株式会社小坂工務店
以前より、社員からの要望に応え短時間勤務を認めてきたが、より開かれたものとなるよう制度として確立した
会社設立年 | 1969年(創業:1958年) |
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本社所在地 | 〒033-0036青森県三沢市4丁目31番地3469号 |
業種 | 総合建設業、不動産仲介・販売・賃貸業、携帯電話販売業 |
正社員数 | 47名(男性23名、女性24名) |
非正規雇用労働者数 | 10名(男性2名、女性8名) |
資本金 | 2,500万円 |
売上高 | 315,717万円 (2019年12月) |
社員数
沿革
1958年 | 小坂工務店創業 |
1969年 | 株式会社小坂工務店設立 |
2008年 | 創業50周年 |
2015年 | 「あおもり女性の活躍応援宣言企業」登録 |
2017年 | 新・ダイバーシティ経営企業100選 |
2017年 | 健康経営優良法人(2017・18・19・20)認定 |
2018年 | あおもり働き方改革推進企業認定 |
2018年 | 青森健康経営事業所認定 |
2020年 | 地域未来牽引企業 認定 |
2021年 | 健康経営優良法人ブライト500 認定 |
当社は青森県三沢市で創業し、総合建設業を中心に発展してきた。現在に至るまで、三沢市内で事業を展開している。
主な事業は建設業、不動産仲介・賃貸・販売事業、携帯電話販売事業であり、建設業においては、市内の主要公共施設、ビル、工場、店舗等、建築実績は多岐にわたる。また、マンション建設の経験を活かし不動産仲介・賃貸・販売業にも進出している。
さらに、三沢市内の米軍基地内の建築実績がきっかけとなり、携帯電話事業を開始した。米軍基地内の携帯電話ショップは、全国で2件のみである。
女性が少ないイメージを持たれがちな建設の現場においていち早く女性管理職を登用する等、女性活躍にも注力している。また、2008年には創業50周年を迎えたことから、「100年企業」をめざして顧客・社員・地域社会のすべてに貢献できる会社への発展に取り組んでいる。
1.社員体系
当社の社員は、正社員と派遣社員に分かれており、正社員はフルタイム正社員、時間限定正社員、勤務地限定正社員、職務限定正社員に分かれている。(「付表1 社員体系」参照)事業所ごとの社員の配置は付表2「各事業所の配置」のとおりとなっている。
付表1 社員体系
付表2 各事業所の配置
※人数欄が空欄となっているものについては、制度はあるが利用者がいない。
※制度欄が空欄となっているものについては、制度自体がない。
2.「多様な社員」制度について
当社では、時間限定正社員、勤務地限定正社員、職務限定正社員を導入しているが、ここでは、時間限定正社員について紹介する。
(1)制度の概要
本人の病気、出産、育児、介護によりフルタイム勤務が難しい社員が利用できる。これらの要件に該当する社員は誰でも制度利用が認められ、制度利用期間の上限は特に定めていない。
当社においては、フルタイムの勤務時間を7時間40分と設定しているが(始業・就業時間は勤務地により異なる)、時間限定正社員は、各事業所の営業時間の中で6時間勤務となる。
(2)制度導入のきっかけ
以前より、本人の病気、出産、育児や介護といった事情によって、フルタイムでの勤務は困難だが仕事は続けたいという社員に対して、会社の方から短時間勤務を提案していた。会社としても、キャリアを積んできた社員は財産であり、働き続けてもらいたいと考えていたため、個別に運用するのみでなく時間限定正社員制度の本格的な導入に向けて社労士と相談しつつ制度を整えた。
(3)正社員と限定正社員との処遇の違いや昇進について
時間限定正社員に転換すると、転換する前の基本給を基準として労働時間で按分した額が基本給として支給されるが、基本給は職能給と業績給で構成されており、職能給は定期的に、業績給は社員の目標達成度合いにより見直されていくため、実際には労働時間に関わらず個人差がある。
