株式会社サンシャインチェーン本部

明確な昇格システムと公募による正社員登用制度により、非正社員のやる気を引き出し戦力化を図る。

株式会社サンシャインチェーン本部_01_店舗外観
業種 卸売業、小売業
本社所在地 高知県
正社員数(直営店)
(平成27年10月現在)
正社員:307名(男性217名、女性90名)
非正規雇用労働者数(直営店)
(平成27年10月現在)
準社員:67名(男性24名、女性43名)
パートスタッフ:823名(男性206名、女性617名)
アルバイト:258名(男性140名、女性118名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 準社員:担当部門での発注、正社員のサポート、パートスタッフ及びアルバイトへの指導
パートスタッフ、アルバイト:品出しや商品整理等
取組のポイント ■正社員登用基準を明確にし、公募制度を導入
⇒これまでより正社員登用までの期間を短縮
■能力評価と連動した資格等級制度
⇒頑張りが昇格と給与アップに結び付く仕組みに

PDFデータ

Get ADOBE READER

PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されていますので、左記のアイコンをクリックしてダウンロードしてください。

同社は、四国一円に直営店16店・チェーン店16店を展開する卸売・小売業である。サンシャインという社名のとおり、万物を愛し、暖め、育む太陽のような存在として、その地域社会になくてはならない「お客様の期待」に応える「高質スーパー」を目指している。
従業員の大半が女性で、来店客も圧倒的に女性が多いため、女性従業員が活躍できる環境づくりに積極的に取り組んでいる。育児と仕事との両立支援制度や育児休業中の社員の能力開発、育児休業から復帰しやすい環境づくり等の取組が評価され、平成26年に「高知県次世代育成支援企業」、平成27年に「くるみんマーク」の認定を受けている。

1.取組の内容

◆社員候補者公募制度を導入し、より多くの社員を正社員として登用

【正社員として働きたいというニーズに応えるために社員候補者公募制度を導入、チャンスの拡大を図る】

同社では以前より準社員(※1)を正社員に登用する制度を整備していたが、運用の基準が明確になっておらず、登用者は年間で1~2名に限られていた。また、当時の正社員登用制度では、パートスタッフ(※2)からの登用を認めておらず、正社員への登用を希望するパートスタッフは、まず準社員へ働き方を転換する必要があった。これらの理由から、優秀な準社員やパートスタッフが「他社であれば、より容易に正社員になれる」との理由で退職してしまうケースも多かった。
このような事態を受け、一定以上のスキルを持った準社員やパートスタッフに対して、広く正社員登用の道を開くことを目的として平成26年に「社員候補者公募制度」を導入し、準社員及びパートスタッフ自ら応募することができるようにした。
社員候補者公募制度は、若年層の定着向上を目的に35歳未満を対象としているため、年齢制限のない従来の社員登用制度も運用基準を改め、対象者を勤続6か月以上、能力評価2年連続Aの準社員として制度を残している。

(※1)1年契約、フルタイム、転勤なし、時給制。
(※2)6か月契約、1日4~5時間契約が多い、転勤なし、時給制。なお、アルバイトスタッフは繁忙時の短期契約のみ。

【キャリアアップ助成金が社員候補者公募制度導入の後押しに】

平成25年に高知労働局よりキャリアアップ助成金の説明と活用の勧奨があった。前述のように、それまで導入していた正社員登用制度の基準は明確でなく、優秀な社員の退職も相次いでいたことから、同助成金を活用しながら社員候補者公募制度を整備することとなった。

【面接を経て社員候補者に】

社員候補者公募制度では、勤続6か月以上で年齢が35歳未満、正社員登用後に主任以上を目指す意欲のある準社員及びパートスタッフであれば、誰でも社員候補に応募することができる。応募時には店長からの推薦が必要であるが、ごく常識的な勤務態度であれば推薦は得られる。その後、本部との面接に合格すると、社員候補者として認められる。なお、平成26年は14名中4名、平成27年は6名中4名が社員候補者となった。
社員候補者になると、給与は時給制から日給月給制に変更となり、賞与は正社員と同じ規定により支給される。また、特別休暇等が正社員と同様に適用される。

