一般財団法人三友堂病院

貴院は、どんな病院ですか?

当院は、1886年創設の三友舎を前身とし、米沢市を中心とする地域の中核病院として100年以上、地域とともに歩み続けてきた病院です。「信頼と融和で築こうよい病院」を理念に、一般病棟の他、緩和ケア病棟を有し、患者さまとご家族の苦痛が癒せるよう多職種が協同して心のこもった医療を提供しています。

短時間正社員制度の導入・実施状況は?

2008年4月に、原則的に育児、介護、自己啓発、社会活動への参加、傷病等を利用目的とした制度を導入しました。

制度を導入した背景や経緯は?

2006年の診療報酬改定により看護師設置基準の変更が行われた影響で、全国的に看護師の人材確保競争が激化、当院でも看護師の流出が増え看護師不足が問題となっていました。そこで、看護師の確保・定着対策として「働きつづけられる職場づくり」を目指し、制度を導入しました。

制度の概要を教えてください。

(1)対象者は?

  • ・制度の対象者は全職種、全職員です。申請は入社時から利用可能としています。

(2)利用目的は?

  • ・育児、介護をはじめ、自己啓発、社会活動、傷病など幅広い利用目的を認めています。実際の利用目的は、いまのところ育児が大半です。

(3)勤務時間や日数は?

  • ・勤務時間や日数は、週20時間以上勤務の条件をクリアすれば、個人の事情に合わせて自由に設定できる仕組みとしています。

(4)短時間正社員として就業可能な期間は?

  • ・期間に制限はございません。仮に当初の理由が消失しましても、短時間で働いていただくことが可能です。

(5)賃金や評価はどのようにしていますか?

  • ・賃金、賞与、退職金:短時間正社員が不利にならないよう、また、通常勤務者からの理解が得やすいよう、すべて時間比例で算定しています。
  • ・評価:通常勤務者と同じ仕組み(時間短縮に応じて設定した目標に対して、達成率で評価している)としています。

(6)そのほか、貴社の制度に特徴があれば。

  • ・制度の利用については、毎年4月と10月の年2回申請可能にしています。制度導入の当初は随時申請を受け付けていましたが、現場を管理する師長などから、シフトを組む際などの業務負荷が大きすぎるとの声があり、申請時期を年2回にしました。

制度の導入や運用にあたっての課題・問題は?

制度導入のための準備作業は、看護部と人事部で開始しました。当初、看護部から、「正職員から短時間正社員へ転換を希望する職員が続出するのではないか」と懸念する意見が出されました。しかし、「看護師の離職を防ぐには、多様な勤務形態による就業促進が必要なこと」「職員が互いに多様な勤務形態を理解し、働き続けられる職場環境を整えることが重要なこと」「仕事と生活の両立が図られることで看護師を定着させることが、看護ケアの質向上にも繋がること」を説明し、理解を求めました。

制度の運用に際しては、「通常勤務者に迷惑をかけたくない」「遠慮する」といった心理的な負い目を制度利用者が感じないように、皆で意識的に声をかけあって職場風土を向上させるようにしています。また、手術が多い曜日については、短時間正社員にも超過勤務をしてもらったりもしています。また、当院では、固定チーム・ナーシングを採用しています。短時間正社員にも、「単なるお手伝い」という意識にならないよう、担当患者を持ちしっかり仕事をしてもらっています。また、どの部署が忙しいかについて、部室長が日々分かるようにし、部門を超えて応援し合う体制をとり、業務量の調整を行っています。

制度導入でどんな効果やメリットがありましたか?

職員の確保及び定着が進むとともに、多様な勤務形態の職員が同じ職場で働くことを通じて、業務分担の見直しが進みました。また、TVや新聞に報道されることなどを通じて、病院のイメージアップにもつながりました。

制度についての今後の方針やお考えは?

現在の利用目的は育児が大半ですが、今後については、認定看護師の資格取得等の目的で、更に積極的に制度を利用してもらうように制度に関する情報提供を積極的に行っていきたいと考えています。また、チーム医療の観点から、看護師が大半の医療サービスを実施するというスタンスではなく、他のコメディカルとの分担を更に進めることで、更なる職場の生産性向上を追及していきたいと考えています。

短時間正社員制度の課題は?

医療の質向上に向けて教育訓練を特に重視している中、研修の開催時間帯についても、できる限り短時間正社員の都合を考慮していますが、現状は18時以降に開催されることが多く、欠席者がどうしても出てしまう状況です。短時間正社員の人が時間に制限されなく研修を受講できるように、eラーニング化を今後推し進めていきたいと考えています。

先行研究では、恒常的な短時間正社員制度と目標管理制度を合わせて活用すると労働生産性が高まると言われています。現在、当法人では一時的な短時間正社員についても目標管理を実施していますが、達成度合い、評価に困難があり、今後は恒常的(一年以上)な短時間正職員のみを対象とする検討を行っています。

短時間正社員はあくまでプラスアルファ的な要員とみなし、決して通常勤務者の代替要員とはしていません。仮に代替要員とした場合は、労働力、協調性、理解(お互い様感情)などに亀裂が生じ、制度維持に大きな問題となります。よって、短時間正社員はフルタイム正職員にオンする形式とし、時間外勤務の削減、医療の質向上、リテンションの醸成、モチベーションのアップ等に結びつく制度とする必要があります。