取組事例(2020年)

社会福祉法人南風会ヘルシーハイム

基本情報

業種 医療,福祉
都道府県 福岡県
職員数
(2020/01時点)
正職員:64名
パートタイム労働者・有期雇用労働者:10名
事業概要 日本の少子高齢化における福祉課題と向き合い、社会・地域の人々を支援するため、1993年に社会福祉法人南風会の事業体として設立された。「生の質の向上」を理念に、特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、ショートステイ、居宅支援事業所の4事業を運営する。

取組を行った待遇

基本給
賞与
手当
退職金
福利厚生
休暇・
休職制度
教育訓練
その他

PDFデータ

Get ADOBE READER

PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されていますので、左記のアイコンをクリックしてダウンロードしてください。

取組のポイント・概要

背景

離職率が60%を上回ったことをきっかけに、人事制度改革に着手。

取組

正職員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の区分をなくし、雇用形態に関わらない同一の賃金制度を導入。手当、退職金、教育訓練についても支給条件を統一。

待遇 パートタイム労働者・有期雇用労働者に対する支給状況
取組前 取組後
基本給 実態は、ほぼ年齢によって決定 正社員と同じ支給基準で決定
  • ※年齢を基準とする本給と職務等級と人事考課結果に応じた職能給により、支給額を決定。
手当 住宅手当については対象外 正社員と同じ支給基準で7つの手当を支給
  • ※通勤手当・住宅手当・資格手当等
退職金 支給なし 正社員と同じ支給基準で支給
  • ※特定退職金共済制度に加入(職務等級に応じて掛金に傾斜)
  • ※定年制の廃止に合わせて廃止し、基本給に上乗せする方向で検討中
教育訓練 現場でのOJTのみ 正職員と同様に職務内容に応じた研修を実施

効果

離職率が大幅に減少。(2004年度:60%⇒2018年度:6~7%)

取組の詳細

取組に向けた検討プロセス

 平成15年に、職員間のトラブルもあり、離職率が60%を上回る状況になった。その経験から、評価方法がオープンで、職員が自ら勤続するかどうかを判断できる仕組みが必要と考えた。
 平成16年より人事制度改革を開始し、職能評価制度と、それに連動した職能給制度を導入したものの、実質的には導入前と同様、年齢に依存した給与体系となっていたため、さらなる改善を行い、現行の制度とした。
 同法人の主な職員タイプは、無期雇用の常勤または非常勤(短時間勤務)、有期雇用の常勤または非常勤(短時間勤務)の4区分である。なお、同法人では、正職員という呼称を撤廃している。
 雇用形態に関わらず働きぶりを定量的に評価し待遇に反映できるよう、平成27年度より、雇用形態に関わらない共通の賃金制度を導入した。併せて職務等級制度も導入し、手当、退職金、教育訓練についても、等級制度と連動させることで、雇用区分に関わらず支給条件を統一した。

表 取組の対象となる社員タイプ

職員タイプ
(人数)
職務内容 職務内容・配置の変更範囲 均等・均衡待遇
無期雇用
(58名)
常勤
(54名)
  • ・特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、居宅介護支援事業に従事
  • ※障がい者雇用等、一部の職員については、職務が異なる。
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性がある。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
-
非常勤
(4名)
  • ・特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、居宅介護支援事業に従事
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性がある。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
均衡待遇
有期雇用
(6名)
常勤
(2名)
  • ・特別養護老人ホーム、ショートステイにおいて、介護業務もしくは夜間当直業務(電話対応や施錠管理等)に従事
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性がある。ただし、実績はない。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
均衡待遇
非常勤
(4名)
  • ・特別養護老人ホームにおいて、看護業務もしくは介護業務、ケアマネジメント業務に従事
  • ・職務内容の変更・配置転換の可能性はない。
  • ・転居を伴う異動の可能性はない。
均衡待遇

パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善状況の詳細

【基本給について】

 平成16年以降、全職員に対し職能評価制度を導入し、職務の遂行能力を評価し職能給として待遇に反映していた。職能評価では、各職位に求められる人物像を定義し、その定義に基づき各職員の職務遂行能力について評価を行っていたが、このような定性的な評価では、評価結果に差がつきにくく、実態としては年功的な給与体系となっていた。また、パートタイム労働者・有期雇用労働者であっても能力等によっては、正職員(無期雇用・常勤の職員)と同様の役割を与える必要があり、正職員と同様の責任の程度が存在する場面があった。そこで、職務給の給与体系に近づけた方が、役割と責任を踏まえた待遇の実現が可能となると判断し、パート労働者・有期雇用労働者が正職員への転換が可能となることも見据え、徐々に給与体系を見直すこととした。

 平成27年度以降運用している賃金制度は、職員タイプに関わらず本給と職能給から構成されている。本給は、年齢に応じて決定され、職能給は職務等級制度で定めた1~7等級と職種により定められている。基本給に占める割合は本給が6割、職能給が4割程度である。

【手当について】

 取組前は、パートタイム労働者・有期雇用労働者は住居手当の対象外であった。同法人では、住居手当について、居住する住宅の契約者が職員である場合に支給することとしており、職務との関連性がない手当であるため、平成27年度に全職員同一の賃金制度にしたことを機に、住宅手当をパートタイム労働者・有期雇用労働者にも正職員と同条件で支給を開始した。

【退職金について】

 取組前はパートタイム労働者・有期雇用労働者には退職金を支給していなかったが、平成28年度より支給を開始した。職員タイプごとの算出方法や支給条件に違いはない。特定退職金共済に加入しており、職員の職務等級に応じた掛け金としている。なお、以前から在職している退職手当共済事業の加入職員については、不利益変更を回避するために、現在も変更前と同水準で継続加入している。

【教育訓練について】

 パートタイム労働者・有期雇用労働者への教育訓練は現場でのOJTのみであったが、現在は、正職員と同様に研修の対象となっている。職員タイプに関わらず、等級に応じて職務内容に合わせた研修体系を設定しており、決められた年数の間に指定された研修を受講する必要がある。
 また、外部の資格として、シルバーサービス振興会が主催する介護プロフェッショナルキャリア段位制度(介護技術を7段階で認定)を利用しており、パートタイム労働者・有期雇用労働者も資格取得の対象となっている。全職員とも昇級には段位取得が必要となるため、各等級に指導員がおり、職員と法人の間で合意した目標認定時期に向けて、指導員の指導の下認定取得を目指す。

取組による効果

 平成16年には60%あった離職率が、平成30年度時点で6~7%まで大幅に減少した。平成30年度以降も同程度の退職率を維持しており、職員充足状態が続いていることから、令和3年度には新卒採用を検討している。
 今後の方針として、定年制を廃止したことに伴い、退職金について、退職時ではなく在籍中の基本給に上乗せして支給する方向で検討している。
 また、現在の職務等級制度と管理職の選任方法では、自分よりも上の等級に該当する部下を指導する場合があるため、この点についても検討が必要と考えている。また、職務記述書についても、職員を巻き込みながら引き続きアップデートを実施していきたい。

事例検索に戻る