取組事例(2021年)
株式会社 双葉
基本情報
業種 | 宿泊業、飲食サービス業 |
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都道府県 | 新潟県 |
従業員数 (2021/9時点) |
正社員:67名 パートタイム労働者・有期雇用労働者:18名 |
事業概要 | 1949年設立の「双葉旅館」を前身とし、以来越後湯沢でホテルを運営している。「ニコニコ・ハキハキ・元気よく・ありがとう」をモットーに、現在は客室78室、収容人数400名の温泉旅館「水が織りなす越後の宿 ホテル双葉」を経営している。 |
取組を行った待遇
基本給 | |
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賞与 | ○ |
手当 | ○ |
退職金 | ○ |
福利厚生 | |
休暇・ 休職制度 |
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教育訓練 | |
その他 |
取組のポイント・概要
背景
従前より、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇差を設けているという認識があまりなかったが、2020年に事業内容に変更が生じた際に正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の業務内容を整理した結果、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の業務内容に差異があまりないことを把握し、待遇の改善に係る制度改定を実施。
取組
パートタイム労働者・有期雇用労働者を対象に、家族手当、退職金、賞与の支給を開始。
待遇 | パートタイム労働者・有期雇用労働者への待遇の変化 | |
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取組前 | 取組後 | |
賞与 | 支給なし | 基本給1か月分と役職に基づく支給額を年2回支給 |
手当 | 精皆勤手当、通勤手当、住宅手当を支給 | 精皆勤手当、通勤手当、住宅手当に加えて家族手当を支給 |
退職金 | 支給なし | 正社員と同じ支給基準で支給 |
効果
2020年以降、正社員を含む全体の離職率が低下。従前は、新卒の離職率が3割程度/年であったが、1割程度/年に減少。また、離職理由が、業務に関する不満等の後ろ向きな理由から、異なる職業への挑戦等の前向きな理由や転居等の外的な要因に変化。正社員、パート社員ともに仕事への挑戦等が増加し、職場の雰囲気が向上。
取組の詳細
取組に向けた検討プロセス
同社では、従来から雇用形態による業務内容の違いはあったものの労働条件に大きな違いはなく、待遇差はほとんど設けていなかったが、2020年に事業内容に変更が生じた際に、業務の見直しや従業員を対象にアンケートを実施した結果、現場業務に従事する正社員とパートタイム労働者の業務内容にも差異がないことを認識した。そこで、パートタイム労働者の待遇の改善の必要性を感じ、取組を開始することとした。取組においては、2021年以降導入の全社員を対象とした等級制度導入設計のため、全社員を対象に業務内容のヒアリングを実施するなど、従業員の意見を積極的に取組に取り入れるようにした。
また、2018年頃から人材確保において大企業と競合するため、人材の定着を図ってきた。従業員のライフステージに応じて、希望する働き方が異なると考え、自由な働き方を推進し、従業員に長期的に多様な働き方での勤務が可能であることを示している。また、従業員に将来への期待感を持ってもらうため、コロナ禍においても、待遇の向上(危険手当の支給、給与支給額の向上等)を実施している。
同社の主な社員タイプは、正社員とパ―ト社員であり、パート社員は無期雇用の短時間勤務である。
表 取組の対象となる社員タイプ
社員タイプ (人数) |
職務内容 | 職務内容・配置の変更範囲 | 均等・均衡待遇 | |
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正社員 (67名) |
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- | |
パートタイム労働者・ 有期雇用労働者 (18名) |
パート社員 |
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均衡待遇 |
パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善の詳細
【賞与について】
同社では、賞与は、社への貢献に対する報酬及び社員の生活の補助を目的に支給している。支給取組前は、パート社員数が少なく、また、勤務日数も週3日程度と、正社員と比較して企業への貢献が小さかったことから、パート社員には賞与を支給していなかった。しかし、近年では週5日程度勤務するパート社員が増えてきたため、賞与の支給を開始した。また、これまでは60歳以上のパート社員が多く、扶養家族を有する者も少なかったが、パート社員も家族を有し、主たる家計の維持者であることが多くなってきたことも、パート社員への賞与の支給開始の理由となった。
賞与は、正社員、パート社員ともに、4~8時間の契約時間に応じて基本給1か月分に50%、62.5%、75%、87.5%を乗じ、役職に対する手当を上乗せして年2回、支給することとした。
正社員、パート社員への基本給は、年齢給と職能給から構成され、職能給には年1回の人事評価結果を反映している。正社員を対象とした人事評価は基本業務に対する評価(勤怠、職務遂行能力、部署や同僚の手伝いをしているか、等)であり、業務における基本的な事項を評価するものであるため、同項目をパート社員にも適用している。また評価も、正社員と同じく各部署の上長が実施し、経営層が最終判断を行っている。
【退職金について】
同社では、退職金を、企業への貢献に対する慰労及び社員の退職後の生活の補助を目的として支給している。取組前は、パート社員数が少なく、また、勤務日数も週3日程度と、正社員と比較して企業への貢献が小さかったため、退職金を支給していなかった。しかし、近年では週5日程度勤務するパート社員が増えてきたため、退職金の支給を開始した。また、これまでは60歳以上のパート社員が多く、扶養家族を有する者が少なかったが、パート社員に主たる家計の維持者が多くなったことも、パート社員への退職金の支給開始の理由となった。
勤続3年以上の正社員、パート社員を対象に、役職と勤続年数に応じて中小企業退職金共済の掛け金を設定している。勤続年数3~10年の正社員、パート社員は5,000円、勤続年数10年以上の正社員、パート社員は10,000円を掛け金としている。加えて、役職を有する正社員(役職に就けるのは正社員のみ)には、役職に応じて掛け金に加算している。
【家族手当について】
同社では、家族手当を、家族を扶養する者の経済負担軽減を目的に支給している。取組前は、パート社員数が少なく、また、勤務日数も週3日程度と、正社員と比較して企業への貢献が小さかったことや、60歳以上のパート社員が多く、家族を有する者が少なかったことが理由で家族手当をパート社員に支給していなかった。しかし、近年では週5日程度勤務するパート社員が増え、また、家族を有し、主たる家計の維持者であることが多くなったため、パート社員への支給を開始することとした。一部のパート社員からの経済的な自立を希望している旨の意見を受け、家族扶養の負担を待遇の向上を通じて軽減したいと考えていたことや、経営者が子どもたちが地域や企業にとって非常に重要であると考え、間接的に子どもたちを支援したいと考えていたことも取組の背景であった。
家族手当は、配偶者(60歳までの同一世帯扶養者)、子ども(0歳~学業終了もしくは、高校卒業まで)、父母(同一世帯扶養)(介護適用時は一定額を加算)に支給している。
取組による効果
パート社員の待遇改善に加え、2018年頃から本人の希望に合わせた働き方の推進等にも取り組み、人材の定着を図ってきた結果、正社員を含む全体の離職率が低下した。従前は、新卒の離職率が3割程度/年であったが、1割程度/年に変化したと感じている。離職の理由についても、業務に関する後ろ向きな理由から、異なる職業への挑戦等の前向きな理由や転居等の外的な要因が増えたと感じる。また、社員による仕事への挑戦が増える等、職場の雰囲気が向上したと感じている。
一方で、一人親や扶養する子供の人数等、社員が置かれる環境や希望する働き方が多様であるため、雇用形態・給与形態等の工夫を通じて、柔軟な働き方やよりよい待遇を提供する必要があると考えている。原資の確保等、経営状況とのバランスを鑑みて検討する必要があり、引き続き試行錯誤が必要であると感じている。