ライオン株式会社

・優秀な人材の確保と多様な働き方の推進を目指し、地域限定正社員制度とシニアクルー社員制度(職務限定制度)を導入

ライオン株式会社_01_企業外観
会社設立年 1818年9月
本社所在地 東京都墨田区本所1丁目3番7号
業種 製造業(化学品)
正社員数 2,727名(男性1,870名、女性857名)※執行社員含む(2018年12月末現在)
非正規雇用労働者数 派遣社員154名(男性83名、女性71名)、パート・アルバイト378名(男性132名、女性400名)(2018年12月末現在)
資本金 344億3,372万円(IFRS(2018年12月31日現在)
売上高 連結:3,494億円、個別:2,645億円  (2018年12月期)

PDFデータ

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従業員数

無期雇用 社員 有期雇用 計(名)
全国型 地域限定 事業所限定 非正規雇用労働者
社員区分 マネジメント層 成長期待層 地域限定正社員 *1 シニアクルー社員 *2 常勤嘱託 再雇用
(常勤嘱託)
派遣社員 パート・アルバイト等
男性 993 698 29 1 12 129 83 49 1,994
女性 186 521 28 43 52 25 71 329 1,255
1,179 1,219 57 44 64 154 154 378 3,249

*1 地域限定正社員:全国を7ブロックに分けたブロック内でのみ異動のある社員区分
*2 シニアクルー社員:職務を限定した社員区分。職務と連動するため勤務地も限定される。

1891年 「小林富治郎商店」創業
1918年 「小林商店」設立
1919年 石鹸部門を分離し、「ライオン石鹸」設立
1980年 「小林商店」、「ライオン石鹸」他が統合し、「ライオン」発足

 同社は、創業以来「愛の精神の実践」を掲げ、120年以上にわたり日々の暮らしに役立つ優良な製品・サービスの提供に努めている。
 高齢化の進展や健康意識の高まりなど、同社を取り巻く環境も急速に変化している。日本をはじめアジア各国・地域のお客様から必要とされ、さらに存在感ある企業に進化するため、2030年に向けた新経営ビジョン「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を策定し、その実現に向けて事業活動のスピードアップに挑戦している。
 現在は日本ならびに8つの国・地域で事業を展開し、国内には13の事業所・工場を拠点として持つ。今後も次世代ヘルスケアに貢献する製品・サービスの提供により、「新しい観点から人々の幸せづくり」をリードすることでサステナブルな社会に貢献し、企業価値の向上を目指している。

1.社員体系の全体像

 同社の社員体系は、従来、「マネジメント層」と「成長期待層」の無期雇用社員、パート・アルバイト、派遣社員、常勤嘱託等の有期雇用で構成されていた。
 2013年より地域限定正社員制度を、2018年よりシニアクルー社員(職務限定社員)制度を導入した。

社員体系

社員区分

無期社員

一般社員

マネジメント層
成長期待層
地域限定正社員
シニアクルー社員(職務限定)

有期雇用

常勤嘱託
再雇用(常勤嘱託)
派遣社員
パート・アルバイト等

2.勤務地限定社員・職務限定社員制度

(1) 地域限定正社員

 ① 導入のきっかけ

 結婚や子育て、介護等により転勤が難しい状況となった社員も働き続けることができる環境を整備し、社員の多様な働き方の推進と、パート、アルバイト社員等の有期雇用の社員を一般社員に登用し、優秀な人材を確保するという2つのねらいから、2013年に導入した。

 ② 特徴

 一般社員は全国の拠点に転勤があるのに対し、地域限定正社員は全国を7ブロックにわけ、それぞれのブロック内で転勤する。
 ただし、地方のブロックでは拠点が限られているため、実態としては転居を伴う異動はほぼない。拠点が複数ある関東地区と関西地区については、例えば関東地区であれば東京本社や千葉工場、神奈川の小田原工場など、ブロック内での転居を伴う異動の可能性がある。

地域限定正社員の地域ブロック

ブロック 事業所等
北海道 札幌オフィス
東北 仙台オフィス
関東 本社(東京)/東京オフィス/千葉工場、小田原工場/研究開発本部(東京)/研究所(小田原)
東海 名古屋オフィス
関西 大阪オフィス/大阪工場、明石工場
四国 坂出工場(関係会社の工場)
九州 福岡オフィス

(2)シニアクルー社員(職務限定社員)制度

 ① 導入のきっかけ

 先行して導入した地域限定正社員制度は、一般社員と同等に業績目標の達成が求められるなど、これまでパート・アルバイト社員等で働いていた人が転換し働くにはハードルが高い面があった。そこで、パート・アルバイト社員が転換しやすく働きやすい制度として2018年に導入した。
 導入の背景には、労働人口が減っている中でどのように人材の確保・定着を図っていくかという課題意識もあった。また、労働契約法改正(無期転換ルールへの対応)も、きっかけとなった。

