社会福祉法人瑞穂会
介護老人福祉施設 ふぁみぃゆ行田
・勤務時間限定正職員制度を導入
また、介護補助職を職務限定正職員として雇用したことで、人材の安定的な確保が可能となった
会社設立年 | 1970年(施設開設2006年) |
---|---|
本社所在地 |
〒361-0014 埼玉県行田市藤間510番の3(法人本部) 〒361-0012 埼玉県行田市下須戸75番地(施設所在地) 〒361-0012 埼玉県行田市下須戸65番地1(同サテライト施設) |
業種 | 医療、福祉 |
正社員数 | 93名(男性29名、女性64名) |
非正規雇用労働者数 | 88名(男性18名、女性70名) |
介護保険事業収入 | 811,936千円(2019年4月1日~2020年3月31日) |
社員数
沿革
1970年 | 社会福祉法人瑞穂会設立認可 |
1970年 | 太田保育園設置認可 |
2006年 |
介護老人福祉施設ふぁみぃゆ行田設置認可および指定 短期入所・介護予防短期入所生活介護事業所ふぁみぃゆショートステイ 指定居宅介護支援事業所ふぁみぃゆケアプランセンター指定 |
2006年 | 通所介護・介護予防通所介護事業所ふぁみぃゆデイサービスセンター指定 |
2012年 | 行田市より太田西学童保育室受託/行田市より地域包括支援センター受託 |
2014年 | 訪問介護事業ふぁみぃゆ訪問介護を開始 |
2017年 | 地域密着型施設ふぁみぃゆ東館オープン(ふぁみぃゆ行田サテライト施設) |
1970年埼玉県行田市・太田地区に、社会福祉法人瑞穂会を母体とする太田保育園を開園。児童に対して養護と教育を一体的に提供する場として地域の子育てを担う中で、地域のお年寄りに協力をいただき、世代間交流事業や文化伝承活動を開始する等、園と地域が一体となって児童の保育に取り組んできた。
その歩みが2006年に「ふぁみぃゆ行田」の開設に繋がり、その運営を通して見えてきたものは、より地域の実情に応じたきめ細かな福祉サービスの必要性であった。そこで2017年、瑞穂会は「地域密着型施設ふぁみぃゆ東館」を開設した。
1.職員体系
正職員のうち、特養介護職に関しては総合職、総合職A、総合職B、総合職Cという雇用形態に分け、多様な働き方に対応している。また、他職種は総合職、総合職A、総合職Cに分けている。
下記の表は、6区分ある雇用管理区分のうち、特養介護の区分について記載している。
他にも栄養課、看護課、デイサービス介護、訪問介護、総務課・生活相談室・居宅・包括等、配属先により異なる職種と雇用管理区分がありシフトの内容が若干異なる。
付表1 特養介護雇用管理区分表
2.「多様な正社員」制度について
現在、同施設では(1)勤務時間限定正職員制度及び(2)職務限定正職員制度を導入している。
(1)勤務時間限定正職員
① 制度の概要
各職種の総合職Cのうち、週30時間以上の勤務が可能な職員が勤務時間限定正職員に該当する。配属先によって勤務時間は異なり、9:00~17:00の週5日で勤務する職員もいれば、平日は8:00~17:00、土曜日は8:00~16:00の週5日で勤務する職員もいる。
家族の介護や職員の疾病等の理由があれば、勤務時間限定正職員に転換することが可能であり、その事由が続く限り制度の利用期間に上限はない。
② 制度導入のきっかけ
現在、勤務時間限定正職員の多くは主婦層であり、勤務時間限定正職員制度を導入する以前は、仕事と家庭の両立のためにシフトの限定や、勤務する曜日の固定などを希望する者が多くいた。
また、地域的な特徴として公共交通の便が悪く、塾や習い事の送り迎えや学童保育が終わるまでに子どもの迎えに行けるように、短時間勤務を望む声も多かった。そこで、正職員としての雇用を確保しつつ短時間勤務を可能にするため、育児休暇取得後から小学校卒業までの間で勤務時間限定正職員制度を導入した。
(2)職務限定正職員
① 制度の概要
特養介護職の総合職Cのうち「介護サポート職」が職務限定正職員に該当する。他の正職員と異なり身体的介護は行わず、食器洗浄、掃除、洗濯、リネン交換等の生活支援中心の介護補助業務に従事する。
介護サポート職は、勤務時間限定正職員にも該当する。
② 制度導入のきっかけ
介護職では、入浴や排泄の介助といった身体的なサポートだけでなく、利用者の精神的なサポートも求められ、コミュニケーション能力などのスキルが必要とされる。介護職として採用されても、そういった業務に慣れない職員もいる。そのような職員については、正職員のままで、介護補助に職務が限定される「介護サポート職」に転換することができることとした。
