セントケア・ホールディング株式会社
充実した教育制度で社員のスキルアップや資格取得を支援。契約社員から正社員への登用を進め、質の高いサービスの提供をめざす。
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会社設立年 | 1983年 |
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本社所在地 | 東京都中央区京橋2-8-7 読売八重洲ビル5F |
業種 | 医療、福祉業 |
正社員数 (2017年12月末現在) |
3,131名 |
非正規雇用労働者数 (2017年12月末現在) |
契約社員6,836名 |
資本金 (2017年12月末時点) |
17億3,151万円 |
売上高 (2017年3月末時点) |
370億8,863万円 |
取組概要 | <背景> ・労働力人口の減少による人員不足 ・高齢化により拡大するマーケットへの対応 ・長時間労働等、介護事業を取り巻く労働環境の問題 ・質の高いサービスに対する処遇改善加算制度 <内容> ・契約社員を正社員に登用 ・契約・正社員ともに資格取得等の支援 ・長時間労働をなくすプロジェクトの取組 <効果・結果> ・リーダーを担う人材の確保 ・離職率の改善 ・収益力の向上 |
同社は、介護が必要な方々が、住み慣れたご自宅で生活を継続できるよう、訪問介護、訪問入浴、デイサービス、グループホームなどの介護サービスをフルラインナップで展開している。近年は、訪問看護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護といった、介護サービスの中でも医療的ニーズが高い「中重度化対応」を必要とするサービスに重点を置いている。
1.取組の背景
◆拡大するマーケットに対応するための人員を確保
介護サービス事業は、売上の中に占める人件費並びに人材関連費用の割合が60~80%を占める典型的な労働集約型の事業で、これに対応するためには、人件費・人材関連費用を流動化して対応してきた歴史がある。
特に介護保険制度が施行された2000年代は、規模は拡大するものの報酬単価は徐々に切り下げられる中で、福祉サービス的な側面がぬぐい切れない市場環境においては、サービスの効率化や、より高い単価のサービスを選択し生産性を高めるような企業努力はなかなか困難であった。そうした中、いかに人件費を変動費化するかという課題のもと、各事業者の取組において短い時間で働く契約社員の比率が高まっていくという状況があった。
しかし、すでに労働力人口は減少へと向かっている一方で、団塊の世代が後期高齢者になるなど高齢者はさらに増え、介護サービスに対して求められるニーズも高まり、マーケット自体は今後ますます広がることが予測される。
そうした状況において、事業者がサービスの質を向上することによってより高い報酬単価を取得することが可能となるなど、制度も徐々に変化してきた。サービスの効率化や生産性の向上を図ることで成長が見込める環境となってきたため、短い時間だけ働く契約社員では難しく、フルタイムで働く正社員への転換を進め、さらにスタッフへ徹底した教育研修を行うなど、より一層サービスの質の向上に向けた取組をする必要が出てきた。
この正社員化の取組の結果、離職の低下やサービスの質の向上、国の課題でもある働き方改革に基づく残業時間の削減に顕著な効果を感じている。
このようにセントケア・グループでは、市場拡大と人手不足が同時に進行する中で、「働き方と考え方を変えていこう」という動きを積極的に進めている。
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出典)セントケア・ホールディング株式会社提供
◆求められるサービスの変化
取組の背景として、求められるサービスが変化してきたことがある。事業の中心が訪問介護であった頃は、1日1時間、週2日のサービスを希望する利用者には、その日時だけ勤務して対応するという働き方が可能であった。しかし近年、小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護など、利用者に対して施設の中でのデイサービスと訪問介護、ショートステイを一体化して提供するサービスが中心となり、短時間のみの就労では対応が難しい状況になっている。
例えば、在宅の利用者が「週に2回デイサービスを使いたい」、「空いた日に1日2回訪問介護に来てほしい」、そして「月に1週間くらい泊まりたい」というように、生活の中心は在宅でありながら半施設的な状況となり、利用者の希望に対応するためには、シフト制の短時間勤務ではなく、長い時間勤務できる人員の確保が必要となった。
2.取組の内容①(正社員登用)
◆優秀な人材の確保をめざし、契約社員を正社員に登用
