株式会社東京ドレス

キャリアアップ助成金を活用し、非正社員に技術を身につけさせ、技術力の高い人材の育成と定着を図る。

株式会社東京ドレス_01_企業外観
業種 製造業
本社所在地 青森県
正社員数
(平成27年7月16日現在)
正社員:約120名(男性約30名、女性約90名)
非正規雇用労働者数
(平成27年7月16日現在)
契約社員(※1) :2名(女性2名)
パート社員(※2) :6名(女性6名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 婦人服製造(縫製・プレス・裁断・製品管理等)
取組のポイント ■ 有期実習型訓練の導入で、契約社員の育成を実施
⇒技術の伝承と、技術力の高い人材の定着が実現

(※1) 6か月更新の有期契約で、正社員同様フルタイム制を採用(8:30~17:10勤務)。給与は日給制で、賞与は一時金として年2回(1月と8月)支給。主な業務内容は、縫製・プレス・裁断・製品管理。
(※2) 給与は時給制。他の雇用条件は契約社員と同じ。

PDFデータ

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同社は、昭和23年、東京都文京区に婦人服注文店として開業。その後、青森県八戸市に株式会社東京ドレスを設立し、青森県内に3工場と訓練校(モード) 1校、フィリピンに1工場を構えた。平成22年には県内の2工場を統合、訓練校は寮として活用し、現在に至る。アパレル部門と生産部門に分かれ、経験と実績、高い技術で顧客の要望に沿った製品づくりと、感動を与えるファッションを心がけ、日々改革を行っている。

1.取組の内容

◆有期実習型訓練の修了と訓練中の態度、指導員の評価、面接試験合格により、契約社員・パート社員を正社員に転換

かつて同社は自社訓練校を擁しており、未経験者に裁断断裁、ミシン操作での縫製、アイロン・プレス作業といった専門技術を学ばせながら業務に就かせていた。しかし平成22年に訓練校を寮に転用して以降は、訓練校もなく、技術を計画的に学ばせる体制も十分に整えられずにいた。その結果、未経験者を採用しても、業務で必要とされる技術を習得できず、仕事への意欲を上げられないまま退職してしまうケースが多く、人材の定着に課題を抱えていた。
そこで、キャリアアップ助成金の「正規雇用等転換コース」及び「人材育成コース」の有期実習型訓練を活用し、パート社員と契約社員を対象に、平成26年2月に有期実習型訓練ののちに正社員転換を行う仕組みを整備した。
転換の条件は、①6か月間の有期実習型訓練を修了すること、②訓練中の態度が優秀であること、③有期実習型訓練指導員(総務部長、班長2名)の評価が良好であること、④製品の完成度が高いこと、⑤総務部長の面接試験に合格すること、の5つである。
正社員転換制度については就業規則に明示し、就業規則は事務所のカウンターと工場の階段踊り場に掲示し、周知している。また毎週の昼礼で、正社員転換制度について全員に周知し、採用時や契約更新時の面談でも説明している。
これまでに有期実習型訓練を修了した者は6名おり、平成27年7月現在、正社員に転換した実績は、平成26年10月に男性2名、女性1名(いずれも平成26年4月入社)。平成27年7月に女性1名である(平成27年1月入社)。なお、有期実習型訓練を修了したものの、退職して正社員転換をしていない社員が2名いた。

◆756時間の有期実習型訓練で、専門技術を習得させる

同社では、正社員転換を希望する契約社員及びパート社員に対して、6か月間の有期実習型訓練を受講させている。
内容は、OJTとOff-JTに分かれており、OJTに680時間、Off-JTに76時間、合計756時間の訓練となっている。縫製・仕上げ作業と縫製ミシンの点検・調整についてOJTで学ばせ、ミシンやアイロンの構造・操作や安全教育についてOff-JTで学ばせている(図1参照)。
訓練期間中は先輩社員2名が技術指導員となるほか、総務部長も技術習得の経過を毎日フォローしている。
技術達成度については、縫製・仕上げ作業等の個々の技術要素について、「やったことがある」、「不良を出さずに作ることができる」、「品質・作業スピード共に高いレベルで作業できる」、「人に教えることができる」の4段階で技術達成度を自己評価している(図2参照)。評価表はキャリアアップ助成金を活用する中で、新たに作成し、導入した。評価は半年に1回で、ノートに貼り付け、各職場に設置し、誰もが見ることができるようにしている。自己評価ではあるが、各社員の技術習得状況が分かることにより、周囲の社員の技術習得意欲を刺激し、社員同士が切磋琢磨できる環境づくりにつながっている。また、自己評価表を自由に同僚が閲覧できることにより、誰がどの工程が得意であるのかが分かり、お互いに技術を教え合うことができ、結果として職場内のコミュニケーションも良くなった。
なお、この4段階の技術達成度評価は、正社員転換候補者だけでなく、正社員、契約社員、パート社員の全社員が利用している。

