クオール株式会社
薬剤師の働き方を「全国コース」「広域コース」「地域限定コース」から選択可能にし、多様な働き方のニーズに応え、地域医療への貢献にもつなげる
<企業概略>
会社設立年 | 2017年10月31日 |
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本社所在地 | 〒105-8452 東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー37階 |
業種 | 小売業 |
従業員数 |
正社員3,372名 臨時雇用者1,386名(2022年3月31日現在) (正社員:男性754人、女性2,618人/非正規社員:男性340人、女性1,046人) |
資本金 | 300百万円 |
売上高 | 106,048百万円 |
<沿革>
1992/10 | 調剤薬局の運営並びに医薬品の販売を目的として、クオール株式会社設立 |
2007/10 | 株式会社エーベルを吸収合併 |
2008/12 | 株式会社ローソンと業務提携 |
2009/02 |
特例子会社クオールアシスト株式会社設立 株式会社薬正堂と資本提携 |
2010/02 | 株式会社メディカル一光と業務・資本提携 |
2012/08 | 株式会社ジェイアール西日本デイリーサービスネットと業務提携 |
2012/08 | 株式会社ローソンと資本提携 |
2012/10 | アポプラスステーション株式会社の全株式を取得し、100%子会社化 |
2012/12 | 株式会社レークメディカルを子会社化し、17店舗を取得 |
2013/04 |
会社分割(新設分割)による中間持株会社、クオールSDホールディングス株式会社設立 ※SD:subsidiary(子会社)を意味する造語 |
2013/04 | 株式会社アルファームの全株式を取得し、100%子会社化、23店舗を取得 |
2013/08 | 株式会社レークメディカルの全株式を取得し、100%子会社化 |
2014/03 | 株式会社セントフォローカンパニーを子会社化し、33店舗を取得 |
2014/07 | 株式会社ココカラファインと業務提携 |
2014/10 | 株式会社セントフォローカンパニーの全株式を取得し、100%子会社化 |
2016/10 | 株式会社共栄堂の全株式を取得し、100%子会社化、86店舗を取得 |
2016/10 | 中間持株会社、クオールSDホールディングス株式会社を吸収合併 |
2017/07 | 株式会社セントフォローカンパニーおよび株式会社レークメディカルを吸収合併 |
2018/10 |
持株体制移行に伴いクオールホールディング株式会社に商号変更 会社分割により事業部門をクオール株式会社に継承 |
2019/08 | 藤永製薬株式会社の全株式を取得し、100%子会社化 |
2020/02 | アポプラスキャリア株式会社設立 |
<企業概要>
クオールの社名の由来はQOL(クオリティ・オブ・ライフ)。医療を通じて患者さまの生活の質向上を願う想いが込められている。その想いを胸に、社員一人ひとりが日々の業務に取り組み、地域社会の健康で豊かな生活に貢献する医療サービスを提供している。
創業時から、「地域医療への貢献」と「安心を届ける薬局」を掲げ、マンツーマン薬局を基本としつつ、「街ナカ」、「駅チカ」、「駅ナカ」など新業態薬局の展開などを進め、様々な挑戦をしてきた。特に医師と連携した患者ケアに強みを持っており、在宅医療を介した地域包括ケアシステムへの参画や、予防医療の啓発、健康サポート薬局として健康相談のファーストアクセスの役割、高度専門医療などに取り組んでいる。地域包括ケアシステムとは 団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みのことを言う。このシステムの中で、薬局の担う責任は大きく、当社は地域医療を支える企業として引き続き貢献していく。
新たな挑戦としては、「未来の薬局の姿の実現」を掲げている。2040年の社会を見据え健康・医療・介護において、患者や地域生活者へICTを活用した貢献が重要という考えから、特に「オンライン服薬指導への挑戦」を展開していき、より便利に丁寧に一人ひとりに対応し、期待される薬局になるよう取り組んでいく。
これからも「あなたの、いちばん近くにある安心」をスローガンに、地域のかかりつけ薬剤師として医療の質の向上に貢献していく。
1.社員体系
同社では、正社員、嘱託社員、パートタイマーという3つの雇用区分がある。職種は、薬剤師・本社企画・医療事務・販売職の4つあり、正社員薬剤師は3種の働き方から選択できる。
正社員薬剤師の雇用区分
2.多様な正社員制度の概要
正社員の薬剤師のみを対象とし、全国コース、広域コース、地域限定コースから働き方を選択できる。全国コースは、国内各地に定期的な異動がある。広域コースは、北海道・北東北・南東北・北陸/上越・関東・中部・関西・中国・四国・九州/沖縄の各エリア内で異動がある。地域限定コースは、転居を伴う異動はない。
