サイボウズ株式会社(Cybozu, Inc.)
自由記述の「働き方宣言制度」で、「100人100通りの働き方」を実現する
<企業概略>
会社設立年 | 1997年 |
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本社所在地 | 東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー |
業種 | 日経業種分類:サービス 東証業種名:情報・通信業 |
従業員数 |
連結1,115名、単体870名 ※2022年12月末時点 ※役員監査役除く無期雇用(正社員)数 |
資本金 | 613百万円 |
売上高 |
22,067百万円 ※2022年12月期 |
<沿革>
1997年 8月8日 | サイボウズ株式会社 設立 |
2000年 8月 | 東京証券取引所マザーズ上場 |
2002年 3月 | 東京証券取引所市場第二部へ市場変更 |
2005年 8月 | 「サイボウズ・ラボ株式会社」 設立 |
2006年 7月 | 東証第一部へ市場変更 |
2011年 11月 | クラウドサービス「cybozu.com」提供開始 |
2016年 11月 | 「チームワーク総研」を開設 |
<企業概要>
「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念のもと、チームワークを支援するためのグループウェアを開発・提供。また、サイボウズがこれまで取り組んできた制度・風土改革のノウハウを、研修などを通じて企業・組織に提供するメソッド事業も展開。
1.制度の概要
サイボウズでは、役職や契約形態に関係なく全社員が自由記述の「働き方宣言制度」をもとに自身の働き方を決めている。この制度では、育児、介護に限らず、通学や副(複)業など個人の事情に応じて、勤務時間や場所を決めることができる。
働く時間(曜日・時間)と場所、土日出勤や出張の可否などを文章で記述し、上長の承認の上、決定。個人の働き方に関する情報は、社内のイントラ上の各社員のプロフィールページに掲載され、全社員に公開される。
週5日8時間勤務の社員も多いが、中には週2日のみ勤務とする社員や、制度運用が始まった当時から今に至るまで5回も働き方を変更してきた社員もいる。
すべては「100人100通りの働き方」という考え方のもと、メンバーそれぞれが望む働き方を実現できるようにしている。
2.制度導入のきっかけ・背景
離職率が28%と過去最高を記録した2005年以降、組織や評価制度を見直し、2007年からは「残業ありのワーク重視」と、「残業なし、もしくは時短のライフ重視」と働き方を選択できる制度を開始。その後、選択肢を3つに増やし、2014年からは、働く時間と場所の自由度に応じてさらに9つに増やした。しかし、選択制では全社員の多様な要望をカバーしきれなくなったことから、2018年4月からは、「100人100通りの働き方」の実現に向けて、自由記述式の「働き方宣言制度」に移行した。
3.制度導入の内容
①制度適用者
サイボウズでは、無期雇用、有期雇用という形で契約形態が分かれているが、「働き方宣言制度」は契約形態や役職を問わず全社員が宣言をすることになっている。
②教育訓練
社内のセミナーや全社会議などはアーカイブとして映像や議事録が残る仕組みを取っているため、社員本人の勤務時間外に実施された、もしくは業務の都合で参加できなかったセミナーや会議も、実施後に視聴できる。
資格取得や語学訓練のための支援制度や知識習得のための書籍代支援制度なども、無期・有期問わず申請できる。(一部例外あり)
③転換制度
労働時間や拠点の変更などの雇用条件は常時見直すことができるため、働き方を変更したいと思ったタイミングから上長との協議に入り、しかるべきタイミングから適用。
また、異動を希望する場合は、本人の希望をもとに、異動希望先との調整次第で異動することができる。なお、異動前には、他部署で最長3ヶ月の業務体験ができる「大人の体験入部」という制度も利用することができ、異動先が自分に合っているかを確認するなど、今後のキャリアの検討材料にすることができる。
さらに社内向けの求人案内として、「ジョブボード」という仕組みを導入したことで、社内での人員募集状況を見える化し、カジュアル面談や前述の異動希望、大人の体験入部に気軽に申し込みできるようにしている。
④昇給・昇格
年1回の給与交渉で、個人の希望の収入や働き方を上長に伝えることができる。
4.制度導入時の労使コミュニケーションをどのように行ったか
社員数が現在ほど多くはない頃から、離職率低下に向けた柔軟な働き方を模索するための取組を行っており、社長や役員などが、一人ひとりの社員に直接さまざまな要望についてヒアリングし、制度の制定・改定を行っている。
5.工夫点
同社の制度は、最初から現在の形になったのではなく、一人ひとりにヒアリングをして社員の「所定労働時間より短い時間で働きたい」「在宅勤務にしてほしい」といった声から制度を決めてきた。
また、制度だけが独り歩きをしても上手く機能しないため、制度が実際に機能するためのツールや、制度を受け入れて活用する風土が制度とともにひとまとめになっている必要があり、最初は社長の青野氏を中心に、時間をかけて制度・風土・ツールを磨き上げていった。
6.制度導入による効果
離職率は元々28%だったところから、現在は4~5%程度で推移しており、大幅な減少となった。
また、サイボウズの柔軟な働き方に魅力を感じたことが動機となった応募者も増え、採用への効果も大きい。
7.今後の取組
「100人100通りの働き方」をこれからも実現していくため、新しい課題が生まれれば早急に対応し、制度も常にアップデートをしていく。
8.活躍する社員の声
カスタマー本部 ファンコミュニティ推進部 松井隆幸さん
最初は週4日にすることで、残り1日を副業に充てました。ただし、3ヶ月後にはその副業が終わったため、週5日戻しました。
2年後の2020年9月、別の副業を始めたため週4日に変更しました。翌年には副業が忙しくなり、週3日まで減らす変更をしました。
ただ、その副業も最近落ち着いてきたので、2022年10月からは週4日に戻して働いています。
まず、この制度を使うことで、最小限のリスクで新しい挑戦をできた実感があります。労働時間が減る分給料も減りますが、職を辞めずに固定給を得ながらチャレンジができたのは、非常に大きな安心感がありました。
また副業を始めてからは、サイボウズとより良い距離感で付き合えるようになったと思います。以前は私自身がサイボウズに依存していて、例えば給料への不満や将来への不安を覚えやすかったと思います。副業を始めてからは、そういった負の感情が生まれづらくなりました。
もう一つの自分の居場所・収入源が増えたことで、良い意味でサイボウズとの距離が生まれたと思います。また、副業を通じて新しいスキルや人脈を獲得し、自信に繋がった実感があります。その分、そのノウハウをサイボウズに持ち込むことで、今まで以上に貢献したい思いです。
こういった人生の変化も、サイボウズの制度があったからこそだと考えます。変更自体も大変なものではなく、上司とも受け入れる前提から話が進みます。最短で翌月から変更できる柔軟さやスピード感には、毎度のことながら驚かされています。サイボウズに入社して良かったと思える大きなポイントの一つです。