取組事例(2020年)
生活協同組合コープみえ
基本情報
業種 | 卸売業・小売業 |
---|---|
都道府県 | 三重県 |
職員数 (2021/01時点) |
正職員:約270名 パートタイム労働者・有期雇用労働者:約270名 |
事業概要 | 2003年3月に三重県内の4つの地域生協が合併して誕生した生活協同組合で、三重県内約19万名(2020年3月現在)の組合員に対して、宅配、店舗、福祉、共済、夕食宅配の事業を展開している。9か所の配送センター、2か所の店舗、1か所の福祉事業所を有する。 |
取組を行った待遇
基本給 | ○ |
---|---|
賞与 | ○ |
手当 | ○ |
退職金 | |
福利厚生 | |
休暇・ 休職制度 |
|
教育訓練 | |
その他 | ○ |
取組のポイント・概要
背景
組合員への貢献を拡充するとともに、職員の採用の困難化に対応するため、職員が雇用形態にかかわらず、長く、いきいきと働き続けることができ、働き方を柔軟に選択できる人事制度、特に、職務内容に応じた待遇決定の制度を構築するため、2017年頃から取組を実施。
取組
パートタイム労働者・有期雇用労働者に正職員と同じ等級制度を適用し、基本給、賞与を決定。手当は、正職員と内容・支給基準を統一して支給。また、福利厚生、休暇・休職制度を正職員と同条件、同内容に変更。さらに、新たにコース転換制度を導入。
待遇 | パートタイム労働者・有期雇用労働者に対する支給状況 | |
---|---|---|
取組前 | 取組後 | |
基本給 | 正職員と異なる等級制度に基づき時給を支給 | 正職員と同じ等級制度を適用
|
賞与 | 正職員と異なる支給基準に基づき支給65歳以上の再雇用職員、および福祉事業のパート職員、登録ヘルパーは支給なし | 正職員と同じ等級制度を適用し、貢献度評価に応じて支給 再雇用職員、福祉事業のパート職員、登録ヘルパーにも支給を開始
|
手当 | パート職員のみに地域手当、役付手当を支給 家族手当、住宅手当の対象外 |
正職員と同じ内容・基準に変更し支給 役職手当、家族手当については、ゼネラルコースの職員を基準とした算出方法に変更 |
その他 | 正職員転換の制度を運用 | コース転換の制度を運用 |
効果
コース転換制度により、ライフスタイルに合わせて長く勤務することが可能。三重県から仕事と家庭の両立する取組として好評価。就職を希望する学生も魅力を感じているようであり、採用力の向上に効果があると認識。また、人事制度を改正したことのみによる効果測定は困難であるが、育児休暇制度等の充実は離職率の低下にもつながっており、人材の定着の面からも一定の効果があると認識。
取組の詳細
取組に向けた検討プロセス
同組合は、組合員への貢献を拡充する、職員の採用の困難化に対応するなどの課題がある中で、職員が雇用形態にかかわらず、長く、いきいきと働き続け、働き方を柔軟に選択できる人事制度、特に、職務の内容に応じた待遇決定の制度を構築する必要があると考えていた。
そこで、2017年頃より制度の改正に着手し、全職員が改正に関われるように、各事業や各職員タイプを代表するメンバーから構成されるプロジェクトにおいて職員の意見を吸い上げた。
同組合の主な職員タイプは、正職員、パート職員の2区分である。パート職員は、最初の半年間は有期雇用であるが、その後、上長の面談等を経て無期雇用となる。雇用区分によって、昇進できる役職と、勤務地や職種の変更有無に違いはあるが、職務内容に違いはない。
表 取組の対象となる職員タイプ
社員タイプ (人数) |
職務内容 | 職務内容・配置の変更範囲 | 均等・均衡待遇 | |
---|---|---|---|---|
正社員 (約270名) |
ゼネラル コース |
|
|
- |
エリア コース |
|
- | ||
パートタイム 労働者・ 有期雇用 労働者 (約270名) |
ジョブ コース (パート職員) |
|
均衡待遇 |
パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善状況の詳細
【基本給について】
