トクラス株式会社
地域限定正社員制度の導入で、契約社員からのキャリアアップや正社員のライフステージの変化にも対応し、地元志向の応募者からも選ばれる会社へ
<企業概略>
会社設立年 | 1991年10月1日 |
---|---|
本社所在地 | 〒432-8001静岡県浜松市西区西山町1370 |
業種 | 製造業 |
従業員数 |
685名 (正社員:男性274人、女性277人/非正規社員:男性35人、女性99人) |
資本金 | 11億2204万円 |
売上高(単体) | 243億6,600万円(2021年3月実績) |
<沿革>
1991年(平成3年)10月1日 | ヤマハ株式会社のリビング、ホーム用品事業を起源とし、ヤマハリビングテック株式会社として分社独立 |
1992年(平成4年)4月1日 | 事業開始 |
2013年(平成25年)10月1日 | トクラス株式会社に商号変更 |
<企業概要>
住宅設備機器を中心に、国内、また、アジアをはじめとする海外展開や、環境配慮型素材の開発など、オリジナリティあふれる提案の幅を広げ、事業の成長に向けて取り組む。
1.制度の概要
正社員の雇用形態は、「転勤あり」・「転勤なし」という大きな区分を設けており、「転勤なし」が、地域限定正社員となる。
地域限定正社員は、通勤が可能な範囲(約1時間半から2時間以内)の事業所としている。
2.制度導入のきっかけ・背景
女性社員比率が高いこともあり、育児や配偶者の勤務地等の制約を受けたことで勤務の継続が困難であるという声が上がってきた。
また、世の中も様々な働き方の価値観が認められる状況に変化してきている。こうしたことから、多様な価値観にも目を向けながら、ワークライフバランスを推進するため、社員の要望をかなえる制度を構築させようと考えたことが制度導入のきっかけとなった。
前述の女性社員の例では、配偶者に帯同して転勤する必要はあるものの、仕事は継続したいという意向があった。こうした場合は、対象となる事業所で受け入れ可能であることが前提とはなるが、地域限定正社員に転換するとともに配偶者に帯同し、新たな場所で勤務を継続することを特例として認められるようにした。
このように社員の声に耳を傾けながら、適宜見直しを行い、社員のワークライフバランスに配慮していく取組を行っている。
3.制度導入の内容
①処遇
地域限定正社員の基本給と賞与は、正社員の90%の水準としている。特に新たな賃金テーブルは設けていない。
②教育訓練
正社員と地域限定正社員とでは差を設けていない。
③昇給・昇格
昇進・昇格のスピードは、一定の等級までは正社員と地域限定正社員では同一の取り扱いとしている。ただし、地域限定正社員は基幹職の管理職(M職)には昇格しない取り扱いとしている。
④転換制度
転換制度については、まず、契約社員から地域限定正社員への転換を可能としている。一方で、パートタイマー・アルバイトから直接地域限定正社員には転換できないこととしている。
契約社員から地域限定正社員への転換は、契約社員が5年を超えた無期転換のタイミングで選択可能としている。
転換条件は、契約社員の等級が「K2」に昇格していることとしている(入社時は「K1」から開始)。ほとんどの契約社員は「K2」に昇格しており、地域限定正社員の対象となっている。
4.導入時の労使コミュニケーションをどのように行ったか
地域限定正社員に関するニーズについては、日頃の労使間協議で把握していた。そこで、会社より、労働組合に対して制度に関する提案を行った。会社は説明会、労働組合は組合員に対して研修等を実施した。その上で、労使協議を繰り返し実施した後、制度導入について労使合意が得られた。
また、配偶者の転勤帯同については、当初会社側は認めていなかったが、労使協議を進める中で、必要だという判断となり、現在は特例として認めるようにしている。
5.工夫点
地域限定正社員については、事業所ごとの要員バランスを考慮し、原則として現在の勤務地にとどまることを原則としている。このため、地域限定正社員の導入時は、要員バランスが大きく崩れることなく、地域限定正社員制度の運用が可能となった。
また、地域限定職の比率が7割を超えると、原則として、その事業所では、地域限定職への転換はそれ以上できないというルールも策定した。
6.現在の活用状況
現在の地域限定正社員数は男性が29名、女性が170名で、正社員(女性)の61%は地域限定となっている。
一方、正社員から地域限定正社員に転換した社員は、約20名である。
採用時から、地域限定正社員として雇用された社員は、新卒で約30%、キャリア採用(中途社員)で約50%となっている。比較的、地方において採用時から地域限定正社員を選択している社員が多い状況である。なお、採用時において地域限定正社員を選択し、その後正社員に転換した社員は約10名いる状況である。一度、正社員から地域限定正社員に転換し、その後、正社員に戻った事例もある。
7.制度導入による効果
基本的には希望があれば、無期転換時に契約社員から地域限定正社員に転換できることが、今回の制度において大きな魅力と感じている。すなわち、不安定な雇用形態によって退職を選択する契約社員は一定程度存在しており、労働契約法による無期転換だけではなく、地域限定正社員まで勤務形態の選択肢が広がったことで、離職率が低下した。
また、女性社員が結婚や育児などのライフステージの変化に合わせて、地域限定職を選択できることにしたため、安定して仕事を行うことができている。この点も、離職率の低下につながっている。
そして、入社時から勤務場所を限定することを求めている人も多く存在しているため、勤務場所を限定した地域限定正社員制度の存在は、採用においても多大な効果を創出している。
8.今後の課題
拠点数が多くある一方で、拠点の規模によっては、社員一人ひとりに経験させられる職種自体が限られてしまうケースもある。そうした中、社員自身がキャリアパスをイメージしにくい問題がある。また、その拠点で社員が活躍できなくなった場合、ジョブローテーションにより、本人の活躍の場を設けることができなくなる点を懸念している。