賞与等、他の待遇についても正社員と同じ算定基準で支給される。
付表3 正社員と時間限定正社員の待遇の違い
(4)雇用管理区分転換ルール
フルタイム正社員から時間限定正社員への転換に当たっては、制度利用者と同じ部署内でフォローする体制を整えることができるかどうか、テレワークの利用は可能かどうか等を検討する。転換が可能であると判断した場合は、経営層が参加する会議で承認を得るという流れとなる。制度の利用開始時期は定めておらず、体制が整い次第転換ができるため、社員の事情に合わせて柔軟に対応が可能である。
一方、時間限定正社員からフルタイム正社員への転換については、基本的には社員からの申出により転換が可能であるが、そもそもフルタイム勤務が困難な社員について制度利用を認めているため、フルタイム勤務が困難な事情が解消されていることが必要となる。例えば、病気の治療のために制度を利用している場合、本当にフルタイム勤務が可能か、医師の助言をもらうこともある。制度利用の継続・終了にかかわらず、当初設定した利用予定期間の終了前に面談を行うこととしている。
付表4 雇用管理区分の転換
(5)制度導入における課題と工夫点
時間限定正社員制度を利用していても、他の社員が仕事をしている中で、一人だけ早い時間には退社しにくいという声が上がってきた。そこで、毎日15時には一度終礼を行い、制度利用者が退社する雰囲気を作るよう心がけている。
(6)取組の結果について
現在、時間限定正社員は4名であり、会社の規模からすると制度利用率は低くない。制度自体についても社員から肯定的に受け入れられていると感じている。
当社が制度を導入していることを知った難病の学生が、病気の治療をしながら仕事がしたいと当社への就職を希望した事例もある。
当社の制度が、仕事と治療の両立を支えることができたことは非常に喜ばしい。
(7)今後の課題
繁忙期等、業務が立て込んでいる時は、時間限定正社員制度を利用していても時間外労働が発生していることがある。また、周囲も、仕事を任せてしまう傾向がある。今後、勤務時間限定正社員制度を適切に運用するため、制度利用者が常に定時に退社できるよう、工夫が必要であると考えている。
3.他の「多様な働き方」制度について
・テレワークの推進
テレワークができる環境を整備することによって、例えば、子どもの発熱によって急に出社出来なくなるといった緊急時にも、自宅でのオペレーションによって業務遂行が可能となっている。業務の性質によってテレワークが難しい職種もあるため、全社員が平等にテレワークできる環境を整えるかが課題である。
4.活躍する社員へのインタビュー
通信事業部課長
高杉千賀子さん
ですから、夕方うちに帰ってからだと注射ができず、フルタイム勤務と治療の両立は難しい状況でした。
そこで、会社に相談して時間限定正社員制度の利用を認めてもらうことになりました。
そのおかげで、通院や治療に問題なく取り組めています。
それに、私の部署には、私以外に時間限定正社員制度を利用している社員が数人いますが、共通して感じていることは、「短時間の勤務を経験することで、限られた時間の中で自分が何をすべきかを考えるようになり、時間を有効に使おうという意識に変わってきた」ということです。これは制度の利用によって、仕事に取り組む姿勢が良い方向に変わってきた例だと思います。
ショップのオペレーションにも良い影響がありました。
時間限定正社員は、店舗が開いている時間を通して常駐することはできません。
しかし、お客様からは「あのスタッフに接客して欲しい」という要望が多く聞かれます。
それに対応するため、予約制を取り入れました。それにより、人員配置が効率的に行えるようになったというメリットも感じています。
そういった仕事に従事している方もスムーズに制度が利用できるような仕組みを作ってもらえたら、制度利用者がもっと増えるのではないかと思います。
今、私は、課長職につきながら短時間勤務をさせてもらっています。
勤務時間が短くても仕事はできるということを、私自身の姿で下の子たちに見せることで、もっともっと制度を利用しやすい環境、雰囲気を作れたらいいな、とも考えています。