(3)正職員と勤務時間限定正職員・職務限定正職員の待遇の違い
勤務時間限定正職員・職務限定正職員の基本給は労働時間に比例しており、時間当たりの支給額は正職員と同額である。資格手当、扶養手当、住宅手当、通勤手当については、勤務時間限定正職員・職務限定正職員とも正職員と同額が支給される。
(「付表2 正職員と勤務時間限定正職員・職務限定正職員の待遇比較表」参照)
ただし、賞与については、勤務時間限定正職員は夜勤がないことから、支給額の上限が総合職の1/2に設定されている。
付表2 正職員と勤務時間限定正職員・職務限定正職員の待遇比較表
(4)職種における昇進の上限設定
職務限定正職員は、現在は総合職の主任の指示の下で業務にあたっている。介護サポート業務に限定した「介護サポートのリーダー」の職位を設けるかどうか検討中である。
勤務時間限定正職員は、介護保険法でフルタイム勤務が条件となっている職種には昇進できない。ただし、勤務時間限定正職員として勤務していた期間も介護保険法における勤務期間として認められるため、フルタイム勤務が可能になった際には条件と能力に応じてユニットリーダーに昇進が可能である。
(5)雇用管理区分転換ルールについて
正職員から勤務時間限定正職員・職務限定正職員への転換や、勤務時間限定正職員・職務限定正職員から正職員への転換は、本人の希望と上長の推薦があれば可能である。
通常は昇給昇格時期である4月が転換時期となっているが、正職員から勤務時間限定正職員・職務限定正職員への転換については、本人の疾病や介護といった不測の事態であれば、職場の受入れ体制が整い次第、年度の途中でも認めている。
転換回数に制限は設けていないため、社員のライフスタイル・ライフステージに応じて何度でも転換することが可能となっている。
(6)制度導入における工夫点
特養介護において、職務限定正職員を導入する以前は、食器の洗浄や洗濯といった業務は介護職が担っていたが、夕食後の食器洗浄等、時間帯的にパート職があつまりにくく、正職員の負担となっていた。介護サポート職(総合職C)という雇用管理区分を設けることにより、必要な時間帯での勤務可能な人材の雇用の安定を図ることが可能となった。
(7)取組の結果について
勤務時間限定正職員を2009年に導入することにより育児休暇取得後に復帰することが可能になった。その後、介護が必要になった場合も勤務時間限定正職員として就労を続けることも可能であるため、育児や介護のために離職する職員が減った。更にストレスによる精神疾患や難病の発症等においても勤務時間限定正職員として継続することが可能になった。また、2017年から導入した職務限定正職員を導入することにより、介護職としての就労が難しい場合においてもパートへ転換させるのではなく、正職員として雇用を継続することで、職種を理由とする離職者はおらず、施設立ち上げ時からの課題であった人材の安定的な確保に効果を上げている。
(8)今後の課題
人が人をケアする介護職の性質上、職場での人間関係が業務遂行に大きな影響を与える。そのため勤務時間限定正職員・職務限定正職員と正職員との間に不公平感が生まれないような工夫することが求められる。
また、今後は、職務限定正職員である介護サポート職の増加が予想される一方で、介護職の養成校で定員割れが顕著となっており、年々介護職が減少している。今後は、介護サポートの活躍する場として、意欲のある介護サポートが介護職員の指示の下で介護業務を担えるような職場環境の整備に取り組みたい。
3.他の「多様な働き方」制度について
・住宅手当の適用拡大
ひとり親世帯かつフルタイムでの勤務が困難な非正規雇用労働者には、本来正職員のみを支給対象としている住宅手当を支給している。
4.活躍する職員へのインタビュー
インタビューに応じてくれた伊藤さんは、小学校に通うお子さんを育てながら総合職C(勤務時間限定正職員)の区分で勤務している。同施設に制度が導入されてから間もなく、勤務時間限定正職員に転換した。
伊藤さん
※伊藤さんの入職時にはまだ勤務時間限定正職員の形態が確立されていなかったため前もっての説明はされていなかった。現在、同施設では勤務時間限定正職員制度及び職務限定正職員制度について面接、入職時に説明を行っている。