取組事例(2020年)

小太郎漢方製薬株式会社

基本情報

業種 製造業
都道府県 大阪府
社員数
(2020/10時点)
正社員:261名(顧問8名を含む)
パートタイム労働者・有期雇用労働者:111名
事業概要 1952年に設立され、1957年に業界初の漢方エキス製剤の製造販売を開始。以来、漢方エキス製剤の販売と普及に努め、医薬品や化粧品、健康食品の製造販売を行っている。2015年9月に大阪府女性活躍リーディングカンパニーの認証を取得。2017年12月に厚労省パートタイム労働者活躍推進企業奨励賞を受賞。

取組を行った待遇

基本給
賞与
手当
退職金
福利厚生
休暇・
休職制度
教育訓練
その他

PDFデータ

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取組のポイント・概要

背景

各社員の役割を明確にすること等により、社員との信頼関係を築き、社員に長く働いてもらうことによって組織強化を図ることを目的に取組を実施。

取組

パートタイム労働者・有期雇用労働者にも賞与を支給するとともに、退職餞別金と記念品の支給や各種表彰制度を適用。また、各種手当の支給を開始し、教育訓練についても実施。

待遇 パートタイム労働者・有期雇用労働者に対する支給状況
取組前 取組後
賞与 寸志として支給 「基本給×係数+一律」の賞与システムを確立して支給
手当 通勤手当と精皆勤手当を支給 通勤手当、精皆勤手当に加え、地域手当、住宅手当、資格手当を支給
退職金 支給なし 勤続年数に応じて退職餞別金と記念品を支給
5年単位の慰労金も実施

効果

パートタイム労働者・有期雇用労働者の平均勤続年数が伸び定着が進んでいるため、モチベーションの維持・向上につながっていると認識。

取組の詳細

取組に向けた検討プロセス

 同社では、2000年から2005年にかけて工場・研究所の統廃合等が行われ、会社の経営状況や様々な制度整備の過渡期であった。そういった事情により、社員タイプ間の職務内容の違いが不透明であったため、職務内容と賃金体系を改めて整理する必要があった。また、社員タイプの違いのみによって明らかな待遇差を設けることが法的に問題となることは認識しており、社員の理解を得るためにもパートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善に取り組んだ。

 2004年頃から、各社員の役割を明確にするとともに、一人ひとりの働きぶりを評価し、社員との信頼関係を築くことによって、社員の定着及び組織強化という好循環につなげることができるよう、社員タイプと賃金体系の見直しを開始した。また、2007年、2019年にも働き方改革や法改正に向けた取組(各人の業務の洗い出しと分析)を実施している。

 同社の主な社員タイプは、正社員、契約社員、登用契約社員、パートタイム社員の4区分である。パート社員は1年契約の有期雇用労働者だが、現在では、そのほとんどが無期転換している。

表 取組の対象となる社員タイプ

社員タイプ(人数) 職務内容 職務内容・配置の変更範囲 均等・均衡待遇
正社員
(261名)
正社員
  • ・工場の生産計画立案・調整、機器類の操作・調整・メンテナンス等に従事して多能工化を図る
  • ・研究開発業務、営業、本社管理業務に従事
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性がある。
  • ・工場(現業)以外に従事する者は転居を伴う異動の可能性がある。
  • ・残業労働、休日出勤は多少ある。
-
パートタイム
労働者・
有期雇用
労働者
(111名)
契約社員
(28名)
  • ・工場での原材料・添加剤等秤量作業、機器類の切替、機器の組立作業
  • ・研究所での特定の医薬品試験、書類データ入力・作成
  • ・本社や営業拠点での特定の事務、物流管理業務
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性が原則ない。
  • ・転居を伴う異動の可能性は原則ない。
  • ・残業労働、休日労働は原則ない。
均衡待遇
登用契約社員
(5名)
  • ・契約社員及びパートタイム社員と同じ業務
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性が原則ない。
  • ・転居を伴う異動の可能性は原則ない。
  • ・残業労働、休日労働は原則ない。
均衡待遇
パートタイム社員
(70名)
  • ・本社での物流管理業務補助、営業拠点での商品受発注業、研究所での機材洗浄、実験・測定に使用する試薬の調合、工場でのライン包装仕上げ作業、庶務全般の補助作業に従事
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性が原則ない。
  • ・転居を伴う異動の可能性は原則ない。
  • ・残業労働、休日労働は原則ない。
均衡待遇

パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善状況の詳細

【賞与について】

 取組前から、パートタイム社員以外には年2回の賞与を支給していた。同社では、努力により結果を残した者に対する功労報償として賞与を支給しているため、社員タイプに関わらず人事考課を踏まえた賞与を支給するべきであると判断し、パートタイム社員にも賞与の支給を開始した。

 賞与は、支給額の基礎となる額(全社員一律)に勤続年数に応じた係数をかけて基礎額を算出し、その上で、雇用区分ごとの職務の違いと労働時間の違いを踏まえ、社員タイプごとに異なる計算式を用いて金額を決定する。異なる計算式を用いるのは、社員の業務内容や責任の程度、労働時間の違いによって、業績の大きさも異なると考えたからである。

【手当について】

 取組前は、正社員には、通勤手当、精皆勤手当、住宅手当、資格手当、家族手当を支給していたが、契約社員・登用契約社員・パートタイム社員には通勤手当と精皆勤手当のみ支給されていた。

 パートタイム・有期雇用労働法の施行に向けて手当の支給方法についても整理が必要と判断した。検討の結果、住宅手当は、世帯主に対して住宅費を補助するために支給、資格手当は薬剤師資格を持つ者に対して一律支給するという各手当の性質・目的にかんがみ、契約社員・登用契約社員・パートタイム社員に対しても支給することとした。

 さらに、首都圏の消費者物価地域差指数が他地域よりも高いことを踏まえ、首都圏に居住する社員の生活費を調整する目的で、東京支店管轄地区の全社員に対して地域手当を導入した。

 このほか、優秀であっても正社員転換を希望しないパートタイム社員を対象としたスキル手当を導入した。人事評価を行う上長が推薦し、幹部会が支給可否等の判断を行う。あわせて、長期勤続のパートタイム社員に対しては熟練手当を導入している。

【退職金について】

 取組前は、退職金の支給は正社員のみを対象としていたが、長期間の勤続に対する功労報償として退職金を支給していることから、社員タイプによって退職金の支給の有無が分かれるのは妥当ではないと判断し、パートタイム・有期雇用労働者に対し、退職金に替わる制度として、勤続年数に応じた退職餞別金及び退職記念品を支給することとした。支給額は、契約社員、登用契約社員は勤続5年以上の社員が対象であり、1年につき10,000円の餞別金+1年につき1,000円の記念品、勤続6~10年であれば、50,000円+6年目以降の1年につき20,000円の餞別金+1年につき1,000円の記念品のように、勤続年数に応じた餞別金と記念品を支給している。パートタイム社員も勤続5年以上が対象で、勤続1年につき10,000円の餞別金+1年につき1,000円の記念品を支給している。

図 契約社員・登用契約社員・パートタイム社員の退職餞別金・退職記念品支給のイメージ

図 契約社員・登用契約社員・パートタイム社員の退職餞別金・退職記念品支給のイメージ
(図中の数字は契約社員・登用契約社員のもの)

取組による効果

 パートタイム社員の平均勤続年数が10年を超えるなど、パートタイム社員の定着が進んでおり、職務内容の違いを明確化することで、正社員との不公平感がなくなり、長期的に働きたいと思える環境が整いつつあると実感している。また、パートタイム社員にも人事考課による昇給・賞与システムや正社員と同じ表彰制度を導入したことは、モチベーションの維持・向上にもつながっていると考えている。

 同社には、これまでに登用契約社員を経て正社員に転換したパートタイム社員で係長や主任まで昇進した者がおり、現在では2名の管理職も誕生している。このようなキャリアアップしたパートタイム社員の事例は、入社時研修等で紹介し、キャリアアップを目指す多くのパートタイム社員のロールモデルにしている。

 今後も、法への対応だけでなく、パートタイム・有期雇用労働者に「働いていて良かった」と思ってもらえるような職場づくりを継続していきたいと考えている。

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