取組事例(2021年)
高取食品株式会社
基本情報
業種 | 製造業 |
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都道府県 | 福岡県 |
社員数 (2021/09時点) |
正社員:17名 パートタイム労働者・有期雇用労働者:11名 |
事業概要 | 1965年の創業以来、主に豆腐などの大豆製品を扱う製造販売を展開している。現在は、自社工場で製造した商品のスーパー、学校等への卸・販売を行っている他、直販店での販売・運営も行っている。 |
取組を行った待遇
基本給 | ○ |
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賞与 | ○ |
手当 | ○ |
退職金 | |
福利厚生 | |
休暇・ 休職制度 |
○ |
教育訓練 | |
その他 |
取組のポイント・概要
背景
2019年より代表取締役が交代したことをきっかけに、人事制度への考え方が見直され、従業員が長く働ける仕組み作りに着手。
取組
パートタイム労働者を対象に、賃金制度と休暇・休職制度を改定。基本給、賞与、手当を、正社員と同様の支給基準で支給するとともに適用する休職制度を新設。
待遇 | パートタイム労働者・有期雇用労働者への待遇の変化 | |
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取組前 | 取組後 | |
基本給 | 最低賃金に基づいた金額を支給 | 基本金額と昇給額について、正社員と同額に統一し、時給換算して支給 |
賞与 | 支給なし | 正社員と同条件で支給 |
手当 | 通勤手当、家族手当(一部のパートタイム労働者のみ)、住宅手当、業績手当を支給 | 通勤手当、住宅手当、業績手当に加え、全パートタイム労働者を対象に家族手当と役付手当を支給 |
効果
待遇の見直しを行ったことで、全社員に制度が周知され積極的に利用してもらえるようになったと考えている。また、待遇を引き上げた結果、離職率も低下している。
取組の詳細
取組に向けた検討プロセス
同社では、2016年に株式会社直方建材のグループ会社になり、2019年より代表取締役が交代したことをきっかけに、人事制度への考え方が改めて見直され取組が開始された。以前は給与等の差について明確な根拠が無い状態であったが、新たに就任した代表取締役のもと、「売上を上げることも必要だが、まず従業員が働きやすい環境整備を第一に考えることが重要である。技術や経験は長年培うものであるため、経験値があがると売上も後からついてくる。」との考え方に基づいて、従業員が長く働ける仕組み作りに着手した。この取組の一環として、各待遇を見直したところ、改善を行うこととなった。
同社の社員タイプは、正社員、パート社員の2区分であり、パート社員は、無期契約の短時間勤務である。なお、パート社員の勤務時間は本人の希望に応じて決定している。
表 取組の対象となる社員タイプ
社員タイプ(人数) | 職務内容 | 職務内容・配置の変更範囲 | 均等・均衡待遇 | |
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正社員 (17名) |
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- | |
パートタイム労働者・有期雇用労働者 (11名) |
パート社員 |
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|
均衡待遇 |
パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善の詳細
【基本給について】
同社では、正社員、パート社員ともに等級制度や人事評価制度を運用していない。取組以前の基本給は、正社員には一律の基本金額をパート社員には最低賃金に基づいた金額を支給していた。正社員の昇給については、勤続による技能の向上等を考慮し、会社業績や人件費に鑑みて一律で検討することとしている。したがって、一律の基本金額に一律の昇給額が積み上がる形で、勤続年数に応じて金額に差がつく。なお、同社では、役職によって責任の程度に違いがあるものの業務の内容に大きな違いはないことから、正社員の基本給は一律の基本金額としていた。また、業務における責任の重さや職務の内容・配置の変更の範囲については、役付手当等の諸手当で考慮することとしている(後述)。
