取組事例(2021年)
株式会社フレスタ
基本情報
業種 | 卸売業、小売業 |
---|---|
都道府県 | 広島県 |
従業員数 (2021/7時点) |
正社員:630名 パートタイム労働者・有期雇用労働者:4570名 |
事業概要 | 1887年の創業以来、小売販売店やスーパーマーケットを展開。現在は、株式会社フレスタホールディングスの主要販売会社として、食品スーパーマーケットを展開する。合計62店舗を広島県、岡山県、山口県で運営している。 |
取組を行った待遇
基本給 | ○ |
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賞与 | ○ |
手当 | |
退職金 | |
福利厚生 | |
休暇・ 休職制度 |
|
教育訓練 | ○ |
その他 |
取組のポイント・概要
背景
正社員は3年単位で店舗を移動するため、各店舗を長期的に支えているのはパートタイム・有期雇用労働者であり、能力の高いパートタイム・有期雇用労働者に長期間にわたって勤務を継続してもらいたいと考え、人事制度の見直し、待遇の改善を実施。
取組
パート社員を対象とした資格等級制度を導入し、等級に基づく基本給制度と賞与制度を構築。パート社員に正社員と同内容の教育訓練制度を適用。
待遇 | パートタイム労働者・有期雇用労働者への待遇の変化 | |
---|---|---|
取組前 | 取組後 | |
基本給 | 各上長が決定する評価と調整給に基づく時給を支給 | パート社員を対象とした資格等級制度に基づいて支給 |
賞与 | 支給なし | パート社員を対象とした資格等級制度に基づいて支給 |
教育訓練 | 正社員と同内容のオープン研修や等級ごとの研修を実施。昇格に伴う研修やスーパーマーケット検定2,3級に関する研修や通信教育受講に対する補助を実施。 | 左記に加え、一部の部門において、パート社員を対象に3か月に1度の部門別研修を開始 |
効果
職務能力評価制度を導入したことで、公平な評価が可能になった。また、待遇改善等を含む「健康経営」が自社のブランディングにつながり、採用における同業他社との差別化要因となり、これを理由としたパート社員や正社員の志望が増加。パート社員の勤続も一定程度伸びた。
取組の詳細
取組に向けた検討プロセス
同社では、正社員は3年単位で店舗を移動するため、各店舗を長期的に支えているのはパートタイム・有期雇用労働者であると考えた。そこで、能力の高いパートタイム・有期雇用労働者に長期間に亘って勤務を継続してもらいたいと考え、人事制度の見直し、待遇の改善を実施した。
同社は、パートタイム・有期雇用労働者に求める能力を明確にして教育や評価を実施していくことを目的として、中央職業能力開発協会による職業能力評価基準(スーパーマーケット業)を参照して職務に基づいた等級及び評価制度を構築した。
既存の職業能力評価基準に基づき、評価ウェイト等をカスタマイズすることで自社の独自性を人事制度に反映させた。検討は、現場の店長、人事総務、労働組合、エリア責任者、トレーナーをメンバーとしたプロジェクトで進めた。
同社の主な社員タイプは、正社員とパート社員に分かれており、パート社員を「スマイル社員」と呼称し、ベスト職、上級職、中級職、初級職に4区分している。ベスト職は1年契約のフルタイム勤務、初級職~上級職は半年契約の短時間勤務である。
表 取組の対象となる社員タイプ
社員タイプ(人数) | 職務内容 | 職務内容・配置の変更範囲 | 均等・均衡待遇 | |
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正社員 (約630名) |
地域限定なし |
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- |
地域限定あり |
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- | ||
パートタイム・有期雇用労働者 (約4570名) |
パート社員 ベスト職 |
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均衡待遇 |
パート社員 初級職~上級職 |
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|
均衡待遇 |
パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善の詳細
【基本給について】
店長がパート社員の採用権を有しているため、取組前は、各店長が評価を実施し、処遇を決めていた。そのため、評価項目や昇格の基準は各店長の裁量によるところが大きく、店舗間の制度等のレベル感の統一ができていなかった。管理者の異動が発生した段階で時給の整合性が取れなくなり、パート社員のモチベーションの低下や評価や処遇に対する不満につながっていた。
そこで、正社員とは役割の異なるパート社員には、パート社員を対象とした人事制度が必要であると考え、中央職業能力開発協会による職業能力評価基準(スーパーマーケット業)を参照して、職務に基づいた資格等級及び評価制度を構築し、基本給(時給)を等級に基づいて支給することとした。