 ② 特徴

 シニアクルー社員は、無期雇用で、一定の決められた仕事に取り組むことを目標とし、職務を限定した社員区分となる。仕事に紐付いた雇用となるため、基本的に勤務地の異動もない。

(3)地域限定正社員、シニアクルー社員制度導入における工夫点

 ① 導入時の働きかけ(シニアクルー社員制度)

 パート、アルバイトの社員を対象に、2018年、2019年にかけてシニアクルー社員への転換希望を募った。希望者に対しては筆記試験と面接を行うが、落とすことを目的とした試験ではない。結果的に、213名のパート・アルバイト社員がシニアクルー社員に転換した。また2020年も実施する。現在では、シニアクルー社員の新規採用も始めており、今後人数がさらに増えることが想定される。

 ② 社員区分の転換について(地域限定正社員)

 一般社員(成長期待層)から地域限定正社員への転換は、毎年の会社の募集に対し希望があれば可能である。地域限定正社員から一般社員(成長期待層)への転換については、行っていない。また、地域限定正社員に転換した一般社員(成長期待層)が、再び一般社員(成長期待層)に戻ることも不可としている。
 パート、アルバイト社員等の有期雇用労働者から無期雇用の社員に転換する際は、まずはシニアクルー社員に転換し、それからさらに登用試験を受け、地域限定正社員に転換する。この2段階で転換する方式は、2018年、シニアクルー社員制度とともに導入された。

 ③ 処遇(シニアクルー社員、地域限定正社員)

 地域限定正社員の基本給は月給制であり、基本給、賞与ともに一般社員(成長期待層)の80%程度の水準で設定されている。福利厚生は、一般社員と同じ支給条件で支給される。能力開発についても一般社員と同じ機会が与えられ、同じ基準で能力評価が実施される。
 職位については、一般社員(成長期待層)の間は差がない。一方、一般社員(成長期待層)のみが、マネジメント層に昇格できる。
 シニアクルー社員についても月給制ではあるが、「職務記述書」によって職務内容に対する賃金テーブルが設定されており、その仕事に対して決まった給料を支給する仕組みとなっているため、能力評価は行われない。
 賞与も支給されるが業績と連動しない働き方であるため、月給のウエイトの方が高く設定されている。福利厚生については一般社員に準じて決定する。また、継続勤務を期待して毎年昇給する年次昇給制度を設定している。

 ④ 設計時の工夫

社員区分 職務内容 昇格等 基本給・賞与・退職金
地域限定正社員 一般社員(成長期待層)と同等 一般社員(成長期待層)と同等(管理職にはならない) 一般社員(成長期待層)の80%程度
シニアクルー社員 限定された職務。勤務地も職務に伴い限定される。「業績目標」等は課されない 昇格はなく、上位の職務に就く場合には等級変更となる
  • ・職務ごとの給与テーブルで決定
  • ・月給のウエイトが高く、賞与は少ない設定
  • ・退職金はない

「同一労働・同一賃金」を意識し、地域限定正社員、シニアクルー社員、パート・アルバイトの仕事が極力被らないようそれぞれの仕事を整理した。また、パート・アルバイトの社員は工場別での採用であったため、工場によって異なっていたルールを1つの制度にするために、各現場の状況を把握した上で設計した。
 また、能力により評価する地域限定正社員と、職務により評価するシニアクルー社員の区分が明確になるよう、シニアクルー社員では目標管理や能力評価をしないこととした。

3.他の「多様な働き方」制度

  • ・育児短時間勤務(ショートタイムフレックス制度:子どもが小学校1年生までの間、1日の所定労働時間を1日2時間まで短縮可能)
  • ・介護短時間勤務(ショートタイムフレックス制度:365日以内の期間で1日2時間まで短縮可能)
  • ・連続休暇制度 等

4.メリットと効果

 パート・アルバイト社員から地域限定正社員への登用実績は、2015年9名、2016年9名、2017年5名、2018年17名、2019年0名となっている。
 2018年からシニアクルー社員制度が導入され、パート・アルバイト社員は、シニアクルー社員を経て地域限定正社員に登用することとなった。その前に、地域限定正社員として登用したい社員を一度に登用したため、2018年は17名、2019年は0名と制度利用者数に差がある。
 制度導入の効果としては、パート・アルバイト等の有期雇用から地域限定正社員、シニアクルー社員といった無期雇用の社員となり、また、時給制から月給制となるなど、安心して働ける環境を提供できるようになったことで、シニアクルー社員になった社員で辞めた社員はほとんどいない。定着率が向上したことで、採用に掛かるコストも減少した。品質を維持するという意味でも、生産の現場において人材の定着が図れていることは大きなメリットである。

5.今後の課題

 現場を含めて制度利用者にヒアリングを行い、「本当に働きやすい制度になっているか」という点を確認しながら制度をブラッシュアップしていく予定である。