取組前は、パート職員は正職員とは異なる職能資格等級制度が適用され、等級に応じた職能給と勤続給からなる基本給が時給で支給されていた。また、昇給・昇格は、正職員とは評価項目が異なる評価制度を適用して決定していた。しかし、異なる等級制度を運用していたために、職務の内容が同様の正職員とパート職員の賃金の差を説明することが困難であった。また、評価制度は個人の業績を重視していたため、成果が出るまでのプロセスにおいて能力発揮した職員や組織に大きな貢献をした職員を十分に評価できていなかった。
取組後は、パート職員にも正職員と同じ5等級からなる職能資格等級制度を適用して、等級に応じた職能給と勤続給からなる基本給を支給することとした。なお、パート職員と正職員では勤務地や職種の変更の有無が異なることを勘案して、同じ等級の場合、パート職員にはゼネラルコース職員の80%(時給換算)を支給している。また、評価制度についても、正職員とともにプロセスを重視する評価制度を導入することとした。
【賞与について】
取組前から、パート職員にも賞与を支給していたが、パート職員のみに適用する等級制度と業績を重視する人事評価制度に基づいて支給額を決定していた。また、65歳以上の再雇用職員、および福祉事業のパート職員と登録ヘルパーは支給の対象外となっていた。
取組後は、正職員とパート職員共通の職能資格等級と人事評価制度を導入し、基本給と同様に、ゼネラルコースの職員を基準とした算出方法に変更した。また、2020年より、再雇用職員、福祉事業のパート職員、登録ヘルパーにもパート職員と同様の算出方法で賞与の支給を開始した。
【手当について】
取組前から、パート職員にも共済手当、通勤手当、時間外手当を支給し、パート職員独自の手当として地域手当、役付手当、時間帯手当、日祝手当を支給していた。一方、正職員に支給していた家族手当、住宅手当は支給の対象外となっていた。
取組後は、正職員とパート職員の主な手当の種類・内容を統一し、役職手当、家族手当、共済手当、通勤手当、時間外手当を支給することとした。ただし、パート職員のみに支給していた時間帯手当、日祝手当は、現在も支給している。役職手当、家族手当は、基本給と同様に、勤務地や職種の変更の有無を勘案して、時給換算でゼネラルコースの職員の80%となっている。時間外手当は、パート職員には8時間以上の労働に対して支給していたが、2020年4月より、正職員と同様に7時間45分以上の労働に対して支給するよう変更した。
【その他】
取組前から、パート職員から正職員への転換制度はあった。しかし、長く、いきいきと働くことができると同時に、働き方を柔軟に選択できることが必要との認識から、人事制度の見直しが必要と考えていた。
そこで、新たに双方向で雇用区分を転換できるコース転換制度を2017年より導入した。ゼネラルコースからエリアコース、ジョブコースへの転換には要件を設けていない。他方、ジョブコースからゼネラルコースへの転換には、直近3年の人事考課の結果が条件を満たすことと、上司の推薦があることが要件となっており、人事担当役員との面接を経て、常務理事会で協議され承認される。なお、ゼネラルコースやエリアコースから個人の諸事情によりジョブコースに転換し、その後、諸事情が解消したため元のコースに戻る場合には、この限りではない。
取組による効果
コース転換制度によって、時短勤務したい職員や仕事の幅を広げたい職員が柔軟にコース変更できるようになり、ライフスタイルに合わせて長く継続的に働けるようになった。
就職を希望する学生も魅力を感じているようであり、採用力の向上に効果があると考えている。また、人事制度の改定による効果であるかを確認することは難しいが、育児休暇を利用することによって、いわゆる寿退社が数年間出ておらず、人材の定着の面からも効果があるといえるのではないかと考えている。
今回の取組を通し、パート職員の時給ややりがいが向上する制度を整えたが、パート職員は収入制限によって思うように働けていない現状がある。2022年より、社会保険をパート職員にも適用拡大する予定があるため、これまで以上に職員が活躍できる働き方の実現に向けてさらなる改善を検討したい。