3.制度導入のきっかけ・背景
元々は全国と地域という分け方はしていなかったが、事業規模が拡大して全国に店舗が増えていくなかで、薬剤師の多様な働き方のニーズに応えたいと考えていた。
採用の面でも、「地元で働きたい」、「東京で働きたい」というような希望が聞かれ、全国転勤を前提としない働き方の必要性も生じていた。
従業員の働き方のニーズが多様化したことに加え、会社としても、国の地域包括ケアの流れを受けて、「かかりつけ薬剤師」による地域医療の貢献に力を入れるようになった。「かかりつけ薬剤師」とは、具体的には、患者の薬やサプリメント、健康情報を一元的に管理し、薬局で薬を渡した後も電話やオンラインで体調の確認や薬の管理、副作用の確認など服薬フォローをすることで信頼関係を構築し、より一人ひとりにあった質の高い医療を提供するというものである。
そのため、同じ地域で長く継続して勤務する地域密着型の薬剤師が求められており、異動を前提としない地域限定コースの薬剤師の必要性を感じていた。
4.制度の内容
①処遇・手当
以前は、薬剤師は、全国コース、広域コース、地域限定コースで給与のレンジや賞与のポイントを変えていたが、2021年4月に人事制度の全面的な改定を行い、薬剤師の職能は、場所で異なるものではないという考えから、職能等級はコースによって変更せず、給与テーブルを1本化した点が大きな特徴である。
また、転勤に応じる社員は、借上社宅を利用でき、赴任手当を支給している。
②教育訓練の機会
教育に特化した部署として、「クオールアカデミー教育研修本部」を設置し、全国共通の教育研修プログラムを設けている。全社的カリキュラムであり、オンラインで受講でき、コースによる受講制限はない。
③昇進・昇格
職能等級は各コース共通であり、コースによる差はない。
④転換
基本的に本人希望に基づき、コース転換は可能。例えば、独身時は全国コースで勤務し、結婚して子供が生まれて地域限定コースに変更した事例や、地域限定コースで勤務していたが、他の地域で経験を積みたい等の希望で全国コース、広域コースに変更した事例などがある。
5.制度導入時の労使コミュニケーションをどのように行ったか
制度改定前に社員ヒアリングを約100名を対象に実施した。
その後、全社員を対象に「従業員の働きがいに関するアンケート」を実施。このアンケート結果を基に制度設計を行った。
そして、管理職向け、一般職向けに数回に分けてオンラインで説明会を実施した。説明会の内容は後からも確認ができるように録画も行った。さらに理解を深めるためにQ&Aも作成した。
6.工夫点
制度設計ポリシーとして「シンプル」「フェア」「成長と活躍の後押し」の3つを軸に検討した。
職能等級は、薬剤師としての経験、実務能力、店舗運営能力などを考慮し、基本給のテーブルを一本化した。等級要件定義も行った。
形骸化していた手当や役割を、明確さと透明性がある制度にするとともに、頑張りが報われるようなフェアな評価と報酬にした。
その上で、高度専門人財・地域密着人財の育成と個々人の自律的な成長を促す制度を目標に制度設計を行った。
7.現在の活用状況
地域限定コースを選択している薬剤師は、正社員薬剤師の7割程度である。一方、全国コース、広域コースについては3割程度となっており、地域限定コースを選択する薬剤師が多い。
8.制度導入による効果
地域限定コースも、配偶者の転勤などにより従業員の希望で勤務地を変更する場合がある。全国に展開しているため、配偶者の転勤先でも同じ条件で勤務が継続でき、離職者防止につながっている。
「都市部での勤務希望」「地元で医療に貢献したい」など、多様な働き方のニーズに応えており、採用時の応募者数の増加につながっている。
このように薬剤師の希望により多様な働き方を選択可能としているので、薬剤師にとって魅力ある制度であり、採用及び定着に寄与しているといえる。
また、福利厚生、教育にも強みがあり、従業員満足度が高いことも特徴である。
9.今後の課題
地域限定コースと全国コースいずれも大事と考えており、両者のバランスが課題と考えている。
現在は地域限定コースが7割と大半を占めている状況である。この理由として、都市部に就業希望者が集中する一方、一部の地域では地域限定コース社員の勤務先として選択されにくい側面がある。
地域医療貢献のためには全国コースの薬剤師のさらなる増加も必要と考えており、全国コース勤務の魅力をさらに社員に発信することが課題である。
10.活躍する社員の声
人事・採用本部 人事・人財開発部 統括主任 薬剤師 中島 基裕さん
自宅の購入や子供の進学について考えることができました。
業務面については、コース変更後も役割の変更はありませんでした。福島県で薬局を管理する薬局長という役割を与えられていました。コース変更後も東京都の店舗で薬局長として勤務しました。
その後、統括主任というエリアを管轄する役割に任命されました。
地域限定コースに変更後も、自分の仕事をしっかりと務めることで昇進・昇格には影響はないと実感しています。
家族の絆が深まり、会社への愛着や貢献意欲も増しています。