株式会社ヨックモック

貴社は、どんな会社ですか?

ヨックモックグループは、昨年設立40周年を迎えた洋菓子メーカーで、代表商品のクッキー「シガール」をはじめとした贈答用菓子の製造・販売を主に手がけています。グループを統括する持株会社を中心に、販売会社・製造会社など計10社で構成されますが、今回は、女性社員を多く抱える販売会社(株)ヨックモックについて取り上げました。

短時間正社員制度の導入・実施状況は?

モデル事業ではまず、短時間正社員制度についてのニーズや、導入に際しての課題を把握するために、制度の利用が想定される社員やその上司、周囲の社員に対するグループ・インタビューを実施しました。その結果、男性社員のみならず制度の利用が想定される女性社員の間でも制度の認知度や理解度は低く、また継続就業によりキャリア・アップを果たしたようなロールモデルもいないため、見込まれる利用ニーズに対して、制度を利用しやすい雰囲気が醸成されていないという実態が判明しました。また、仕事の性質上、部門によって制度の利用のしやすさが異なるという意見もあり、特に販売職による制度利用については、店舗内の勤務シフトの組み方や人員補充、業務分担の問題など多くの課題が挙げらました。

そこで、販売職による制度利用の可能性について、制度利用予定者へのヒアリングに基づく業務の棚卸を実施し、①業務内容、②業務スケジュール、③スタッフ間の業務分担の3つのポイントで仕事の配分見直し施策案を立案、施策案の有効性を検証するためのトライアルを実施しました。当初は、店舗での制度利用は様々な課題があり難しいのではと予想されていましたが、トライアルの結果、必要な対応を行えば業務に大きな支障を与えることなく制度が利用できそうだと確認されました。

トライアルの実施と並行して、制度設計にあたってより多くの意見を収集するために、全社員を対象としたアンケートを実施しました。アンケートは制度に対するより詳細なニーズを把握することができただけでなく、短時間正社員制度やその他のワーク・ライフ・バランス支援制度に対する意識啓発としての絶好の機会となりました。

こうして策定した制度案を提示し、より具体的にイメージができる中で再度グループ・インタビューを実施。制度内容に加えて、実際に職場で制度利用者が出た際の業務運営や管理方法などについても、様々な立場から意見を収集しました。制度導入後の円滑な運用に向けて、制度利用に対する肯定的な雰囲気の醸成にもつながりました。

制度を導入した背景や経緯は?

同社において従来、女性社員が結婚・出産を契機に退職することが一般的でしたが、近年その状況は変化しています。主な理由は、この10年ほど力を入れている総合職(グループ基幹社員)採用です。採用者の男女比率は半々、それに伴って女性の職域も拡がり、今や同社の各部門において実務の推進役として活躍していることから、全社的な年齢/等級構成を見た中で、近い将来に女性の管理職比率が高まることは必至と考えています。また、店舗勤務の販売職についても、現状よりも勤続年数を伸ばしながら、単なる販売員ではない、店舗運営業務やサービスレベルの向上を担えるようなコア人材を育成する必要があります。以上の理由から、女性のライフ・ステージを考慮して継続就業できる環境を整備することが同社の緊急課題となっています。

出産・育児関連の制度については、法定通りに整備されていたものの、社員への周知や運用場面の想定が不十分な部分もありました。今後女性の継続就業やキャリア・アップを本格的に推し進め、それを実質的に可能にするために、育児支援のオプションの1つとして短時間正社員制度の導入を検討することとしました。

短時間正社員制度の課題は?

今回導入する短時間正社員制度の運用も含め、会社の描く女性活躍のビジョンを実現するためには、一人ひとりの社員に会社の目的や制度内容を浸透させ、真剣に考えてもらうことが重要です。そのために同社は現在、初の試みとして、全社員を対象にしたワーク・ライフ・バランス支援制度全般に関するハンドブックの作成を行っています。制度内容の紹介だけでなく、会社として社員のワーク・ライフ・バランスを支援する背景や目的についても丁寧に説明し、社員の理解促進を進めていく予定です。

また、短時間正社員制度の利用のしやすさが部門によって異なるという問題点に対しては、特に販売員の店舗業務について、通常の仕事のやり方を改革する具体的なアクションが必要でしょう。単店レベルの一時的な問題解決でなく、根本的な全店共通の施策として、接客以外の事務作業の軽減や効率化、業務分担の見直しといった業務改善を行い、制度利用しやすい体制の確立を目指していきます。

同時に、キャリア・モデルの構築も大きな課題であると考えています。総合職についても販売職についても、期待する長期的な先のキャリアを会社が明示し、その中で社員自身が何を目指してどう働いていくのかを具体的にイメージさせたい。そのキャリアの中でワーク・ライフ・バランス支援制度が活用され、長期的な戦力となる人材が育っていくことが理想とする姿です。現在、評価制度を含めた人材活用の方針、および人事制度全般の見直しを行っています。

こうした取組を含め、今後は社員や現場をうまく巻き込みながら、女性だけでなくすべての社員がそれぞれに能力を十分に発揮して活躍できる職場環境を築いていきたいと考えています。