取組事例(2021年)

有限会社 岩川産業

基本情報

業種 製造業
都道府県 愛知県
社員数
(2021/09時点)
正社員:60名
パートタイム労働者・有期雇用労働者:12名
事業概要 創業以来、洗面器やトイレなどの衛生陶器のメーカーの構内協力企業として、衛生陶器の製造・加工業務や構内の清掃業務を請け負っている。
小ロット多品種のため人の手による手作業で製造し、質の高い製品を提供している。

取組を行った待遇

基本給
賞与
手当
退職金
福利厚生
休暇・
休職制度
教育訓練
その他

PDFデータ

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取組のポイント・概要

背景

パートタイム・有期雇用労働法の施行をきっかけに、パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇向上を目的として取組を実施。

取組

製造業務に従事するパートタイム労働者を対象に、人事制度を改定。基本給は、正社員と同様の支給基準で決定。賞与は、正社員と同様の基準で新たに支給を開始。

待遇 パートタイム労働者・有期雇用労働者への待遇の変化
取組前 取組後
基本給 最低賃金に基づいた一律の時給を支給 業務内容に応じて金額を決定。製造業務担当者は、同じ職務内容を担う正社員と同程度の時給を支給
賞与 支給なし 正社員と同じ人事評価を適用し、同じ基準で支給

効果

パート社員からは基本給や賞与の改定について感謝の声が寄せられており、モチベーション向上につながっていると認識。

取組の詳細

取組に向けた検討プロセス

 同社では、以前からパートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇向上を検討してきた。パートタイム・有期雇用労働法の施行を機に段階的な人事制度の改定を開始している。

 2020年度からは、工場での製造業務に従事する正社員とパート社員とでは業務の内容には大きな違いがないことを踏まえ、職務内容と業務の遂行を通じた会社への貢献度に基づく賃金決定の仕組みを導入することとしたほか、2024年度までに他のパートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇についても見直し・改善を予定している。

 同社の主な社員タイプは、正社員、パート社員である。パート社員は、1年契約の短時間勤務である。

表 取組の対象となる社員タイプ

社員タイプ
(人数)
職務内容 職務内容・配置の変更範囲 均等・均衡待遇
正社員
(60名)
  • ・工場での製造業務や管理業務に従事
  • ・業務上のトラブルや、時間外、休日労働への対応も行う
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性がある。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
-
パートタイム労働者・有期雇用労働者
(12名)
パート社員
(製造業務)
  • ・工場での製造業務に従事
  • ・業務上のトラブル等の対応はないが、正社員同様に業務の改善提案や業務中の危険事項報告を行う
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性はない。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
均衡待遇
パート社員
(清掃業務)
  • ・構内清掃等の清掃業務に従事
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性はない。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
均衡待遇

パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善の詳細

【基本給について】

 2020年の取組前は、パート社員の時給は、職務内容にかかわらず最低賃金に基づいた一律の金額とし、昇給を設定していなかった。一方、正社員は勤続年数に応じ、昇給をする仕組みであった。

 しかしながら、同社では、雇用区分に関わらず、パートタイム労働者・有期雇用労働者も役職に就く可能性がある。加えて、製造業務に従事するパート社員にも、正社員と同様に業務における一定程度の責任を求めている。具体的には、専門スキルの習得や業務の改善提案、業務中に起きた危険の報告(ヒヤリハットカードの提出)であり、正社員とは責任の重さに違いがあるものの、正社員と同等の業務内容を担っている状況であった。

 そこで、取組後は、工場で製造業務に従事しているパート社員について、役職等の責任の重さや業務内容といった、職務の内容に応じた金額を支給できるよう、基本給の見直しを行った。現在は、パート社員の時給を月給に換算した際に、同等の職務を担当している正社員の月給と同じになるよう、金額を決定している。

【賞与について】

 取組前は、パート社員には賞与を支給していなかった。しかしながら、同社では、賞与を会社業績への貢献に対する報酬として支給しているため、雇用区分の違いで支給に差を設けることは適当ではないと考え、見直しを行った。

 取組後は、工場での製造業務に従事するパート社員にも正社員と同条件で年2回賞与を支給している。賞与は年2回実施する勤務態度評価や成果(製品の不良品率等)評価をはじめとした人事評価を基に決定しており、同じ評価の場合は、正社員もパート社員も同じ金額を支給している。

取組による効果

 パート社員の中には配偶者の扶養の範囲内で働きたい者も多いが、今回の取組みにより扶養の範囲を超える可能性があった。書面で待遇の変更内容を通知することに加え、パート社員本人と面談を行い、基本給や賞与の支給について本人の意向を確認したうえで制度の改定を行った。その結果、全員が納得したうえで新たな制度を導入でき、パート社員からも、基本給の引き上げや賞与が支給されるようになったことに対して有難いとの声があった。今回の取組がモチベーションアップにつながったと考えている。

 今回は、正社員と同程度の職務を担当するパート社員を対象に取組を行ったが、十分な原資を確保し、2024年を目標に他のパート社員についても待遇の向上を実施する予定である。

 また、同社では評価制度を運用していないため、社員のモチベーションを向上できる評価制度とそれに紐づいた賃金制度の構築も検討している。

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