取組の中で、入社間もない正社員や役職に就いていない正社員とパート社員を比較したところ、業務の内容が同等であるにもかかわらず、基本給の金額が異なっていることが分かった。そこで、パート社員に対しても、正社員と同様に一律の金額を支給・昇給する仕組みに変更を行った。具体的には、正社員に支給されている一律の基本金額を時給に換算し、勤務時間を乗じてパート社員への支給している。これにより、正社員、パート社員に支給されている一律の基本金額や昇給額が同じになったため、雇用形態に関わらず勤続年数で金額に差がつく仕組みになっている。ただし、勤続年数の長い社員や役職に就いている社員については、パート社員含め従来の基本給額からの引下げは行わず、昇給の割合等で数年かけて差をなくしていく予定である。
取組前 | 取組後 | |||
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今後は昇給分 が積み上がる |
勤続による技能の向上等を考慮し、 会社業績や人件費に鑑みて全員一律で支給 |
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正社員と一律同額の基本金額 | ||||
最低賃金を参考に金額を決定 | ▶ | 業務の内容を踏まえ、全員一律で支給 (業務における責任の程度や職務内容・配置の変更範囲は手当で処遇) |
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図 パート社員の基本給の構成要素
勤続年数に応じて 金額に違いがある |
4年前の 昇給額 |
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3年前の 昇給額 |
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2年前の 昇給額 |
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前年の 昇給額 |
前年の 昇給額 |
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全員一律 の昇給額 |
全員一律 の昇給額 |
全員一律 の昇給額 |
全員一律 の昇給額 |
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全員一律 の 基本金額 |
全員一律 の 基本金額 |
1年後 |
全員一律 の 基本金額 |
全員一律 の 基本金額 |
全員一律 の 基本金額 |
全員一律 の 基本金額 |
・・・ | ||||
正社員 1年目 |
パート社員 1年目 |
正社員 2年目 |
パート社員 2年目 |
正社員 3年目 |
パート社員 5年目 |
図 新しい基本給の決定方法のイメージ
【賞与について】
取組前はパート社員には賞与を支給していなかった。同社では、賞与を会社業績への貢献に対する報酬として支給しており、パート社員も業績に直結する製造業務に就いていることから支給する必要があると考えた。
そこで2019年以降は、正社員と同じ決定方法で年1回賞与を支給している。具体的には、基本給×0.5ヶ月~1ヶ月分の金額を支給する形に変更した。
【手当について】
取組前は、正社員には通勤手当、家族手当、住宅手当、役付手当、業績手当を支給していたが、パート社員には役付手当と家族手当が支給されていなかった。家族手当は生活費の補助のため扶養家族がいる正社員を対象に、役付手当は役職に就いている正社員を対象に支給していた。
待遇の見直しを行う中で、家族手当などの生活に関連した手当については雇用区分に関係なく生じるものであることから、パート社員にも正社員と同じ条件で支給することとした。具体的には、扶養主である社員に対して、配偶者・第1子・第2子について一律の手当を支給している。また、役付手当についても、正社員と同じ条件で支給を開始した。これは、パート社員も役職(リーダー、主任、係長、課長、工場長、部長)のうちリーダーに就くことがあり、就任した場合の責任の重さ等も正社員と同等であることから、パート社員に対しても同条件で支給すべきと考えたためである。
取組による効果
取組前は、給与等の差について明確な根拠が無い状態であった。それに伴って、制度として運用があったものの、待遇の内容や支給条件が整理されていない状態であった。今回の取組を通して、待遇を見直したこと、また、日次の終礼や社員全員が閲覧可能な掲示板で情報共有を行ったことで、社員の制度の理解が深まり、全社員に積極的に利用してもらえるようになったと考えている。例えば、従前は、パート社員の有給取得者が非常に低かったが、取組以降は取得率が大幅に向上した(2017年:0件→2020年148件、正社員は2020年:70件)。また、基本給の引き上げをはじめとした賃金制度の改定もあり、離職率が低下している。
上記の他にも改善するべき点は多いと考えており、少しずつ取り組んでいる状態である。現在は評価制度の導入を検討している。労働者や経営層の意見を全て制度に反映することは難しいが、引き続き従業員が快適に楽しく働ける環境作りを目指し、更なる検討を重ねたい。