取組事例(2020年)

株式会社ビックカメラ

基本情報

業種 卸売業・小売業
都道府県 東京都
社員数
(2020/08時点)
正社員:約4,900名
パートタイム労働者・有期雇用労働者:約3,170名
事業概要 1968年創業のカメラ専門店を前身とし、1978年から家電小売店を展開している。現在は、日用品、医薬品、酒類や食品等多様な品目を取り扱っている。国内に直営店45店舗を有する。

取組を行った待遇

基本給
賞与
手当
退職金
福利厚生
休暇・
休職制度
教育訓練
その他

PDFデータ

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取組のポイント・概要

背景

パートタイム労働者の職務内容と業務の遂行能力を反映した適正な待遇決定を目的として、2016年以降、パートタイム労働者の人事制度の改定を実施。

取組

2016年、パートタイム労働者に適用される資格考課の原則を定め、等級制度および基本給の算定方法を制度化した。以降、評価基準の整合性の向上に取り組むとともに、2020年春より通勤手当の上限を正社員と同一額に引き上げた。また、パートタイム労働者にも、慶弔見舞金や休業補償、各種休暇制度を適用。

待遇 パートタイム労働者・有期雇用労働者に対する支給状況
取組前 取組後
基本給 ランク(4等級)により時給で支給 資格考課の原則、ランク認定基準などを制度化
手当 通勤手当を正社員より低い上限額で支給 通勤手当を正社員と同一の上限額で支給
福利厚生 慶弔見舞金と休業補償は対象外 慶弔見舞金と休業補償を正社員と同条件で適用
休暇・休職制度 一部の休暇制度のみ適用 慶弔休暇、配偶者出産休暇、自己実現特別休暇等を正社員と同様に適用
  • ※一部、正社員と条件が異なる休暇制度あり

効果

2020年4月に制度を導入してから間もないことや、コロナ禍が重なったことで効果測定ができていないが、パートタイム労働者の採用力や定着率の向上に向けて引き続き取組を検討。

取組の詳細

取組に向けた検討プロセス

 同社は、全国に多数の店舗を展開しており、エリアによっては労働者が集まりにくく、採用に課題を感じていた。

 また、店舗の規模により、パートタイム労働者の職務内容等に違いがあったが、具体的にどのような差があるのか把握していないという課題があったため、それを明らかにし、パートタイム労働者の職務内容等を統一したいと考えていた。

 そこで、パートタイム労働者の採用力や定着率の向上と、職務内容や給与体系の見直しを踏まえた納得感の高い人事制度の導入を目的に取組を行った。まず、賃金について、正社員とパートタイム労働者を比較した結果、パートタイム労働者の賃金には能力が反映されていないことが分かった。また、正社員とパートタイム労働者に対してヒアリングを実施したところ、雇用契約書で定めている正社員、パートタイム労働者の職務内容と実態が異なっていることが明らかとなった。そのため、2017年にパートタイム労働者の評価基準の明確化に取り組み、待遇についても、同一労働同一賃金への対応のため、労使で検討を行ってきた。

 同社の主な社員タイプは、正社員、パート社員の2区分である。パート社員は採用から5年経過した時点で、全員に無期転換の希望を確認しており、これまでに200名弱が無期転換している。

表 取組の対象となる社員タイプ

社員タイプ
(人数)
職務内容 職務内容・配置の変更範囲 均等・均衡待遇
正社員
(約4,900名)
総合職
  • ・店舗でのレジ・接客・品出し等の定型業務およびクレーム対応等の不定形業務といった総合的業務、本社業務に従事
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性がある。
  • ・転居を伴う異動の可能性がある。
-
パートタイム
労働者・
有期雇用労働者
(約3,100名)
パート社員
  • ・店舗でのレジ・接客・棚出し等の業務に従事
  • ・職務内容の変更・配置転換は原則として行わない。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
均衡待遇

パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善状況の詳細

【基本給について】

 取組前から、パート社員にも年に1回昇給評価を実施し、ランクに基づいた賃金制度を適用していたが、算定方法の違いについて、正社員と差を設けている理由を説明できないことがあった。

 そのため、パート社員の昇給条件や、ランクを決定する際の基準を見直すこととなった。具体的には、職種ごとに、遂行可能な業務の幅やコミュニケーションスキル、協調性といった項目からなるスキルチェック表を作成し、ランクごとに求められる能力を有していることを昇給の最低条件とした。また、これまでは、担当する業務に限定してスキルの評価を行っていたが、周辺業務に係るスキルも評価することとした。また、パート社員の最高ランクの役割を「正社員の補助業務を担う」と再定義し、クレームの一次対応等、これまで正社員に相談していたことを自分で判断できるように権限を拡大した。こうした新たな等級制度に合わせて昇給幅を大きくすることで、パート社員の能力を反映した賃金制度を設計した。

【手当について】

 取組前は、パート社員の通勤手当の上限額を正社員よりも低く設定していたが、勤務先に通勤することは社員タイプに関係なく生じることであり、通勤に係る費用を補助するという手当の性質・目的に鑑みて、上限金額を正社員と同額に引き上げた。

【福利厚生について】

 取組前は、パート社員は慶弔見舞金制度の対象外であったが、慶弔見舞金の社員満足度および会社への帰属意識の向上という支給目的を踏まえ、正社員と同様に慶弔見舞金制度の対象とし、結婚祝い金や出産祝い金、死亡弔慰金についても支給を開始した。

 また、パート社員は休業補償についても対象外であったが、雇用調整助成金を活用して、パート社員に対しても正社員と同条件での休業補償を適用した。

【休暇・休職制度について】

 取組前は、パート社員は慶弔休暇、出産休暇、自己実現特別休暇、配偶者出産休暇等の対象外であった。

 取組後は原則として正社員と同様の内容を適用している。ただし、正社員は長期的な雇用を前提としていることから、一部の休暇制度については取得条件や取得可能日数に違いを設けている。

取組による効果

 2017年に実施した職務内容及び給与体系の見直しと、2020年に実施した人事制度の改定により、福利厚生や休暇・休職制度の適用範囲を見直した。

 効果としては、離職率の低下が見られるものの、2020年4月の制度導入から間もないことや、新型コロナウイルス感染症の拡大が重なったことにより、制度の改定による効果の測定ができていないため、今後も継続課題として検討していきたいと考えている。

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