)を新設した。
 男性従業員も出産・育児休暇を活用し、子どもの保育園の行事に参加することなども可能。従業員からは「転職前は子どもが体調を崩しがちだったため年次有給休暇が足りなくなることもあったが、リクルートに転職後は様々な休暇制度を利用することができるため、初めて年次有給休暇を翌年に持ち越せた」との声も寄せられている。