アサヒビール株式会社

貴社は、どんな会社ですか?

当社は、ビールをはじめとする酒類の国内での製造・販売を行う会社です。
従業員数は単体で4382名。正社員は3004名で、女性は475名です。(2014年12月末時点)

短時間正社員制度の導入・実施状況は?

導入は1991年で、当時は育児と介護目的について認めるものでした。その後、2010年に制度を拡充し、「ショートタイム勤務制度」として、育児、介護などのワークライフバランス推進、資格取得など自己研鑽と仕事との両立、そして早期退職者を対象にセカンドライフを準備するための支援策として、一定期間短時間での勤務が可能な制度を導入しました。

現在常時利用しているのは28名。(2015年7月末時点)

制度を導入した背景や経緯は?

男女雇用機会均等法施行後の1990年頃に大量採用した女性総合職が出産・育児を迎える前に、育児休業後の支援策の整備を必要としていたことが、導入した理由です。

2008年9月に「女性活躍推進担当」というポストを新設し、会社全体として女性活用、ダイバーシティ推進に取り組んでいく姿勢を打ち出しました。2009年策定の「長期ビジョン2015」「中期経営計画2012」の中でも、第1期の2009年の主要テーマとして女性の活躍推進を設定。グループ内から公募した多様な年齢・職種の男女20名でプロジェクトメンバーを結成し、2009年12月にダイバーシティに関する会社への提言を経営陣に提示しました。これ受けて2010年は提言策の具現化に取り組み、「スキルアップ休職制度」の新設、「ウェルカムバック制度」の拡充、総労働時間削減に向けた取り組み等に加えて、短時間勤務制度の拡充(就業免除時間を1時間45分から2時間までに拡大)を行いました。その後2回の次世代育成計画の達成により「くるみん」の認定を受け、2015年7月には「プラチナくるみん」の認定を受けるに至りました。

制度の概要を教えてください。

(1)対象者は?(就業形態、役職等)
正社員全員が対象です。適用除外している職種や業務はありません。管理職も取得できます。

(2)利用目的は?
育児、介護目的に加え、2011年より、資格取得など自己研鑽と仕事の両立支援、早期退職者を対象とするセカンドライフ準備の支援も目的としても認めるよう制度を拡充しました。
育児:中学校就学前の子の育児
介護:2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある家族の介護
自己研鑽:資格取得や大学院など学校へ通うためといった自己研鑽
セカンドライフ準備:早期退職者の募集に応じた社員のセカンドライフ準備

(3)勤務時間や日数は?
通常の所定労働時間は1日7時間30分(ただし年間90日間は7時間45分)ですが、短時間勤務者については、1日最大2時間まで短縮が可能です。

始業時間、終業時間のどちらで短縮することも可能です(分割・一括とも可)。勤務時間の短縮は5分単位で決められます。半休やフレックス勤務との併用は認めていません。

短日勤務は想定していませんが、「子育て休暇制度」「介護休暇制度」「介護休業制度」を別途設置しています。

(4)短時間正社員として就業可能な期間は?
育児:子供が中学校就学前までです。
介護、自己研鑽、セカンドライフ準備:特に上限は設けていません。

(5)賃金や評価はどのようにしていますか?
育児目的の場合:一般職については、対象となる子が3歳未満の場合は、就業免除分も有給としています。賞与や退職金には短時間勤務は影響しません。

介護目的、自己研鑽、セカンドライフ準備の場合:一般職については、時間短縮に応じて基本給を減額しています。賞与や退職金には短時間勤務は影響しません。

評価について:目標管理制度を導入しています。かつては休んだり時間短縮をした日数に応じて減点していましたが、2011年1月に人事制度を抜本改正した際に減点制を廃止しました。今は、短時間勤務にも配慮しながら上司との間で目標を設定し、その目標の難易度と達成度で評価しています。ですから、短時間勤務者であっても、フルタイム勤務者と同じ目標を掲げることができ、短時間勤務者とフルタイム勤務者との評価の差はありません。

(6)そのほか、貴社の制度に特徴があれば。
当社は、育児休業取得後の復帰率はほぼ100%となっています。短時間勤務制度に限らず、女性活用やワークライフバランス推進を目的に、法定基準を上回る多様な支援制度を導入しており、それらを組み合わせることで、従業員の様々なニーズに応えています。

制度の導入や運用にあたっての課題・問題は?

育児短時間勤務について、子が3歳未満の場合は就業免除分も有給としていますが、「就業免除分は無給にしてもらったほうが気が楽」との声もあり、対応も検討しましたが、元々支給していたものを減額するという制度変更は難しい面があったという経緯があります。

支援を必要としている人・問題を抱えている人に支援策を提示できるよう、上司等の制度についての認知・理解を高めることが必要です。このため、新しく管理職になる層を対象とする研修で、制度についての説明や、評価の仕方や注意点等についての説明を行っています。今後は、ベテランの管理職に対しても、制度の説明や評価者訓練が必要だと感じています。

適用除外している職種や業務はありませんが、実際は、産休や育児休業からの復帰時に、両立しやすい職場・職種に異動するケースが多くなっています。営業など、なかなか復帰しづらい職場・職種があることも事実です。そうした職場・職種について、短時間勤務者が働きやすいように仕事自体を見直したり、働き方を変革することは今後の課題です。

制度導入でどんな効果やメリットがありましたか?

実際に利用するかどうかにかかわらず、「制度があることで不安がない」「安心できる」など、制度として導入したことが従業員の安心につながっており、離職率の低さはその表れです。

社員のプロジェクトチームの提言が具体化し、「社員の声を実現できる社風」を実感したことが会社へのロイヤリティや仕事のモチベーションの向上にもつながっています。

制度の導入は対外的なイメージアップにもつながっています。短時間勤務制度の導入・活用などにより、「働きがいのある会社」のランキングなどで当社は上位に選ばれています。

制度についての今後の方針やお考えは?

短時間勤務制度をはじめとして、女性活用やワークライフバランス推進のための制度は、法定基準を超える形でかなり充実していると思っています。今後は、それらの制度が目的に適う形でよりよく活用されるように、運用面での改善を図っていきたいと考えています。

短時間正社員制度の課題は?

介護目的での利用はまだ少ないですが、顕在化していないニーズがあるとも考えられます。社員が追い詰められてしまう前に状況を把握し、支援策を提示することも必要と感じています。