取組事例(2020年)

株式会社イズミテクノ

基本情報

業種 サービス業(ビルメンテナンス業)
都道府県 広島県
社員数
(2020/02時点)
正社員:約240名
パートタイム労働者・有期雇用労働者:約2,400名
事業概要 グループ会社が運営する、ゆめタウンやゆめマートなどショッピングセンターの施設管理運営、警備、クリーンサービス業務を担う会社として1991年に設立した。近年は、これまで蓄積してきた技術・ノウハウを活用し、ショッピングセンターの設備工事や、美術館や宿泊施設等の指定施設の管理も実施している。

取組を行った待遇

基本給
賞与
手当
退職金
福利厚生
休暇・
休職制度
教育訓練
その他

PDFデータ

Get ADOBE READER

PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されていますので、左記のアイコンをクリックしてダウンロードしてください。

取組のポイント・概要

背景

事業の特性上、現場はパートタイム労働者・有期雇用労働者を中心に業務運営しているが、平均勤続年数が4年と短く、人材の定着促進が課題と認識。また、パートタイム労働者・有期雇用労働者の賃金が店舗によって違っていたことから、人事制度の見直しを実施。

取組

パートタイム労働者・有期雇用労働者を対象に、等級に基づく賃金制度や職務評価の導入、通勤手当の実額支給を開始。

待遇 パートタイム労働者・有期雇用労働者に対する支給状況
取組前 取組後
基本給 店舗ごとに、責任者の裁量で時給を決定 等級制度を導入し、店舗・職種とランクによって時給を決定
手当 役職手当、技能手当、通勤手当、時間外手当を支給
  • ※通勤手当については上限あり
通勤手当の上限をなくし、正社員と同じ支給基準で支給

効果

人事制度の導入に当たっては、パートタイム労働者・有期雇用労働者の働きぶりを評価することや、評価を踏まえた面談をすることで、働きぶりが時給に反映されている実感をもつことができ、社員のモチベーション向上につながったと認識。退職率は2020年度から減少傾向にあり、今後も大幅な減少を期待。

取組の詳細

取組に向けた検討プロセス

 同社では、業務の性質上、パートタイム労働者・有期雇用労働者が戦力の中心であるが、基本給(時給)の決め方には共通の制度がなく、店舗ごとにばらつきがあった。それだけが原因とは言えないが、年間2割の社員が退職し、平均勤続年数が4年と短いなど、人材の定着促進が急務であった。また、パートタイム・有期雇用労働法や労働契約法への対応も必要であった。
 そこで、社員の満足度を高め定着を図るために、人事制度の改定に着手し職務内容と評価に基づいた賃金制度の設計に取り組むこととした。
 同社の主な社員タイプは、正社員、パートナー社員、アルバイト社員の3区分である。

表 取組の対象となる社員タイプ

社員タイプ(人数) 職務内容 職務内容・配置の変更範囲 均等・均衡待遇
正社員
(約240名)
  • ・現場での判断業務やマネジメント業務に従事
  • ・職種内容の変更・配置転換の可能性がある。
  • ・転居を伴う異動の可能性がある。
-
パートタイム労働者・
有期雇用労働者
(約2,396名)
パートナー社員
  • ・現場における設備管理や清掃、警備業務のうち、マニュアルに則って実施する定型業務に従事
  • ・優秀な者は一部管理業務にも従事
  • ・職種内容の変更・配置の転換の可能性がある。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
均衡待遇
アルバイト社員
  • ・現場における設備管理や清掃、警備業務のうち、マニュアルに則って実施する定型業務に従事
  • ・職種内容の変更・配置の転換の可能性がある。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
均衡待遇

パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善状況の詳細

【基本給について】

 取組前は、パートナー社員、アルバイト社員には全店舗に共通した賃金制度や評価制度がなく、店舗の責任者が独自に時給を決定していた。また、正社員と職務内容が同じであるにもかかわらず、パートナー社員、アルバイト社員の方が基本給が低く設定されていることがあった。

 そこで、2017年にパートナー社員、アルバイト社員に対し、職務内容に応じた等級制度とそれに基づく賃金制度を導入した。①店舗・職種別に基本時給を決定する、②当該職種における能力レベルに対応するランク(初級・中級・上級)別に基本時給の上に積み上げる時給幅を設定する、③その幅の中で評価結果に基づき時給を決定するという手順がとられる。

 なお、正社員には等級制度がなく、勤続年数や人事評価結果で基本給を決定するが、支給額についてはパートナー社員、アルバイト社員と正社員との間で均衡を確保している。具体的には、パートナー社員、アルバイト社員のランクと正社員の格付との対応関係を整理し、パートナー社員・アルバイト社員の基本給を正社員の時給換算した基本給額と整合するよう設定した。

 以上の対応によって、店舗を超えて整合性のある基本給の設定が可能となるとともに、支給額についても、正社員と均衡の取れた基本給水準を実現できるようになった。

上級
+200



+80
1100
中級 980
+80

+30
初級 930
+30
0
基本時給 900

図 基本時給とランク別の時給幅

新・等級名称 職務ポイント 新・等級定義 新・基本給
※時間賃率
対応する正社員

格付け制度
時間賃率(参考値)
※月例給÷所定内労働時間×活用係数
上限値 中央値 下限値 上限値 中央値 下限値
①初級 9~12 作業割当・作業指示に従って業務できる 880 865 850
②中級 10~14 作業割当・作業指示を理解し、後輩を指導できる 950 915 880
①新人 1000 987 975
③上級 11~16 自部門全体の業務を理解し、指導できる 1100 1050 950
②一般 1121 1060 1000
③主任 1268 1195 1121

図 正社員との対応関係を踏まえた等級制度のイメージ
(株式会社イズミテクノ提供資料より抜粋)

【手当について】

 取組前は、アルバイト社員の通勤手当に上限額を設定していたが、通勤するための交通費は社員タイプに関係なく発生すること、その通勤に係る費用を補助することが手当の性質・目的であることから、正社員と同条件で実額を支給することとした。

取組による効果

 パートナー社員、アルバイト社員から、評価が待遇に反映されるようになったという声が上がってくるようになった。また、店舗責任者からは、面談によってパートタイム労働者・有期雇用労働者の働きぶりを評価し、昇給につなげることもできるので好ましいとの声が出ている。人事制度の改定に当たっては、働きぶりが時給に反映されているとの実感をもってもらうことで満足度の向上を図るとの狙いがあったが、その効果は十分に出ていると感じている。さらに、評価と併せて面談を実施するようになり、店舗責任者とパートナー社員、アルバイト社員とのコミュニケーション機会が増加した。また、店舗責任者は施設管理の担当の場合が多いということもあって、必ずしもコミュニケーションが得意な者だけではない。そのため、面談の質を担保できるよう、人事部門が、面談の進め方や話す内容をまとめた面談シートを作成し、店舗責任者に配布している。

 また、全店舗共通の基準で評価することにより、待遇が公平なものとなり、優秀な社員の待遇をアップすることができるようになったことも効果として実感している。これまでは、本社から遠い店舗に優秀な社員がいてもわからないことがあったが、人事評価の運用によって優秀な社員を明確に認識できるようになった。

 退職率は2020年度から減少傾向にあるが大幅には減少しておらず、今後も取組を継続していきたい。

 正社員については、パートナー社員、アルバイト社員の等級との整合性をもった役職をベースとした役割等級要素を組み込んだ等級制度を設計中である。併せてキャリアコースの導入により、キャリアパスや役割・役職を明確にするとともに、社員の資格取得についても支援できるようにしたい。

事例検索に戻る