取組事例(2020年)
株式会社イトーヨーカ堂
基本情報
業種 | 卸売業・小売業 |
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都道府県 | 東京都 |
社員数 (2020/02時点) |
正社員:約6,800名 パートタイム労働者・有期雇用労働者:約27,000名 |
事業概要 | 1920年創業の羊華堂用品店を前身として、多店舗展開を開始し、現在は食料品、衣料品、住居関連商品、医薬品などを取り扱う総合スーパー(GMS)を展開している。セブン&アイホールディングスの中核企業として、日本国内で132店舗、中国でも成都イトーヨーカ堂と華糖ヨーカ堂の2法人を設立し、計11店舗を運営している。 |
取組を行った待遇
基本給 | ○ |
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賞与 | |
手当 | ○ |
退職金 | |
福利厚生 | |
休暇・ 休職制度 |
|
教育訓練 | |
その他 | ○ |
取組のポイント・概要
背景
事業に不可欠な存在であるパートタイム労働者・有期雇用労働者のキャリアアップ・定着率向上を目的として、制度整備の必要性を認識。
取組
正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者について、雇用形態に関わらない共通の人事評価制度により賃金等の待遇を決定。併せて無期雇用への転換や正社員への登用等によりキャリアアップの支援と人材の定着を促進。
待遇 | パートタイム労働者・有期雇用労働者に対する支給状況 | |
---|---|---|
取組前 | 取組後 | |
評価による基本給(時給)の改定 | 基本給(時給)は働きぶりに応じて決定されていたが、評価に応じた役職登用などは実施していなかった | 正社員と同様の人事評価制度に基づき賃金改定を実施 評価に応じたステップアップ制度の導入や役職登用も実施し、役割に応じた賃金改定を実施 |
手当 | 通勤手当等は正社員と同様の支給基準で支払われていたが、役職登用がないため、その他手当の支給がなかった | 役職登用の実施に合わせて、職責手当に関しては、正社員と同じ基準で支給を実施 |
その他 (正社員転換) |
制度なし | 職務遂行能力と個人のキャリアプランに合わせて働き方を選択できるステップアップ選択制度を導入
|
効果
基本給をはじめとした賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生などについても、多様な働き方のニーズに応えることができるようにし、これまで以上に魅力ある待遇を実現していく必要があると認識。パート社員として入社した社員が正社員登用制度を利用して、正社員に登用され、店長にキャリアアップする事例が出てきており、今後増加することを期待。
取組の詳細
取組に向けた検討プロセス
一般的に、小売業界はパートタイム労働者・有期雇用労働者に支えられている。同社にとってもパートタイム・有期雇用労働者は不可欠な存在であり、社員の8割をパートタイム・有期雇用労働者が占めている。その中には、正社員転換や役職に就くことを希望する社員もいるが、多くは、扶養の範囲内で働きたいという理由や、子育てや介護などの事情で、短時間で働くことを希望している。
同社では、以前よりパートタイム労働者・有期雇用労働者に対しても働きぶりに応じた待遇を実施していたが、正社員や役職への登用制度の導入に伴い、パートタイム労働者・有期雇用労働者の人事処遇制度についても見直しを図った。
同社の社員タイプは、正社員、パート社員の2区分である。正社員は、職務の内容・配置の変更範囲に応じて、非限定社員、地域限定型社員、通勤型社員に分かれている。なお、通勤型社員は採用から1年経過した時点で全員が無期転換の対象となる。パート社員は採用から5年経過した時点で、全員に無期転換の希望を確認した後、希望する者について無期転換を実施している。
表 取組の対象となる社員タイプ
社員タイプ (人数) |
職務内容 | 職務内容・配置の変更範囲 | 均等・均衡待遇 | |
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正社員 (約6,800名) |
非限定社員 | 店舗の運営や運営に係る判断業務・マネジメント業務 |
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- |
地域限定型社員 |
|
- | ||
パートタイム・有期雇用労働者 (約31,550名) |
通勤型社員 ※準社員 |
店舗運営や運営に係る判断業務・マネジメント業務 |
|
均衡待遇 |
パート社員 | 店舗運営 |
|
均衡待遇 |
※準社員は、「通勤型社員」と呼ばれる1年契約でフルタイム勤務の月給制契約社員である。
パートタイム労働者・有期雇用労働者の待遇改善状況の詳細
【基本給について】
取組前より、パート社員についても、年2回人事評価を実施し、その結果を賃金や等級決定に反映していた。しかしながら、評価の高いパート社員には管理業務を担わせることとなるため、キャリアアップ等、上昇志向が強いパート社員にとっては良い制度であるが、管理業務には就きたくないというパート社員には適さないと思われた。
そこで、同社では職務遂行能力と各社員の意向(雇用形態や職責の選択肢)に応じてキャリアを選択でき、それに応じた待遇となるよう、2007年より正社員と通勤型社員、パート社員に社員群・職能資格・職責に基づいて、待遇を決める共通の制度を適用する体系とした。
社員群と職能は基本給に、職責は、別途職責手当(後述)に反映する。

図 基本給の構成要素のイメージ
(株式会社イトーヨーカ堂作成資料より抜粋)

【手当について】
取組前は、パート社員は役職登用がないため職責手当の支給はなかったが、ステップアップ制度(後述)を導入し役職登用を開始するとともに、正社員や通勤型社員と同様に職責手当を支給することとした。同じ職責であれば、年齢やキャリア、社員群にかかわらず同額の職責手当を支給すべきと考えたためである。
【その他(正社員転換)】
2007年にパート社員に向けた「ステップアップ制度」を導入した。現場業務で求められる姿勢や技能、能力に基づいて評価し、「レギュラー」、「キャリア」、「リーダー」のいずれかに格付ける制度である。ただし、ステップアップし管理業務に就くことを希望しない場合は、その旨を申請することができる。
また、ステップアップ制度の導入に伴い、リーダーに該当するパート社員の役職登用や正社員登用を開始した。

図 パート社員のステップアップ制度と正社員転換について
取組による効果
2007年より現在の人事制度を導入したが、2019年度に初めて、パート社員から正社員に登用され店長にキャリアアップした事例が出た。特に地方の店舗において、パート社員から準社員・正社員へのステップアップや役職登用が多いと感じている。例えば、東北地方のある店舗では、パート社員から正社員に転換し、副店長を務めている事例がある。さらにこの店舗では、役職者の25%(16名のうち4名)がパート社員・準社員である。さらに別の店舗では、役職者の30%以上がパート社員・準社員から登用されている。このように、ステップアップ制度と、雇用区分に関わらない役職登用の仕組みにより、パートタイム労働者・有期雇用労働者であっても店舗の中心として活躍している事例が増えている。今後もさらに増加することを期待している。
また、基本給については今回の取組を通じて公正な待遇が確保できたと考えている。今後は、基本給をはじめとした賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生などについても、多様な働き方のニーズに応えることができるようにし、これまで以上に魅力ある待遇を実現していく必要があると認識している。