株式会社JTB
年間の勤務日数を選択できる「勤務日数短縮制度」や、生活拠点を移さずにテレワークをベースに働ける「ふるさとワーク制度」など多様な働き方を実現
会社設立年 | 1963年11月12日 |
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本社所在地 | 東京都品川区東品川二丁目3番11号 |
業種 | サービス業(他に分類されないもの) |
従業員数 | 23,785名(グループ全体従業員数 2021年3月31日現在) |
資本金 | 1億円 |
売上高(単体) | 239,272百万円 |
<概要>
1912年に英米人たちに日本の真の実情を知ってもらうことを目的とし、ジャパン・ツーリスト・ビューローを創立したことが始まりで、2022年3月には創立110周年を迎えた。
創立以来、日本のツーリズム業界を牽引してきた同社。
コロナ禍で人々のライフスタイルや価値観が大きく変化したことで、事業領域を個人、法人、グローバルの顧客軸から「ツーリズム」「エリアソリューション」「ビジネスソリューション」の3つへ再整理し、事業の構造改革を進める。
1.取組の背景
コロナ禍以前は、在宅勤務制度やワーケーションを利用する社員は一部にとどまっていたが、緊急事態宣言中は店頭営業職など一部の職種を除いてほぼテレワーク勤務を実施。
2020年 6 月、全社員を対象とした「在宅勤務に関するアンケート調査」(回答者数 9,688 名)を実施。回答者のうち 51%の社員が在宅勤務を経験し、在宅勤務経験者のうち 73%の社員が、在宅勤務において「生産性が高まった、または低下しない」と実感。さらに在宅勤務経験者の 90%以上が、今後も在宅勤務を取り入れた働き方を希望していることがわかった。
アフター&ウィズコロナを見据えた環境変化や多様化する働き方の価値観をふまえ、JTB の最大の経営資源は人財であり、社員の成長・活力が社の発展を支えるという「人財マネジメント基本方針」に基づき、新たな制度を導入することとした。社員一人ひとりが自律的に働き方の柔軟性を高めることができる「新たなJTBワークスタイル」を実現することで、イノベーション創出と生産性・専門性の向上を図り、JTBグループ経営ビジョン-『地球を舞台に「新」交流時代を切り拓く』-の実現を目指す。
2.取組の内容
(1)勤務日数短縮制度
2021年4月より、「勤務日数短縮制度」を導入。これまでの「週5日勤務」という一律的な働き方にとらわれることなく、社員の希望に応じ、年間の勤務日数を選択できる制度。育児や介護等の事由がなくとも申請可能で、設定された5つの年間勤務日数のパターンから選択できる。
通常は年間所定労働時間を1,800時間、勤務日数を最大249日、年間休日を116日以上としているが、本人の希望に応じて勤務日数を177日~225日の間で5つのパターンから選択できるようにしている。
本制度を希望し、社が承認した社員が対象となる。(出向中や管理監督者など、一部社員は対象外)
勤務日数に応じた給与支給となるが、増えた休日を活かして、副業やスキルアップに向けたスクールやセミナー参加といったチャレンジができるようになった。
<勤務日・休日の決め方>
制度申請時に、短縮日数に伴い増加する休日(全休)について、月別の取得計画を作成。
下記の例のように、制度利用者ごとに月別の休日数を設定。
例)Cパターンの場合(全休増加48日/年)
・毎月に均等に分散して取得: | 通常の休日+4日/月を取得(週休3日平均) |
・上期に分散して取得: |
上期は通常の休日+8日/月を取得(週休4日平均) 下期は通常の休日数を取得(週休2日平均) |
・特定の月に集中して取得: |
7~9月に通常の休日+16日/月を取得(週休6日平均) 他の月は通常の休日数を取得(週休2日平均) |
<1日の勤務時間>
- ・1日の労働時間は7.5時間を基本としている。
- ・一部、弾力的な労働時間を設定する個所(店頭営業など)においては、1日の労働時間を一定とせず、4時間から10 時間までの間において定めることができ、勤務日数短縮制度利用者の適用も可能。(所定労働時間)
- ・年間(年度)の所定労働時間は1,800時間とし、「1ケ月単位の変形労働時間制」によって、各人の労働時間を定める。
