取組事例(2020年)
株式会社りそな銀行
基本情報
業種 | 金融業・保険業 |
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都道府県 | 大阪府 |
社員数 (2020/11時点) |
正社員:約9,250名 パートタイム労働者・有期雇用労働者:約4,200名 |
事業概要 | 2003年に旧大和銀行とあさひ銀行の合併により発足した都市銀行である。2009年には、りそな信託銀行と統合し現在に至る。りそなグループは、他に、りそな総研やりそなカードをはじめとして幅広く事業を展開しており、国内においてはメガバンクに次ぐ規模を有している。 |
取組を行った待遇
基本給 | ○ |
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賞与 | ○ |
手当 | ○ |
退職金 | |
福利厚生 | |
休暇・ 休職制度 |
○ |
教育訓練 | ○ |
その他 |
取組のポイント・概要
背景
2003年のりそなショックをきっかけに、それまでの総合職を中心とした人材活用方法では事業運営が困難に陥ったことを機に、性別・年齢・雇用形態に関わらず、全社員が活躍できる人事制度を意識。その軸に沿って、制度改革を開始。
取組
正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者について、共通の職務等級制度に基づく人事評価制度、基本給、賞与、教育訓練を構築。
待遇 | パートタイム労働者・有期雇用労働者に対する支給状況 | |
---|---|---|
取組前 | 取組後 | |
基本給 | 概ね勤続年数によって決定 | 正社員と共通の職務等級制度に基づき支給
|
賞与 (業績インセンティブ) |
支給なし | 業績インセンティブを支給 |
手当 | 次世代育成支援手当(子どもを養育する社員を支援するための手当)や育児休業早期復帰手当(子を出産後早期に復帰する社員を支援するための手当)については支給なし | 次世代育成支援手当、育児休業早期復帰手当を支給 |
休暇・休職制度 | 一部の特別休暇は適用なし 積立休暇、休職制度なし |
特別休暇、積立休暇、休職制度の全てを適用
|
教育訓練 | 現場でのOJTのみ | OJTに加え、資格取得に向けた研修や通信教育を適用 |
効果
パートタイム労働者・有期雇用労働者や女性社員が活躍できる環境が醸成された。りそなショックから立ち直ることができたのもパートタイム労働者・有期雇用労働者等の貢献が大きいと考えている。
取組の詳細
取組に向けた検討プロセス
2003年のりそなショックにより経営が困難な状況となったことをきっかけに、男性総合職を中心に、社員が大量に退職した。それによって事業運営が困難に陥り、それまでの男性総合職中心の働き方からの転換が必要となった。経営の立て直しに向けて、性別・年齢・雇用形態に関わらず全社員が活躍できる人事制度を構築することとした。
同社の主な社員タイプは、社員、スマート社員、パートナー社員の3区分である。正社員(社員とスマート社員)とパートナー社員の職務内容は明確に区別されていないにもかかわらず、一部の待遇に差があった。そこで、正社員とパートナー社員の待遇差の縮小とパートナー社員の戦力化を目的に、共通の職務等級制度を軸とした制度を設計、運用することとした。
表 取組の対象となる社員タイプ
社員タイプ (人数) |
職務内容 | 職務内容・配置の変更範囲 | 均等・均衡待遇 | |
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正社員 (約9,250名) |
社員 |
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|
- |
スマート社員 (限定正社員) |
|
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- | |
パートタイム労働者・有期雇用労働者 (約4,200名) |
パートナー社員 |
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均衡待遇 |
パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善状況の詳細
【基本給について】
取組前は、パートナー社員には等級制度がなく、概ね勤続年数に応じて基本給を決定していた。そのため、正社員とパートナー社員は、職務の内容に大きな違いがないにもかかわらず、基本給の時間単価が大きく異なっていた。
2008年に、正社員とパートナー社員共通の職務等級制度を導入した。基本給は、職務グレード・役割等級に応じた支給額をベースとし、人事評価の結果により決定する。ここでは、同一の職務グレードの中では正社員とパートナー社員の人材活用の仕組み(職務の内容・配置の変更の範囲)の違いは反映していないため、正社員もパートナー社員も単価時給で同水準となっている。

図 職務グレードと役割等級による等級制度のイメージ
【賞与について】
取組前はパートナー社員には賞与を支給していなかったが、正社員と同様に、パートナー社員に対し、年2回業績インセンティブを支給することとした。支給額は、職務グレードに応じた基本額に、人事評価に応じて加算した額である。
なお、同社では、各個人で設定した業務目標の達成度に対する功労報酬として業績インセンティブを支給している。各個人の業務目標は、職務グレードと責任の程度の違いに応じた内容になっており、職務グレードと責任の程度が上がるほど、設定する業務目標も高くなる。そのため、同社では、責任の程度の違いに応じて業績インセンティブの支給額に差を設けているため、同じ職務グレードで同じ人事評価であっても、責任の程度が小さいパートナー社員の支給額は正社員より低くなる。
【手当について】
取組前は、正社員とパートナー社員では責任の程度が異なることを理由に、次世代育成支援手当の支給についてパートナー社員を対象外としていたが、同手当は子どもを養育する社員に対して支給しているものであり、責任の程度の違いを理由に差を設けることは不合理でないとはいえないと考えたため、2020年4月よりパートナー社員にも次世代育成支援手当の支給を開始した。同様に、育児休業早期復帰手当についても、2020年4月よりパートナー社員にも支給することとした。
【休暇・休職制度について】
取組前は、パートナー社員には一部の特別休暇や積立休暇の付与がなく、休職制度も適用していなかった。
2020年4月より、パートナー社員も正社員と同様に特別休暇、積立休暇、休職制度の対象としている。なお、特別休暇については、特定の事由である場合に全社員が取得できるが、業務に対する責任の程度や職務の内容・配置の変更範囲の違いに応じて有給・無給の違いを設けている。
【教育訓練について】
取組前は、パートナー社員に対しては現場でのOJTが主な育成手段であったが、正社員と同一の職務等級制度の導入に伴い、教育訓練についても正社員と同じ制度とした。全社員に対し職務グレードに応じたスキル研修や資格取得研修、通信教育を用意している。
取組による効果
パートナー社員にも正社員と同じ等級制度等を適用したことで、パートナー社員はもとより女性社員が活躍できる土壌ができたと考えている。2003年のりそなショックから立ち直れたのは、パートナー社員や女性社員の貢献によるところが大きかった。
また、正社員・パートナー社員の区別なく共通の職務等級制度を適⽤し、役割等級・職務グレードが同じであれば時間当たりの基本給を同⼀とした。これにより、スマート社員のように勤務時間や職務内容の変更・配置転換の範囲を限定する場合であっても基本給の制度設計がスムーズに実施できた。このように、全社員共通の職務等級制度を中心とした人事制度を整備したことにより、スマート社員をはじめとして全ての社員が多様な働き方を実現できる人事制度を設計する上での軸が定まったと考えている。