東急株式会社

育児や介護などの事由を有する正社員が、短時間勤務・短日数勤務およびその両方を選択できる制度

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<企業概略>

会社設立年 1922年
本社所在地 東京都渋谷区南平台町5-6
業種 不動産賃貸業、不動産販売業、その他事業
従業員数 1,414名(2022年3月31日現在)
(正社員:男性829人、女性585人/非正規社員:男性550人、女性346人)
資本金 1,217億24百万円(2022年3月31日現在、単位未満切捨)
売上高 1,705億70百万円(2021年4月1日~2022年3月31日、単位未満切捨)

<企業概要>

 源流は1918年に渋沢栄一を発起人として誕生した「田園都市株式会社」。その鉄道部門を別会社とした「目黒蒲田電鉄株式会社」が1922年に設立され、現在の東急(株)につながる。第二次世界大戦後の東京圏における住宅不足の解消と生活環境改善を目指し、鉄道および都市開発事業にて発展する。現在は交通インフラ事業、都市開発事業、生活創造・リテール事業、ホスピタリティ事業など、東急線沿線を中心に多様な事業を展開。2019年に東京急行電鉄株式会社から東急株式会社へ商号変更。あわせて鉄軌道事業を東急電鉄(株)として分社化した。

1.制度の概要

 育児や介護などの事由を有する正社員が短時間勤務・短日数勤務、およびその両方を選択できる制度。「Y職責」と呼ばれ、2016年に鉄道の現場で働く中高年社員の利用を想定し導入。翌2017年に育児・介護・看護といった事由を有する社員も利用できるよう、対象範囲を拡大した。現在は傷病やその他会社が認めた事由も対象としている。

2.制度導入のきっかけ・背景

 2012年ごろ、高年齢者雇用安定法の改正や、女性活躍推進・次世代育成支援の社会的な高まりに伴い、社内でも多様な働き方の導入に関する議論が始まった。従来の働き方に捉われず、誰もがやりがいを感じながら働き続けられる職場づくりを目指していく中で、体力を必要とする鉄道現場における中高年の社員にスポットをあて、「会社に貢献したい社員に対し、所定労働時間を減らし体力的な負担は減らしながらも役割は変えない」働き方として、短時間勤務・短日数勤務を選択できるY職責を導入。翌年には、育児・介護・看護といった事由を有する社員も個人のライフワークの選択肢のひとつとして選べるよう、対象範囲を拡大した。

3.制度導入の内容

①概要

 育児や介護などの事由を有する正社員が、従来の役割や業務内容を変えずに短時間・短日数勤務を選択できる制度。同社の育児短時間勤務制度は「子が小学校4年生に進級した年の4月30日まで」利用できるが、本制度は「子の23歳の誕生月まで」利用できるのが特徴。その他、介護・看護・傷病事由についても所定の期限を設けている。

②勤務日数、1日あたりの労働時間

 「短日数」「短時間」「短日数×短時間」の3つから選択できる。短時間は1日2時間を限度として、短日数は週休3日を限度として短縮可能。両者を組合せると「1日6時間」×「週4日勤務」つまり週の所定労働時間を24時間にできる。

③処遇

 基本給は勤務時間の短縮に応じ時間比例で減額。賞与や手当の算出基準はY職責以外の同一職責の社員と同じ。

④教育訓練

 Y職責以外の同一職責の社員と同じ

⑤転換制度

 職責転換は、月単位で申請可能。

⑥昇給・昇進

 昇進等に差はない。評価は、実績と東急バリュー(「従業員一人ひとりが共有すべき価値観と求められる行動」として策定したもの)をどれだけ発揮できているかで実施。具体的には、短時間で大きな成果を出せている、自分で考えて仕事をしている、自己啓発も含めて学習する態度が見られる、など。

4.制度導入時の労使コミュニケーションをどのように行ったか

 制度導入時に懸念されたのが、鉄道現場でのシフト。運転士の仕事は、始発駅から終点まで運転し、戻ってきて1単位。運転中の運転士交替は難しく、運行本数を減らさなければ運転士も減らせない。要するに、誰かの2時間分の時短勤務は、別の誰かが2時間長く勤務してカバーすることになる。シフトを管理する人の作業負荷も高まる等の反対もあり、導入にあたっては労働組合と長期にわたり協議した。組合を通じ、今でも多様な意見が届く。

5.工夫点

 同社の人材戦略の基本方針である「従業員の“個”の最大化」の実現、つまり「従業員個々人の能力を最大限に活かす」ためには、各人のワークスタイル・ライフスタイルに合わせた働き方も選択できることが重要。これが円滑に行えるためには、立場や考え方の異なる社員が、互いに興味を持ち、受け容れることが必要であると考える。仲間意識の高さを活かしつつ、さらなる風土醸成にも積極的に取り組むことにより、各種制度のより活発な運用を目指していく。

6.現在の活用状況

 性別問わず育児・介護事由による利用者あり。

7.制度導入による効果

 近年、働きながら家庭のこともしっかりやりたいと考える社員が増えてきており、育児事由でY職責を選択した社員からは「家庭との両立がしやすくなった」「家庭の状況にあわせてフルタイム復帰できる」という声が出ている。

8.今後の課題

 鉄道現場においては、人員などの調整がつきやすい短日数勤務が選択されているケースが多いが、短日数かつ短時間も選択しやすくなるとありがたいという声は出ている。
 また、育児・介護等ではない「その他」事由でのY職責利用者がまだいない。同社では2020年にテレワーク、2021年にフレックスタイム制を本社勤務員全体に導入し、働く場所も時間もより柔軟になってきているが、社会環境の変化や社員ニーズの変化を踏まえて、各種制度のさらなる浸透や働きがいの創出についても注力し、従業員の満足度の向上に努めていく。