【6か月間の研修を受講し、正式に正社員へ登用】

社員候補者は、新入社員と一緒に集合研修に参加し、その後店舗にて6か月間のOJTを課される。OJT期間中は、本部での集合研修(※3)や外部セミナーにも出席し、更に毎日OJTレポートを提出しなければならない。これらの研修の終了後に、社員候補者の成長の程度や、レポートの内容等を鑑みて、本部が正社員登用の可否を決定する。実際は、研修期間中に本部の社員や店舗の社員が細かく指導やフォローを行うため、これまでの社員候補者の中で正社員登用が認められなかったケースはない。
なお、研修期間終了時には、研修で学んだ知識の習得度合を測るために、社員候補者全員にS検(スーパーマーケット検定)1級を受験させているが、合否は登用には影響しない。
また、正社員になると、月例給与や賞与について社員候補者との違いはないが、退職金の支給対象になる。

◆資格等級制度により、昇格及び給与の決定方法を明確化

【能力評価に基づき昇格する資格等級制度を導入】

準社員は3段階(※4)、パートスタッフは5段階(※5)の等級からなる資格等級制度を設けている。この制度では、等級ごとに求められる能力、役割、責任、業績が決まっており、同社ではその等級基準に沿って年1回能力評価を行っている。

(※4)3等級、4等級、特別級。
(※5)1等級、2等級、3等級、4等級、特別級。

株式会社サンシャインチェーン本部_02_資格等級制度のイメージ
株式会社サンシャインチェーン本部_03_評価表兼投球基準書(グロサリーの例:抜粋)

各項目について本人と上司が0~5点で採点し面談を行って、最終的に総合得点からA・B・C・Dの評価が決定する。
A評価でかつ店長の推薦があり、本部で承認された場合に昇格が認められる。一方で、D評価になると、1つ下の等級に降格となる。
評価結果は、翌年度の時給額 にも反映され、同じ等級であっても、評価結果によって時給額が異なっている。昇格した場合は、昇格後の等級のC評価と同額の時給となり、降格した場合は、降格後の等級のB評価と同額の時給となる。なお、3等級以上のパートスタッフで、店長の推薦が得られると準社員になることができる。

【柔軟な勤務が可能な従業員には調整給を支給】

同社では、勤務条件の柔軟さも貢献度アップの要因と位置付け、能力評価から算出した時給に、勤務条件評価による調整給を加算している。勤務条件加算は、「休日が不問」、「早朝勤務ができる」、「曜日ごとに異なる時差出勤ができる」等で、加算額は10円から、組み合わせによっては120円程度になる。契約更新時期に合わせて、次期の働き方についての育成面談を行い、育児や介護、配偶者の都合に合わせたシフト変更等、様々な事情に合わせて勤務条件を決定するようにしている。

株式会社サンシャインチェーン本部_04_育成面談表兼条件確認表

各項目について本人と上司が0~5点で採点し面談を行って、最終的に総合得点からA・B・C・Dの評価が決定する。
A評価でかつ店長の推薦があり、本部で承認された場合に昇格が認められる。一方で、D評価になると、1つ下の等級に降格となる。
評価結果は、翌年度の時給額(※6)にも反映され、同じ等級であっても、評価結果によって時給額が異なっている。昇格した場合は、昇格後の等級のC評価と同額の時給となり、降格した場合は、降格後の等級のB評価と同額の時給となる。なお、3等級以上のパートスタッフで、店長の推薦が得られると準社員になることができる。

(※6)後述のとおり、この時給額に勤務条件評価による調整給が加算される。

【主任・サブ主任の準社員とパートスタッフには役職手当を支給】

準社員やパートスタッフの中でも、部門長の推薦を受け、過去の能力評価の結果や日々の業務内容、意欲等が優れている者を、主任、サブ主任として任命し、リーダーとしての役割を与えている。主任やサブ主任となっても等級は変化しないが、目安として3等級以上の者を任命している。主任、サブ主任には役職手当を支給している。