- ・1日の労働時間は基本として7.5時間とし、1ケ月における週平均労働時間が40 時間を超えない範囲において5分単位で個別に定める。
- ・各人の1日の労働時間については、休日の指定とともに2ヶ月ごとに策定し、対象者に「勤務予定一覧」にて周知した後に、前月の25 日までに個所・分会間で再度協議し、決定する。
- ・前項において指定された時間以外の労働は、時間外労働とする。
(2)ふるさとワーク制度
2020年10月より、「ふるさとワーク制度」を導入。転居転勤を要する事業所への異動発令時であっても、生活の拠点として社に登録している「居住登録地」で、テレワークをベースに業務に従事する働き方で、この制度により、単身赴任とならずに家族と過ごすことも可能となる。
試雇期間中や入社4年目までの能力開発期間の社員、出向中の社員、組織運営職(マネジメントが主となる役職者)を除いた、転居転勤の可能性がある社員が対象となる。
(3)テレワーク
コロナ前からテレワーク制度はあったものの、コロナ禍を機に在宅勤務日数の上限を撤廃したり、サテライトオフィスでの勤務やワーケーション勤務に関する取扱規則も整備。休日を利用した旅行中に、現地のJTBグループの事業所や滞在先の宿泊施設など作業環境が整った場所を利用してワーケーションを行う事例も増えている。
(4)副業ガイドライン
元々副業は禁止されていなかったものの、コロナ禍で社員からの問い合わせも増えたことから、「副業ガイドライン」を作成。社員が安心して副業に取り組めるようになった。
(5)その他の取組
・育児・介護休業制度
育児や介護の事由により一定期間の休職や勤務時間を短縮することができる。育児による短時間勤務は小学三年生の学年末まで可能となっている。また、年休は1日、半日、1時間単位で取得可能。また、子の看護休暇・介護休暇は1日、1時間単位で取得可能。
・グループキャリア制度
家族の転居・介護・結婚等の事由により、現状と異なる地域で就業を継続できる。
・再雇用支援制度
育児や介護などでやむを得ず退職せざるを得なかった場合にも、一定期間内であれば復職できる。
・自己成長支援休職制度
「ビジネススキル向上や国家資格取得に向けた専門スクールへの通学」など社が指定する事由により、自己成長に取り組む社員を推奨することを目的として、3ヶ月以上最大2年間まで休職を取得できる。
制度運用面での工夫
「ふるさとワーク制度」や「勤務日数短縮制度」をはじめとする各種制度は、Web社内報で制度利用者の働き方を紹介し、制度の社内周知と理解促進を図っている。
また、「新たなJTBワークスタイル」推進の一環として、社内Webサイト「Smile活動掲示板」に各事業所のワークスタイルに関する様々な取組事例を投稿してもらい、社内での情報共有やナレッジシェアを行っている。
3.効果
「ふるさとワーク制度」には、距離や時間など物理的な問題が解消することで、社員のキャリアの選択肢が広がる、離職防止につながる、人財配置に柔軟性が持てるなどの効果があると考えられる。
当制度利用者からは「高齢の親の体調が気になり、実家(居住登録地)を拠点に働けることが安心感につながる」、「自身のこれからのキャリアやリタイア後の生活基盤を考え、ふるさとワークの利用を決断した」、「住み慣れた街で仕事をしたいが、キャリアパスの実現には勤務場所も限られたが、この制度で自分が実現したい働き方が出来ると思った」といった声が寄せられている。
「勤務日数短縮制度」では、増えた休日に地域活性化の取組や店頭で培ったホスピタリティを活かしてホスピタリティ講師を行うなどの社外活動や副業による「専門性やスキルの好循環」につながっている。さらに、育児や介護の時間、キャリア実現に向けた活動やサードプレイスでの活動時間を確保できることで、社員一人ひとりのワークライフバランスの充実やライフデザインの実現による「ウェルビーイングの向上」を効果として期待できる。
当制度利用者からの声として「増えた休日を活用し以前から関心があった社会問題について勉強・活動を実施。仕事で培った能力を社外で活かし社外の経験を社内で活かす事ができた」、「コロナ禍が自分の働き方や仕事観をあらためて見つめ直すきっかけになり、生涯活かせる資格取得をするために勤務日数短縮制度を活用した」などが寄せられている。