介護サービス事業のマーケットは今後ますます拡大すると予想されるが、すでに労働力人口は減少傾向にあり、介護業界では人材確保が非常に大きな課題となっている。この5年程で高度な仕事・サービスを提供すれば、高い報酬を得られる環境ができてきた。報酬の高い「質の高いサービス」を提供するためには、高度な知識と経験のある人材が必要である。そのために、同社では、安定雇用や処遇改善によって優秀な人材の確保を図っている。
同社では、以前から契約社員を正社員へ転換しているが、雇用における課題や介護サービス事業を取り巻く環境変化から、特にこの3~4年は社員全体の正社員比率を増やす方向にシフトしている。
その結果、契約社員から正社員への転換数は、2015年度は235名、2016年度は225名であり、2016年度末の正社員数は2,904名で前年比7.1%増加となり、一方で契約社員は6,803名で2.7%減少した。契約社員は若干減りながら、正社員が増えて、全体として従業員数が増えており、今年度も同様の動きになっている。
◆社員採用の概要
2017年の採用は正社員・契約社員をあわせて2,300名を目標としており、そのうち新規学卒者を含む正社員が300名、残りが契約社員となり、契約社員の比率が9割弱と圧倒的に高い。
契約社員の比率がこれだけ高い理由として、一つは、新卒や看護師は正社員として採用されるが、それ以外の無資格で介護業務を始めたい人は、概ね契約社員としてスタートする。無資格者を正社員として採用しないのは、介護報酬の考え方として、サービス品質の向上や運営基準の遵守のために経験やスキルのある有資格者の確保が必要になってきていることによる。また、契約社員の比率が高いもう一つの理由として、「短時間労働を希望する人が多い」という働く側の希望によるところも大きい。いわゆる主婦等は103万円以内で働くことを希望する場合が多く、正社員化を進めるためには「103万円の壁」をいかに超えてもらうかも課題となる。
◆登用の条件~介護福祉士の資格取得を目安に契約社員から正社員へ
同社では、社員の育成にも積極的に取り組んでいる。介護分野で国家資格となる「介護福祉士」を、毎年2百数十人ずつ増やしており、2020年には従業員の40%を介護福祉士にすることを目標としている。資格の有無も介護報酬の加算制度とリンクしており、「介護福祉士が従業員の何割以上を占めれば、高い報酬が支払われる」ということで、増収が見込まれる。
また、同社では契約社員から正社員への登用にあたり、明確な規定は設けていない。しかし、介護福祉士の資格を取得すると一定の役割・権限を持つことができるようになるため、介護福祉士の資格取得が正社員になるための一つの目安となっている。介護職員実務者研修を修了し、3年以上の実務経験があれば、介護福祉士の受験資格を得ることができる。契約社員にも介護職員実務者研修の受講費用の負担、勤務時間内の研修受講、受講後には手当がつくなど、資格取得を支援している。さらに、介護福祉士の資格を取得するための対策講座も開催するなど、従業員の資格保有率向上のためのバックアップを積極的に行っている。
また、契約社員から正社員への転換にあたって特別な試験などはなく、各都道府県にある事業会社のエリアを担当する課長等の推薦を経て、最後は社長が選任するという形になっている。
◆契約社員と正社員の処遇の違い
正社員と契約社員は給与面で処遇が異なり、正社員は月給制だが契約社員は基本的に時給制となっている。契約社員と正社員で比べた場合、基本的には契約社員の方が給与は低い設定になっているが、看護師のような専門性の高い職種や訪問系サービスの場合は、時給単価が高いので、一般的な正社員の給与よりは相対的に高くなる場合もある。
賞与については、正社員だけ支給され、契約社員にはない。但し、契約社員にも国からの「処遇改善加算」を使って「一時金」という形で支給されている。正社員も契約社員も同じ一時金を年に2回支給され、正社員にはこの一時金とは別に通常給与の1か月分程度の賞与を支給されるため、正社員のほうが多くなる。
3.取組の内容②(その他)
◆キャリアアップ支援
従業員の教育・資格取得への支援は、正社員と契約社員で大きな違いはない。初任者研修は、すべての人に推奨し補助を出しているが、実務者研修については将来的にさらに上の資格を取ることが前提のため、会社が受講者を選定することもある。また、前述の介護福祉士のように介護の資格に直接関係する研修だけでなく、「サービス」「考え方」や「マナー」等に関する研修を、各地域会社も含め一年中行い、知識を身に付けてもらう機会を作っている。その他にも所長候補の社員を対象とした所長育成研修や、それぞれの能力や希望に応じて、例えば介護福祉士の取得後に、介護支援専門員を取得するなど、専門職としてステップアップするためのプランなども用意されている。
◆長時間残業をなくすプロジェクトの取組と「産業カウンセラー」の配置
労働集約型産業である介護事業では、長時間残業等の労働環境が問題となるケースがみられたが、サービスの性質上「仕方がない」という風潮があった。しかし、国を挙げての「長時間労働削減に向けた取組」「働き方改革」の動きが加速する中、同社では数年前から人事担当者と各事業会社の担当者が連携しながら、「長時間残業をなくすプロジェクト」に取り組んでいる。
