川口工業総合病院

貴院は、どんな病院ですか?

川口工業総合病院は、埼玉県川口市にある中規模の急性期病院で、昭和34年に地域の鋳物組合や機械組合等が設立した健康保険組合の直営病院ですが、いまでは同組合の会員でない一般市民が受診患者の9割以上を占めています。職員370名(パート含む。H21.10.1現在)に対し、病床数(一般)は199床、施設基準(一般病棟入院基本料)は7対1となっています。

短時間正社員制度の導入・実施状況は?

今回の事業では、まず、短時間正職員として働いている看護師の実態を把握することと、現場のニーズや課題を把握するため、関係者への詳細なインタビュー調査を実施しました。

その結果、看護師の間では、短時間正職員制度への認知度・理解度は低いものの、子どものいる看護師が家庭と仕事の両立を図って働くことに対しての配慮は当たり前のこととして行われており、周囲も協力的という実態が把握できました。しかし、短時間勤務者が、常勤看護師でありながら夜勤を免除されることについては、その分、夜勤が増える周囲の看護師に負担感があること、短時間正職員本人も居心地の悪さを感じていることが分かりました。また、働き方の実態として、子どものいる非常勤は概ね希望する終業時間で帰ることができている一方、子どものいる常勤は定時で帰ることを希望しながらも帰れないことも多く、定時退出・夜勤免除のために非常勤(パート)を選択する者も少なくないことが分かりました。

また、当院には、これから出産・子育て期に入る若い年齢層の看護師だけでなく、比較的年齢層の高いベテラン看護師も多いのですが、ベテラン看護師の間には、「若手は応援したい」が看護の仕事が体力的にきつくなってきた「自分たちのつらさも分かって欲しい」という気持ちが強くあることが、インタビューを進めるなかで浮かび上がってきました。

育児を理由とした短時間正社員制度の運用ルールの整備にあたっては、ベテラン看護師の気持ちに配慮することが大切であり、また、周囲の看護師の納得の得られる運用の在り方を考える必要があると思われたことから、次のステップとして病棟単位で話し合いの機会を設け、ベテラン看護師を含むできるだけ多くの看護師に運用ルールについて検討してもらい、制度設計への参加意識を持ってもらうように工夫しました。

制度を導入した背景や経緯は?

看護師を対象とする短時間正職員制度については、これまでは、制度の規定はあるが運用ルールが定まっていなかったために、実質として導入できておらず、希望者に対して個別に相談の上、対応している状況でした。しかし、出産を機に退職する看護師や、親の介護等を理由に退職する看護師について、何とか辞めることなく仕事を続けてもらいたいと思ったこと、しかしながらその一方で、もし一度にたくさんの短時間勤務希望者が出ると対応しきれないのではないかとの不安があったことから、あらためて、本病院の働き方の実態を踏まえ、かつ他の病院・企業等の制度を参考として短時間正職員制度の運用ルールを策定することとしました。

制度についての今後の方針やお考えは?

こうした検討の結果、本病院では、将来的には育児・介護に限らず、すべての看護師がそれぞれの必要に応じて生活と仕事との両立をはかり、健康に配慮した働き方ができるような制度を導入・運用することを中長期的WLB推進方針として掲げつつ、短期的には、まずは育児・介護と仕事との両立支援策を充実させることを目標とすることにしました。

また、現場のニーズを踏まえ、短時間正職員制度の導入に先立ち、「夜勤専従正職員制度」の導入および「夕方5時間パート」の導入・時給引き上げを2010年1月に、「日勤専従」の導入を2010年4月に実施する予定です。これらは、短時間正職員制度を導入することで手薄になりがちな夜勤・準夜勤帯の人員確保にもつながるものと期待しています。

短時間正職員制度導入自体については、2010年4月の導入を目指しており、同時に、短日正職員制度、準夜勤帯に限った理由を問わない短時間勤務制度も導入する予定です。

制度の対象者は、現場のニーズを踏まえ、①短時間勤務については、育児中または妊娠中の者(子どもが小学4年の年度末迄、子どものメンタル面の事由等に関しては中学3年の年度末迄、申請・取り消しOK)、日常的に介護の必要な3親等以内の高齢家族のいる者、健康上の問題・体力面の不安により通常勤務が困難な者(10月くらいから導入したいと思います)、②短日勤務については、育児中または妊娠中の者(子どもが小学4年の年度末迄、子どものメンタル面の事由等の関しては中学3年の年度末迄、申請・取り消しOK)、日常的に介護の必要な3親等以内の高齢家族のいる者、自己啓発や地域活動等への参加目的(ただし将来的にはフルタイム常勤可能な者。10月くらいから導入したいと思います)とし、基本給については、日勤との時間比例で短縮分の給与を控除するものとしました。賞与は、控除された基本給をベースに、通常勤務者と同様の評価算出方法を用いて支給することとを考えています。

今回、取組を行ってよかったことは、具体的な制度の運用ルールを定めることができたこともさることながら、制度の当面の対象者となる子育て期の看護師だけでなく、ベテラン層や予備軍も含む幅広い年齢層の看護師が、制度の運用ルールをめぐって話し合う機会を持ち、制度設計に参加意識を持つことができたことだと思います。将来的には、子育てに限らず、体力や健康への配慮を理由とする短時間勤務についても認めていくという方向性を示すことで、看護師全体にとって納得性の高い制度導入が可能になったことと評価しています。