パート社員の等級はベスト職、上級職、中級職、初級職に4区分されており、各等級に10の号棒を設けている。上級職であれば、5~10円/号棒で昇給し、中級職であれば、5円/号棒で昇給する。初級職は、入社時の試用期間の位置付けとなっており、昇給はない。なお、ベスト職には、職務に基づいた等級に基づいて月給を支給しており、正社員のチーフ職の地域限定と同等の給与水準となっている。
【賞与について】
入社後1年以上の中級職以上のパート社員には、年2回(6月と12月)賞与を支給している。中級職及び上級職のパート社員には号棒に紐づく一定額を支給しており、ベスト職には基本給1か月分に評価結果に基づく係数を乗じた支給額を支給している。
賞与は、業務上の高い貢献に対して再配分するという考えでしっかり力量が上がった方へ支給しているため、初級職には支給していない。
資格等級 | 区分 | 定義 | 評価 | |
---|---|---|---|---|
ベスト職 | 指導育成業務・管理業務 |
1)所属組織の計画・目標・指示を受け、自らの判断で担当業務を効率よく正確に処理できる。 2)上司に対し、一定業務の補佐、上申ができる。 3)部下に対し、担当業務に関する指示、指導、支援ができる。 |
人事考課 |
|
上級職 | 指導育成業務・管理補佐業務 |
1)所属組織の上司の指示を受けて、担当業務を効率よく正確に処理できる。 2)上司に対し、一定業務の補佐ができる。 3)部下に対し、担当業務に関する指示、支援ができる。 |
レベルⅡ | |
中級職 | 定型業務・一部経験的業務 |
1)上司の管理監督の下に、定型業務を正確迅速に処理することができる。 2)上司に対し、一定業務の補佐ができる。 3)定型業務に関し、経験、技術、知識を有する。 |
レベルⅠ | |
初級職 | 定型業務・一部補助的業務 |
1)上司の指導監督指示の下に、定型業務や定型補助業務を正確に処理できる。 2)定型業務に関し、多少の知識を要する。 |
上級以上への昇格は年一回
|
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専門職 | 熟練定型業務・経験的業務 |
1)専門分野にて、特殊な技量や知識を有している。 2)上司に対し、一定業務の補佐、上申ができる。 3)部下に対し、担当業務に関する指示、指導、支援ができる。 |
職務能力制度対象外 | |
定型職 | 簡易定型業務・補助的業務 |
1)上司の指導監督指示の下に、簡易的・または限られた定型業務を正確に処理できる。 2)定型業務に関し、多少の知識を要する。 |
表5 賞与支給額の支給例
資格等級 | 職位名称 | 1号俸 | 2号俸 | 3号俸 | 4号俸 | 5号俸 | 6号俸 | 7号俸 | 8号俸 | 9号俸 | 10号俸 |
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中級 | Sスマイル | 11,000 | 12,000 | 13,000 | 14,000 | 15,000 | 16,000 | 17,000 | 18,000 | 19,000 | 20,000 |
Lスマイル | |||||||||||
上級 | リーダー・ スマイル |
31,000 | 32,000 | 33,000 | 34,000 | 35,000 | 36,000 | 37,000 | 38,000 | 39,000 | 40,000 |
- ※支給条件・給額は、変更する場合があります。
【教育訓練について】
パート社員にも積極的に上級職に挑戦してほしいため、正社員を対象とした教育訓練は同条件でパート社員にも適用しており、正社員、パート社員を対象に、オープン研修や等級ごとの研修、eラーニングを実施している。また、昇格に伴う研修やスーパーマーケット検定の2,3級に関する研修や通信教育受講に対する補助を実施している。eラーニングは、店舗に設置したPCで勤務時間内に受講することが可能である。
また、2014年以降、パート社員の能力開発をさらに強化するため、肉・魚・野菜・惣菜部門のパート社員を対象に勤務時間内で部門別研修を3か月に1度実施している。研修は、「上級職としての働き方」や「シフトの決め方」等の上級職を意識した内容としており、パート社員が上級職への昇格を早い段階から見据えることができるようにした。

取組による効果
従前は評価者によって評価結果に偏りがあったが、職務能力評価制度を導入したことで、公平な評価が可能となった。また、評価項目を明確化したことで、従業員へのフィードバックが容易になり、パート社員の能力開発につながっていると感じている。
待遇改善等に取り組み、「健康経営」の実施が自社のブランディングに効果を生み、同業他社との差別化、パート社員や正社員の志望理由の一つとなっていると感じる。また、パート社員の勤続年数についても伸びていると認識している。
均衡待遇を達成するだけでは、パート社員の長期勤務には繋がらないことから、現場における働きやすさの改善にも繋がる取組も重視しており、店舗においても店長が定期的に従業員からの評価を受ける仕組みを取り入れている。これによって従業員の意見をよりタイムリーに把握できるようになり、従業員のモチベーションの維持・向上に役立っている。
公平、公正な待遇の実現は困難で、現場の不公平感等は管理職の力量に左右される側面があると感じている。そのため、パート社員に長く勤めてもらうためには、店長と従業員が良好な信頼関係を築くことが重要であると考える。