取組事例(2021年)
有限会社木曽アーチェリー
基本情報
業種 | 医療、福祉 |
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都道府県 | 長野県 |
社員数 (2022/1時点) |
正社員:2名 パートタイム労働者・有期雇用労働者:10名 |
事業概要 | 宿泊業・日帰り入浴及び介護施設のデイサービスを提供している。 |
取組を行った待遇
基本給 | ○ |
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賞与 | |
手当 | ○ |
退職金 | |
福利厚生 | |
休暇・ 休職制度 |
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教育訓練 | |
その他 |
取組のポイント・概要
背景
業務内容の違いが処遇に反映されていないことが社員の不満につながっていると考え、業務内容及び処遇を明確化。
取組
正社員とパートタイム労働者を対象に職務等級制度を導入し、パートタイム労働者の基本給と手当の見直しを実施。
待遇 | パートタイム労働者・有期雇用労働者への待遇の変化 | |
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取組前 | 取組後 | |
基本給 | 部門ごとに一律の時給を支給 | 職務等級に応じた時給を支給(正社員の基本給の時給換算と同程度) |
手当 | 通勤手当、勤続手当を支給 | 通勤手当、勤続手当のほか資格手当を支給 |
効果
処遇に対する納得感が高まったため、社員が前向きに業務に従事するようになったと感じる。人事制度を整備したことが、ハローワーク等で求人を行う際のアピールポイントとなることを期待。
取組の詳細
取組に向けた検討プロセス
同社では、全従業員のうちパートタイム労働者の割合が約8割と非常に高く、パートタイム労働者を正社員並みに活用していきたいと考えていた。しかし、正社員とパートタイム労働者の職務内容は明確化されておらず、また、パートタイム労働者の待遇は、部門(職種)に応じて一律の給与水準としていたため、パートタイム労働者の間で不公平感が高まっていた。そこで、正社員とパートタイム労働者の職務内容を棚卸し、職務に基づいた等級制度、賃金制度を設計することとした。
同社の主な社員タイプは、正社員とパートタイム社員である。パートタイム社員は、無期契約の短時間勤務である。現在、同社の看護部はパートタイム社員のみである。
表 取組の対象となる社員タイプ
社員タイプ (人数) |
職務内容 | 職務内容・配置の変更範囲 | 均等・均衡待遇 | |
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正社員 (2名) |
旅館業務及び介護施設ヘルパーで業務等に従事 |
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- | |
パートタイム労働者・有期雇用労働者 (10名) |
パートタイム社員 | 旅館の厨房業務及び介護施設でヘルパー業務、看護師業務等に従事 時間外労働への対応を行う |
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均衡待遇 |
パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善の詳細
【基本給について】
取組前は、正社員、パートタイム社員ともに等級制度を適用しておらず、パートタイム社員の時給は部門(職種)に応じて一律の基準を適用していた。しかし、パートタイム社員の業務内容や責任の程度は社員により異なっており、正社員の基本給を時給換算した金額との均衡はとれていなかった。
そこで、2021年に正社員とパートタイム社員共通の職務等級制度を導入し、職務等級に基づく基本給を支給することとした。パートタイム社員の基本給は、同等級において時給換算した正社員への支給額と同程度の額としている。また、職務内容だけでなく、社員のパフォーマンスに係る評価を基本給に反映したいと考えたため、各等級に紐づく基本給の幅は広く設定し、等級ごとの基本給幅が重複するように設定した(職務等級が低くても、パフォーマンスに係る評価が高ければ基本給が上位等級以上となることもある)。
職務等級制度の導入にあたっては、雇用していた全社員の職務内容を棚卸し、職務評価ポイントに応じて4段階の等級に区分した。
また、取組を通じて、パート社員を対象とした人事制度等を整備したことで、「介護職員処遇改善加算」を取得することが可能となり、介護職のパート社員の基本給を上げることができた。
図 パート社員の等級と基本給の支給額

等級 | 職務評価ポイント | 等級定義 |
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副主任相当 | 20~ | |
一般社員I | 16~19 | 周囲を指導できるレベル |
一般社員II | 10~15 | ひとりで仕事をこなせるレベル |
一般社員III | 8~9 | 訓練期間、補助作業 |
職務評価ポイント…社内に存在する個々の職務(役割)について、難しさや責任の度合いの観点から、その大きさを定量化したもの
評価項目 | 定義 |
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人材代替性 | 採用や配置転換によって代わりの人材を探すのが難しい仕事 |
革新性 | 現在の方法とは全く異なる新しい方法が求められる方法 |
専門性 | 仕事を進める上で特殊なスキルや技能が必要な仕事 |
裁量性 | 従業員の裁量に任せる仕事 |
対人関係の複雑さ(部門外/社外) | 仕事を行う上で、社外の取引先や顧客、部門外との調整が多い仕事 |
対人関係の複雑さ(部門内) | 仕事を進める上で、部門内の人材との調整が多い仕事 |
問題解決の困難度 | 職務に関する課題を調査・抽出し、解決につなげる仕事 |
経営への影響度 | 会社全体の業績に大きく影響する仕事 |
【手当について】
取組前から、パートタイム社員と正社員を対象に、通勤手当と勤続手当を支給している。勤続手当は、入職後5年までの正社員、パートタイム社員に対して支給しており、新規入職者の定着を目的としたものである。
また、取組前は、正社員、パート社員ともに資格手当を支給していなかったが、正社員に加え、看護師資格を有するパートタイム社員には上限を2万円/月として120円/時間を支給、介護福祉士資格を有する者には60円/時間を支給することとした。
現状、パートタイム社員のみに有資格者がいるため、資格手当の支給を通じてパート社員の待遇改善につながると考えたためである。
取組による効果
職務等級制度の導入によって、各パート社員が担当する職務の違いを可視化することができた。それにより、職務の違いに基本給を紐づけることができたため、待遇に対するパート社員の納得感が高まり、業務へのモチベーション向上につながったと感じている。パート社員の人事制度を整備できたことが、新規求人において他社との差別化のポイントとなることも期待している。
今回の取組みを通じて、パート社員の等級制度と賃金制度を整備したが、評価制度は設計中である。今回設計した人事制度を長期的に運用していくことを想定し、慎重に検討を続けたいと考えている。例えば、評価が上振れした際に、どのように給与のバランスをとるのか等、生じる課題への対応を制度の導入前に検討しておきたい。