双日株式会社

貴社は、どんな会社ですか?

当社は、新しいビジネスと価値を創出する総合商社として、自動車やプラント、エネルギーや金属資源、化学品、食料資源など、全世界で幅広いビジネスを展開しています。

拠点数は国内7ヶ所、海外83ヶ所、関連会社数は国内113社、海外287社です。

従業員数は、単体で2304人、連結で15788人です。

短時間正社員制度の導入・実施状況は?

育児目的の短時間勤務制度は、2009年7月に導入しました。

さらに、現在施行している介護目的の短時間勤務制度は、2011年4月より導入しました。早速、制度利用者も出ました。

制度を導入した背景や経緯は?

「ワークライフバランス」には、「①子育て」「②介護」「③働き方の多様化」の三本柱で取り組んでいます。

取組の経緯としては、2008年にWLB委員会を設立し、社員ニーズ調査を実施したところ、介護施策に対する要望があり、仕事と介護の両立支援に本格的に取り組み始めました。

制度の概要を教えてください。

(1)対象者は?
管理職も対象とした全社員です。

介護事由の対象は広く認め、「配偶者、実(養)父母、子、配偶者の実(養)父母、祖父母、兄弟姉妹または孫、その他家族で会社が認めた者」としています。

(2)利用目的は?
育児と介護を目的としています。

介護の短時間勤務制度は、家族の介護のため継続的に始業時間の繰り下げや就業時間の繰り上げの必要がある職員が出てきた場合に対応できるように作りました。

介護関係の制度では、介護休暇(有給)と介護休職(無給)も設けています。介護休暇は、長期傷病休暇も介護目的に取得できるもので、最大年間85日(法定5日含む)まで利用できます。介護休職は、通算183日間の休暇可能期間の範囲で、同一の要介護者につき、複数回の休職取得ができます。(更に、介護を理由に退職する際に、退職前に希望を出せば3年以内であれば復職できる再雇用制度もあります。)

これらの介護制度は整備していますが、会社としては、長期で休暇を取得したり休職して全面的な介護者になるというよりは、休暇制度を取得している期間に介護サービスの手続き等を済ませ、サポート体制等を整えて、必要があれば短時間勤務制度を利用して仕事に復帰してほしいと思っています。

育児、介護目的以外では、短時間勤務制度ではなく、フレックスタイム(コアタイム10:30~15:30)により、ワークライフバランスを実現することもできます。

(3)勤務時間や日数は?
始業時間の繰り下げ、終業時間の繰り上げを15分単位で行い、1日当たり2時間15分まで短縮できます。

また、介護目的の場合は、1週間の労働日数を3日、又は4日とする勤務日選択も可能です。

(4)短時間正社員として就業可能な期間は?
育児:小学校3年生終了まで。子ども1人につき、原則1回適用。双子以上も1人とみなします。

介護:1ヶ月以上3年以内。該当者1人につき、原則1回適用。ただし、特別な事情を認めた場合、通算3年以内に再取得が可能です。

(5)賃金や評価はどのようにしていますか?
短縮時間分のみカットします。

(6)そのほか、貴社の制度に特徴があれば。
<制度を利用しやすくするための工夫>
介護事由で短時間勤務制度の届出書が提出された場合、本人の介護休暇取得実績や、日頃の上席とのコミュニケート範囲での事実確認を前提にし、プライバシーに配慮しており、証票書類は、必要がある場合に提出を求めることとしています。介護休職の場合も同様です。

<介護に関するセミナーや情報提供等の実施>
2010年に介護保険基礎セミナーを実施しました。参加者は40~50代が7割を占めていますが、若手職員や、備えとして知っておきたいという参加者も見られました。

このセミナーの参加者アンケートで、少人数での説明会を開催してほしいという希望があったため、その後、小規模座談会形式の実践セミナーも開催しました。

2011年度は介護知識セミナーを実施しました。昼休みを利用して、介護の知識だけでなく介護技術についても学ぶものとしました。

セミナーの参加者同士のコミュニケーションが始まり、ネットワークも作られつつあります。

その他、要望に応えて、イントラネットで会社の制度を紹介したり、外部の専門家に委託しての24時間相談窓口の設置や遠距離介護サポートも行っています。ホームヘルパー資格取得講座の受講料の一部補助も行っています。

2014年度には介護保険料徴収が始まる40歳以上の社員を主な対象とし、セミナーを開催し、介護全般に関する基礎知識と仕事との両立について公的介護制度と介護ケアに関する状況や御自身の介護体験、標準的な国の制度利用方法を紹介。

制度の導入や運用にあたっての課題・問題は?

介護のために短時間勤務制度を誰が必要としているかについては、なかなか表に出てこないため、日常の職場でのコミュニケーションなどから社員の悩みやニーズをくみ取り、制度利用へ繋げていくことが重要だと感じています。社員の様子を上司が察し、状況によって短時間勤務制度利用を勧めることなどができればよいと考えています。

また、人事部署への問い合わせや相談を通じ、退職を考える理由が、実は介護であることが判明することがあります。そのときに、短時間勤務制度を利用しながら勤め続けることができることを伝えることで、退職せずに済むこともあります。有給休暇取得の潜在的なニーズを把握することも必要だと感じています。

制度導入でどんな効果やメリットがありましたか?

育児・介護休業法の改正の際、イントラネットで周知したところ、介護に関する制度の利用者が増えました。介護事由の短時間勤務制度(勤務日選択含む)の利用は、利用者が数名であっても、ワークライフバランス意識浸透への影響力が大きいと感じます。

制度についての今後の方針やお考えは?

今後は、以下の取組みを行うことにより、お互いに助け合う風土を醸成していきたいと考えています。また、これらの取組みによって、制度と気持ちの備えができればと思います。

介護セミナーの継続実施

ポータルサイトでの継続的な情報提供(公的情報と社内制度周知)

少人数制の座談会、個々の相談事項に即した個別相談会

制度利用者と職場の考えにギャップがないかの確認

ライフスタイルの多様性を考慮した施策の実施

介護問題の解決には、会社からのアプローチだけでなく、社員の自発的な意識を啓発することも重要です。職場に介護の問題を抱えている人がいることに気づく、家族に介護が必要となったら自分でも調べる、介護セミナーに参加するなど、能動的に行動することも必要です。

短時間正社員制度の課題は?

介護は、長期間にわたり先がみえない点が子育てと異なります。また、介護の状況は、一人ひとり状況が違います。そこで、介護に関する情報提供や相談窓口の紹介、「長期休職や退職を選択せず、両立を目指す」という気持ちの継続、「お互い様」意識の醸成、同僚などとの日ごろのコミュニケーション促進など、親族が重度の介護状態となる前から、社員が安心して勤め続けようと思えるように、制度を充実させていくことができればと考えています。