◆計画的な教育研修の実施

株式会社サンシャインチェーン本部_05_仕事の様子

同社では、OJT、Off-JTともに年間計画表にカリキュラムと実施日を記載し、全従業員に周知している。Off-JTでは、「コンプライアンス研修」、「安全衛生研修」、「業務改善研修」等を実施しており、平成27年には、外部講師による集合研修として、ロールプレイングを交えた3時間ほどの「接客研修」を全従業員に実施した。
また、同社では毎年11月にレジチェッカーコンテストを実施しており、同コンテストに向けた「チェッカー研修」も定期的に行っている。コンテストには、各店舗での予選を通過した2名が出場し、スピード、正確さ、接客技術を競い、優勝者には賞金が授与される。
更に、自己啓発としてS検を受験する従業員にはテキストを配布し、合否に関わらず受験費用を全額会社で負担している。業務に関連しない内容であっても、同社が用意している通信講座のコースを修了した場合は会社が費用を負担している。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆社員候補者公募制度の導入により、正社員登用を希望する従業員が増加

社員候補者公募制度を導入したことで、パートスタッフから直接正社員になれるなど、正社員登用への門戸が広がった。導入時より、同制度は多くの従業員から支持され、正社員を希望する準社員やパートスタッフは非常に喜んでおり、正社員登用を目指す従業員も増えてきた。離職率にはまだ表れていないものの、今後の改善が期待できる。
同社としても、やる気や実力のある者が正社員として登用されるため、すぐに戦力になってもらえるという安心感がある。今後も継続して正社員登用への勧奨を行っていきたい。一方で、正社員は転勤が必須条件となるため、地域限定正社員区分の新設も検討していきたい。

◆女性が働きやすい環境をつくることで、自社の魅力をアピールする必要がある

現在、新規店舗の出店のため、パートスタッフを募集しているが、なかなか応募者が集まらない。競合他社も年々時給額を上げてきていることもあり、時給額だけで同社の魅力を出すことは難しくなっている。法定を上回る育児・介護関連の制度等、女性が働きやすい環境づくりに力を入れていることも、よりアピールしていく必要があると考えている。また、現在同社では女性の店長がいないため、女性管理職の計画的な育成に力を入れる予定である。

3.活躍する従業員の声

株式会社サンシャインチェーン本部_06_久保翔平氏

久保翔平氏

年代 20代 性別 男性
勤続年数 5年
キャリアアップの過程 アルバイト、パートスタッフ、準社員を経て正社員へ登用。現在は子会社に出向し、県内初出店となるコンビニチェーンの店長として重責を担っている。

◆アルバイトから経験を積み社員候補者に応募、コンビニチェーンの店長として勤務

大学時代から、複数のアルバイトを掛け持ちしていたが、同社の店長が一番親身になってくれ、入社の誘いもあり興味を持っていた。大学中退後に、同社にパートスタッフとして入社し、正社員への登用があると知って準社員になった。準社員として勤務していた際に、社員候補者公募制度が新設された。入社当初より正社員を希望していたため、応募し、平成26年に正社員に登用された。
正社員として勤務する前から、交際を続けている女性がいたものの、契約期間に定めがあることや給与額が低いこともあって、なかなか結婚に踏み切ることができなかった。しかし、正社員になったことで雇用も給与も安定したため、無事に結婚することができた。
平成27年3月から子会社に出向し、県内初出店となるコンビニチェーンの店長という責任ある立場を任されている。

◆業務の幅が広がり、責任の重さを実感

パートスタッフの時は定型的な作業が中心であったが、準社員になると部門の発注を任され、パートスタッフの指導等も行った。また、正社員になってからは、2~3部門の数値管理を任されている。このように、正社員になったことで業務の幅が広がったのはもちろんだが、周囲の従業員が自分を見る目が変わったと感じている。パートスタッフから頼りにされ、上司からは以前よりも厳しい目で見られるようになった。プレッシャーも感じるが、これまで以上に甘えを無くし、責任を持った行動や発言を心がけている。
今後は、コンビニチェーンの出店も加速することから、複数店の管理を任される可能性もあり、力を尽くしていく。社員候補者公募制度の1期生として、常に初心を忘れず、常にポジティブに、常に新しいことへチャレンジしていきたいと考えている。

◆社員候補者公募制度の更なる周知と、正社員登用へのチャレンジを勧奨していくことを期待

社員候補者公募制度の導入前は、準社員から正社員になれずに、正社員登用を諦めて退職してしまう同僚が多くいた。そのため、公募制度ができたことは大変歓迎すべきことで、多くのパートスタッフや準社員に挑戦して欲しいと思っている。能力や意欲を持った人材も多くいるため、公募制度の周知に更に力を入れ、正社員登用へのチャレンジを勧奨していくことを期待したい。