今年度からは人事部に産業カウンセラーを1名配置し、「従業員の健康チェック体制」を整備した。毎年、全従業員に健康診断を実施しているが、そのデータを管理し、問題点については管理データを用いた対応を行っている。管理職を含め長時間残業が発生している場合はカウンセリングを実施し、産業医面談につなげる活動を行い、「従業員の心と体の健康維持」に努める体制づくりを進めている。
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出典)セントケア・ホールディング株式会社提供
4.効果と課題、今後の運用方針
◆正社員としてリーダーを担う人材の確保
現在、約500か所の事業所があり、大きいところで50~100人、小さいところでは事業所が成り立つ最低限の3人と規模は様々だが、平均すると15、16人位の従業員が働いている。訪問介護の事業所では、一定人数に対し「サービス提供責任者」という介護福祉士や介護職員実務者研修修了者などの一定要件を満たしたリーダーを配置する決まりがある。リーダーはサービスの調整やスケジュールを組む、計画書を作成するといった管理・運営に携わる業務があり、正社員が中心となって担っている。約500か所の事業所にそれぞれリーダーを配置し、その下に千数百人というサブリーダーがおり、営業拠点の中だけで1,500名のリーダー層が必要になるため、能力と意欲のある契約社員が正社員となり、リーダーを担っていく人材となることが期待されている。
「介護の仕事は、他人のために力になりたい、お客さんに喜んでもらいたいと思って仕事をしている人の集団である。介護の仕事をして、現場で揉まれて、少しずつ自分に自信をつけて、社員になり、リーダーとなっていってもらいたい」と考えている。
◆正社員化による離職率の改善
現在、同社の社員数は約1万名で、前述のとおり、毎年2,300名位の採用をめざしているが、毎年これだけの人数を採用する背景には離職率が高いという問題がある。
昨年の離職率は18%程度で、内訳は正社員が約12%で、契約社員が約20%、一昨年に比べると約2ポイント強下がっている。近年では、少しずつではあるが年々下がってきている。今期9月末の上半期は17%程度で、約1ポイント下がっており、さらに10%前半位まで下げることを目標としている。
離職率が下がった要因としては、国の「処遇改善加算制度」により、介護福祉士の資格手当の支給など給与面で改善されたことが大きいが、正社員化等の雇用の安定や働く環境改善等、様々な取組が起因したものと考えられる。
◆「1人当たりの収益力」を上げ、雇用の安定を図る
正社員は契約社員より離職率は低いので、正社員化により離職率が確実に下がり、人員を確保できる一方、正社員化に伴い人件費は増える。
単純に正社員化で給料を上げるだけでは利益を失うだけだが、「処遇改善加算制度」により、専門資格を持った人材を集めて高度なサービスを提供すれば収益を上げることができるようになった。より高度な仕事・サービスを提供すれば、高い報酬を得られる環境ができつつある中、さらに1人当たりの収益力を上げる取組を進め、「働く人の待遇を改善し、雇用ができる会社づくり」を目指している。
5.活躍する従業員の声
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出典)セントケア・ホールディング株式会社提供
セントケア東京株式会社
三鷹営業所 所長 木村 知巳さん
年代 | 20代 | 性別 | 男性 |
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勤続年数 | 8年 | ||
キャリアアップの過程 | 未経験で契約社員として入社。 社内の資格取得制度を利用して、入社4年目に介護福祉士を取得し、現在正社員にて勤務。 |
◆未経験から介護業界へ
現在、三鷹営業所の所長として訪問入浴に従事する木村さんは、介護職に就くのは初めてだった。無資格での入社ではあったが、社内の資格取得制度を利用して、ヘルパー2級(現:初任者研修)を取得するなどスキルアップに努め、入社4年後には介護福祉士の資格を取得した。
◆資格を取得し契約社員から正社員へ
出典)セントケア・ホールディング株式会社提供
介護福祉士の資格を取得するなどスキルアップに努め、契約社員から正社員にステップアップした。資格に対し手当がつくので給与が上がり、業務上でも発言力が高まるなど社内での立場も変わっていった。
キャリアアップの過程で、介護業務の奥深さや連携を取ることの難しさを感じているが、周りのスタッフや上司に相談しながら、普段の業務から意識的に連携を取るようにするなど、日々の業務に取り組んでいる。
今後については、「まずは目の前のことを精一杯やって、その結果、次のステップアップについても考えていきたい」と言う。現在、三鷹営業所では、スタッフの方々からの協力もあって、安心して仕事に取り組んでいる。また、セントケア・グループでは、新人所長研修等のフォローアップ体制がしっかりしているので、「キャリアを積み重ね将来につなげたい」と言う。