(図1)有期実習型訓練のカリキュラム内容

株式会社東京ドレス_02_有期実習型訓練のカリキュラム内容

(図2)技術達成度の評価表の例

「やったことがある」、「不良を出さずに作ることができる」、「品質・作業スピード共に高いレベルで作業できる」、
「人に教えることができる」の4段階で技術達成度を評価している。

株式会社東京ドレス_03_技術達成度の評価表の例

◆正社員転換後は、更なる技術向上を求められ、後輩の指導にも携わる

契約社員やパート社員から正社員に転換すると、給与は日額が上がり、無期雇用となり、毎年昇給する。上司による人事評価も行っており、評価結果は昇給と年2回の賞与支給に反映している。
正社員転換後は、「日産目標額」を設定し、更なる製造技術向上とスピードが求められるほか、後輩の指導にも携わるようになる。また主任、課長、部長と昇格が可能になる。

各雇用区分の関係

株式会社東京ドレス_04_各雇用区分の関係

2.効果と課題、今後の運用方針

◆有期実習型訓練の導入により、計画的に育成する仕組みを確立

有期実習型訓練カリキュラムを作成し実行することによって、契約社員・パート社員を計画的に育成することが可能となった。
同カリキュラムにおいては、先輩社員2名が指導員となり、総務部長が毎日技術習得状況をチェックしており、総務部長自ら技術指導を行うこともある。着実に技術が身につくようになっていると感じている。
また、訓練中の社員がいることで、指導員以外の先輩社員も訓練生の業務を見守るようになり、人材育成を支援する雰囲気が醸成されるようになった。

◆評価表で技術習得の指針が明確になり、社員の技術習得意欲が向上。キャリアアップ助成金活用で計画的な指導を実現

技術達成度の評価表(図2)を作成したことによって技術習得の指針が明確になり、社員の技術習得意欲が向上した。
技術の継承には丁寧な指導が必要であるが、自社のみでは資金的な余裕がなく、計画的な技術習得カリキュラムを組み、実施することが困難であった。しかしながらキャリアアップ助成金を活用したことにより、長期にわたる計画的な指導を行うことができ、訓練生にとっても社員にとっても成長できる機会となった。そのため、本助成制度の役割は大きいと感じている。

◆今後は短時間正社員等、「多様な正社員コース」の活用も検討

育児中の社員に対しても支援を行っており、未就学児がいる社員には残業をさせない、子どもの体調不良等による遅刻・早退を認めるといった取組を行ってきた。なお、これらの配慮は、同社の就業規則上は未就学児のいる社員が対象であるが、実際の運用では小学校3年生まで認めている。
今後は、育児中でも安心して働けるように、短時間正社員等の多様な働き方を検討したいと考えている(平成27年9月より短時間正社員の制度を導入し、育児中の女性社員2名を対象に、勤務時間を9時~16時としている)。これからも引き続き、賃金の上昇を含めた雇用管理体制の改善を図り、人材の定着と安心して働ける職場づくりを目指していきたい。

3.活躍する従業員の声

株式会社東京ドレス_05_石鉢忠夫氏

検査部
石鉢忠夫氏

年代 50代 性別 男性
勤続年数 1年3か月
キャリアアップの過程 契約社員として入社。有期実習型訓練修了後、面接を経て、入社6か月後に正社員となる。
検査部署で新人社員を指導しながら、毎日意欲的に仕事に取り組んでいる。

◆契約社員から正社員転換の直後に入院生活をするも、正社員となっていたため安心してリハビリをして職場復帰

約30年前、同社で勤務していたが家庭の事情により退職し、その後約20年間の建設会社勤務を経て、平成26年4月、契約社員として再入社した。正社員転換制度については入社時に説明を受け、生活の安定を考え正社員への転換を目指すことを決意した。
縫製班に所属しながら有期実習型訓練で積極的に新たな技術取得に励み、入社から半年後の平成26年10月に正社員転換した。正社員転換直後に大病を患い、平成27年1月まで入院生活を余儀なくされたが、正社員に転換していたことで契約更新の心配がないため治療に専念でき、また経済的な安定も保障されており、安心してリハビリを続けることができた。
正社員となったからには会社に貢献したいとの強い思いで、業務に必要な動きができるように積極的にリハビリに励んだ。その結果職場復帰を果たすことができ、平成27年7月現在は納品・検査部に配属され、新入社員を指導する役割も担っている。

◆正社員転換により、求められる技術が多様化し、責任感とやる気が増大

正社員となってからは、後輩に正確な技術指導を行うため、コミュニケーション能力やリーダーシップの必要性も感じるようになった。
また、現在の納品・検査部は未経験の業務で、製品の切り替えも早く、日々学び続けなければならない状態であるが、新たな業務内容を任せられたことで、大きなやりがいと責任を感じるようになった。
本業界は新商品が次々と開発されるため、今後はリスク管理や段取り力も求められていくと思う。今後も後輩を指導しつつ、新たな商品の流れに対応できるように技術を磨く努力を続けたいと思っている。